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文献詳細

雑誌文献

精神医学54巻3号

2012年03月発行

文献概要

オピニオン 認知症の終末期医療の対応:現状と課題―尊厳をどう守るか

認知症患者の終末期医療―現状,課題,試案

著者: 飯島節1

所属機関: 1筑波大学大学院人間総合科学研究科生涯発達科学専攻

ページ範囲:P.240 - P.243

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はじめに

 そもそも終末期を論ずるには何をもって終末期とするかについての共通認識が必要であるが,残念ながら終末期の定義は確立されていない。2001年に発表された日本老年医学会の「立場表明」では,「終末期」を「病状が不可逆的かつ進行性で,その時代に可能な最善の治療により病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり,近い将来の死が不可避となった状態」としている6)。この定義は,悪性腫瘍のように進行性で,しかも誰もが死が不可避であると認識している疾病の場合には,比較的適用しやすい。しかし,認知症の場合は,進行性でかつ根治療法は確立されていないにもかかわらず,認知症自体は直接死因であるとは認識されておらず,実際には肺炎などの合併症で亡くなることが多いために,終末期の判断はきわめて困難である。本稿では認知症患者の終末期の病態を検討し,あるべき対応について筆者個人の考えを述べたい。

参考文献

1) Brunnström HR, Englund EM:Cause of death in patients with dementia disorders. Eur J Neurol 16:488-492, 2009
2) Finucane TE, Christmas C, Travis K:Tube feeding in patients with advanced dementia. A review of the evidence. JAMA 282:1365-1370, 1999
3) Gillick MR:Rethinking the role of tube feeding in patients with advanced dementia. N Engl J Med 342:206-210, 2000
4) Givens JL, Jones RN, Shaffer ML, et al:Survival and comfort after treatment of pneumonia in advanced dementia. Arch Intern Med 170:1102-1107, 2010
5) Mitchell SL, Teno JM, Kiely DK, et al:The clinical course of advanced dementia. N Engl J Med 361:1529-1538, 2009
6) 日本老年医学会倫理委員会:「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」.日老医誌 38:582-583, 2001
7) Roger KS:A literature review of palliative care, end of life, and dementia. Palliat Support Care 4:295-303, 2006
8) Schulz R, Mendelsohn AB, Haley WE, et al:End-of-life care and the effects of bereavement on family caregivers of persons with dementia. N Engl J Med 349:1936-1942, 2003
9) 鈴木裕:平成22年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)認知症患者の胃ろうガイドラインの作成―原疾患,重症度別の適応・不適応,見直し,中止に関する調査研究―調査研究事業報告書
10) van der Steen JT, Ooms ME, van der Wal G, et al:Pneumonia:The demented patient's best friend? Discomfort after starting or withholding antibiotic treatment. J Am Geriatr Soc 50:1681-1688, 2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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