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文献詳細

雑誌文献

精神医学54巻6号

2012年06月発行

私のカルテから

クロミプラミン投与中に経口抗真菌薬イトラコナゾール併用により循環器系副作用が出現した強迫性障害の1例

著者: 神人蘭1 岡本泰昌1 増田慶一1 板井江梨1 日域広昭1 山下秀尚1 山脇成人1

所属機関: 1広島大学大学院精神神経医科学

ページ範囲:P.617 - P.620

文献概要

はじめに

 うつ病,統合失調症,認知症など精神障害においてセルフケア不足から白癬への罹患率が高いと考えられる5,6)。一方,近年,爪白癬に対して経口抗真菌薬によるパルス療法が推奨されている4)。たとえば,経口抗真菌薬であるイトラコナゾールの場合,1日量400mgを1週間経口投与し,その後3週間休薬する,これを1サイクルとして3サイクル繰り返す。イトラコナゾールは肝チトクロームP450 3A4(CYP3A4)に強い親和性を有するため,CYP3A4で代謝される薬剤の代謝を阻害し,血中濃度を上昇させる可能性がある。そのため,いくつかの薬剤は併用禁忌・併用注意となっている。向精神薬においてもピモジド,トリアゾラム,ブロチゾラム,アルプラゾラム,カルバマゼピン,フェニトインなどが挙げられているが,併用禁忌や併用注意薬物として三環系抗うつ薬は含まれていない4)

 今回,我々は強迫性障害の治療のため高用量のクロミプラミン投与中,イトラコナゾールのパルス療法により,循環器系副作用が出現したと思われる症例を経験したので報告する。なお,症例の匿名性に配慮し,個人が特定されないように病歴には若干の変更を加えてある。

参考文献

1) アルフレッサファーマ株式会社 アナフラニールインタビューフォーム
2) イーライリリー株式会社 ジプレキサインタビューフォーム
3) Isoherranen N, Kunze KL, Allen KE, et al:Role of itraconazole metabolites in CYP3A4 inhibition. Drug Metab Dispos 32:1121-1131, 2004
4) ヤンセンファーマ株式会社 イトリゾールインタビューフォーム
5) 河井正晶,比留間政太郎:入院治療を要するうつ病患者の足白癬・爪白癬の調査 第51回 日本医真菌学会総会
6) 河井正晶,比留間政太郎:精神病棟長期療養患者における足白癬・爪白癬について.西日皮膚 70:339-340, 2008
7) Math SB, Janardhan Reddy YC:Issues in the pharmacological treatment of obsessive-compulsive disorder. Int J Clin Pract 61:1188-1197, 2007
8) Nielsen KK, Flinois JP, Beaune P, et al:The biotransformation of clomipramine in vitro, identification of the cytochrome P450s responsible for the separate metabolic pathways. J Pharmacol Exp Ther 277:1659-1664, 1996
9) 佐伯吉規,下田和孝:抗真菌薬と向精神薬併用における注意点―抗真菌薬のcytochrome P450阻害作用という観点から.精神科治療 24:839-843, 2009
10) Templeton IE, Thummel KE, Kharasch ED, et al:Contribution of itraconazole metabolites to inhibition of CYP3A4 in vivo. Clin Pharmacol Ther 83:77-85, 2008
11) 吉成浩一:チトクロームP-450の阻害に基づく薬物相互作用.日薬理誌 134:285-288, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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