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文献詳細

雑誌文献

精神医学54巻5号

2012年05月発行

文献概要

紹介

バイロン・ケイティのワーク

著者: 関沢洋一1 田中麻里2 清水栄司3

所属機関: 1独立行政法人経済産業研究所 2千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学 3千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学・予防医学センター・子どものこころの発達研究センター

ページ範囲:P.523 - P.529

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はじめに

 長引く不況などを背景として強い抑うつや不安を感じて心のケアを必要とする人々は近年増加しているように思われ,また,東日本大震災後にみられたように,心のケアへのニーズが急に高まることもある。しかし,このようなニーズの増加に対して,適切な心のケアを行えるセラピストの数を急増させることは難しく,心のケアを必要としているにもかかわらず十分な手当を受けられない人々が多くなることが懸念される。

 このような問題への対応として,従来型の1対1のカウンセリング方式によるセラピーに加えて,抑うつと不安を軽減させるメソッドで,多数の人々に同時に教えることができ,いったん習得すれば自分自身で行えるものを開発し普及させることができれば望ましい。さらに,こうしたメソッドが,読書療法のように独学でも習得できるものであり,かつ,現在は強い抑うつや不安を抱えていない人であっても予防的に活用できるものであれば,いっそう望ましい。

 「バイロン・ケイティのワーク(The Work of Byron Katie)」4,5)は,このような要請を満たすメソッドかもしれない。このメソッドは,うつ病患者だったバイロン・ケイティ(Byron Katie)というアメリカ人女性が作りだしたもので,やり方がパターン化されていて,多数の人々に同時に教えやすく,ケイティの著書を読むことによって独学で学ぶことも可能であり,テレビなどを通じて教えることも可能である。このため,震災後のように,心のケアに対する需要が急増した場合でも対応しやすいというメリットがある。

参考文献

1) American Psychiatric Association(高橋三郎,大野裕,染矢俊幸 訳):DSM-Ⅳ-TR精神疾患の分類と診断の手引.医学書院,2003
2) Beck AT, Ward CH, Mendelson M, et al:An inventory for measuring depression. Arch Gen Psychiatry 4:561-571, 1961(バーンズ,DD(野村総一郎,夏刈郁子,山岡功一,他 訳):いやな気分よ,さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法.星和書店,1990)
3) Beck AT:Cognitive Therapy and the Emotional Disorders. Meridian, New York, 1976
4) バイロン・ケイティ(水島広子 訳):探すのをやめたとき愛は見つかる―人生を美しく変える四つの質問.創元社,2007
5) バイロン・ケイティ,スティーヴン・ミッチェル(神田房枝 訳):ザ・ワーク―人生を変える4つの質問.ダイヤモンド社,2011
6) ジャッジメント・ワークシート.http://www.thework.com/nihongo/downloads/JYN_japanese.pdfよりダウンロード可能
7) ジョゼフ・V・チャロッキ,アン・ベイリー(武藤崇,嶋田洋徳 監訳):認知行動療法家のためのACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)ガイドブック.星和書店,2011
8) 思いを調べるワークシート.http://www.thework.com/nihongo/downloads/onebelief_japanese.pdfよりダウンロード可能
9) Sheehan DV, Lecrubier Y(大坪天平,宮岡等,上島国利 訳):M.I.N.I.―精神疾患簡易構造化面接法.星和書店,2003
10) Zigmond AS, Snaith RP, 北村俊則:Hospital anxiety and depression scale(HAD尺度).季刊精神科診断学 4:371-372, 1993

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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