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文献詳細

雑誌文献

精神医学54巻5号

2012年05月発行

文献概要

連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ

35年目の「逃避型抑うつ」

著者: 広瀬徹也1

所属機関: 1(公財)神経研究所附属晴和病院

ページ範囲:P.534 - P.536

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はじめに

 昨今,「逃避型抑うつ」を諸家の論文中に見出す場合,いわゆる新型うつ病論の導入として,ないしはそのはしりとして名称だけが記されているものがほとんどである。そしてメインとなる記述は「ディスチミア親和型うつ病」となる。「逃避型抑うつ」2)が35年前の1977年の登場なのに対して「ディスチミア親和型うつ病」が2005年と新しいこと,登場と同時に無条件承認のように多くの人々に受け入れられたことを考えると,その差も当然かという気もする。

 しかし,逃避型抑うつとディスチミア親和型うつ病では多くの点で対照的であるうえ5),逃避型抑うつは経済状況の厳しい昨今でも一定の頻度でみられることから,上記のような引用は厳密には正当とはいえないであろう。そこで,今やディスチミア親和型うつ病の陰に隠れた逃避型抑うつのエッセンスの紹介と,以前の論文以降の補足を加えることにする。

参考文献

1) Akiskal H:Soft bipolarity:A footnote to Kraepelin 100 years later. (広瀬徹也 訳)臨精病理 21:3-11, 2000
2) 広瀬徹也:“逃避型抑うつ”について.宮本忠雄 編,躁うつ病の精神病理2.弘文堂,pp61-86, 1977
3) Hirose T:Absenteeism in Japanese salaried men in terms of bipolar Ⅱ. J Affect Disord 68:96-97, 2002
4) 広瀬徹也:「逃避型抑うつ」再考.広瀬徹也,内海健 編,うつ病論の現在.星和書店,pp49-68, 2005
5) 広瀬徹也:逃避型抑うつとディスチミア親和型うつ病.臨精医 37:1179-1182, 2008
6) 笠原嘉:退却神経症Withdrawal neurosisという新カテゴリーの提唱.ステュデント・アパシー第二報.中井久夫,山中康裕 編,思春期の精神病理と治療.岩崎学術出版,東京,pp287-319, 1978, 1996
7) Kernberg, O:Borderline personality organization. J Am Psychoanal Assoc 15:647-685, 1967
8) Kretchmer E:Hysterie, Reflex und Instinkt. Thieme, 1948(吉益脩夫 訳ヒステリーの心理.みすず書房,1963)
9) 松浪克文:「ディスチミア親和型うつ病」と「現代型うつ病」神庭重信,内海健 編,「うつ」の構造.pp74-98,弘文堂,東京,2011
10) 松本雅彦,大森和弘:精神疾患の現代的病像をめぐって.感情障害とその周辺―「逃避型抑うつ」中年型.精神医 32:147-160, 1990
11) 夏目誠:職場不適応症における最近の動向―事例の動向と発症メカニズム―.産業精保健 11:317-322, 2003
12) 佐藤哲哉:逃避型抑うつおよび退却神経症の精神病理と発達史―内因性単極性うつ病との比較をとおして.臨精病理 7:147-160, 1986
13) 下田光造:躁鬱病について.米子医誌 2:1-2, 1950

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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