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クロミプラミン投与中に経口抗真菌薬イトラコナゾール併用により循環器系副作用が出現した強迫性障害の1例
著者: 神人蘭1 岡本泰昌1 増田慶一1 板井江梨1 日域広昭1 山下秀尚1 山脇成人1
所属機関: 1広島大学大学院精神神経医科学
ページ範囲:P.617 - P.620
文献概要
うつ病,統合失調症,認知症など精神障害においてセルフケア不足から白癬への罹患率が高いと考えられる5,6)。一方,近年,爪白癬に対して経口抗真菌薬によるパルス療法が推奨されている4)。たとえば,経口抗真菌薬であるイトラコナゾールの場合,1日量400mgを1週間経口投与し,その後3週間休薬する,これを1サイクルとして3サイクル繰り返す。イトラコナゾールは肝チトクロームP450 3A4(CYP3A4)に強い親和性を有するため,CYP3A4で代謝される薬剤の代謝を阻害し,血中濃度を上昇させる可能性がある。そのため,いくつかの薬剤は併用禁忌・併用注意となっている。向精神薬においてもピモジド,トリアゾラム,ブロチゾラム,アルプラゾラム,カルバマゼピン,フェニトインなどが挙げられているが,併用禁忌や併用注意薬物として三環系抗うつ薬は含まれていない4)。
今回,我々は強迫性障害の治療のため高用量のクロミプラミン投与中,イトラコナゾールのパルス療法により,循環器系副作用が出現したと思われる症例を経験したので報告する。なお,症例の匿名性に配慮し,個人が特定されないように病歴には若干の変更を加えてある。
参考文献
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