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文献詳細

雑誌文献

精神医学54巻6号

2012年06月発行

文献概要

資料

精神保健福祉センターを受診した高校生の不登校

著者: 土岐茂1 谷山純子2 衣笠隆幸2

所属機関: 1広島大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経医科学 2広島市精神保健福祉センター

ページ範囲:P.611 - P.616

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抄録

 本邦では小中学生の不登校について,多くの報告がなされ,支援体制が整えられてきた。一方,高校生の不登校の相談も相当数が存在し,実態把握と相談介入の方法論が求められている。我々は,X年4月1日からX+5年3月31日までの5年間に,広島市精神保健福祉センターを受診した高校生の不登校例37名(男19名)について,診療録を基に回顧的検討を行った。総体的に,来所者は神経症圏で,ひきこもり段階にあり,友人関係の躓きを契機とするものが多かった。不登校の様態と来所状況に性差がみられ,心理的発達の性差によるものと思われた。本人/家族個別面接と精神療法,薬物療法を組み合わせ,約4分の1の症例で,再登校と卒業を認めた。不登校という事象は教育と医療の境界に位置するため,治療者には長期的観点からの柔軟な理解が必要とされる。また,社会支援の側面からは患者,家族の選択肢を増やすという意味で,通信制高校の整備などの支援が引き続き必要であると思われた。

参考文献

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19) 牛島定信,エリクソンの青年期論は今なお有用か.児童青年精神医と近接領域50:196-205, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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