文献詳細
資料
入院による血液透析を必要とした精神障害者の臨床的特徴について
著者: 新井久稔1 山本賢司2 井上勝夫2 丸香奈恵3 塚原敦子1 宮岡等2
所属機関: 1興生会相模台病院精神科 2北里大学医学部精神科学 3相模台クリニック
ページ範囲:P.411 - P.417
文献概要
2009年度末の時点で,本邦では約29万1千人が慢性透析療法を受けているが,この人数は前年度より約8千人多い9)。透析導入年齢の高齢化や透析期間の長期化により,透析患者の平均年齢は上昇傾向にあり,今後も高齢者を中心に透析患者数が増加していくことが予想されている9)。透析患者は身体的に重症であり,心理的にもストレスの強い状態であるため,さまざまな精神障害を合併する場合が多く,特に,近年では認知症2)や感情障害圏14)との関連が報告されている。
一方で,本邦では血液透析開始時や開始前から重篤な精神症状を呈する精神障害者に対し,血液透析と精神科的治療を並行して行った報告は,症例報告を除いてほとんど存在しない。これは本邦において重篤な精神症状を呈する精神障害者に対し,精神科病棟での加療を含めた入院治療で血液透析を行える医療施設が少ないことが一因と思われる。実際,今回の報告のために,全国腎臓病協議会をはじめとした関連諸機関に「精神病床に入院しながら,血液透析が行える医療機関の実態」について問い合わせをしてみたが,全国的な調査は行われていない状況であった。相模台病院は,精神科病棟に入院しながら血液透析を行える一般病院であり,透析施設(クリニック,一般病院)で血液透析を行う際に精神症状が存在し,対応困難となった症例が紹介されることが多い。今回,精神症状の存在から,他院もしくは当院の外来で,円滑な血液透析が行えず,当院での入院治療が必要であった精神障害者の臨床的特徴についての検討を行ったので報告する。
参考文献
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