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文献詳細

雑誌文献

精神医学54巻7号

2012年07月発行

私のカルテから

拒薬を伴うがん終末期のせん妄に対しchlorpromazineを経静脈的に使用した1症例

著者: 石川博康1 髙清水清治1 横山直弘2 田中雄一2

所属機関: 1中通総合病院精神科 2中通総合病院消化器外科

ページ範囲:P.731 - P.733

文献概要

はじめに

 Chlorpromazine(CPZ)はがん終末期の緩和医療において,せん妄,嘔気,呼吸困難などに対しての広い使用法が提唱されている6~8)。欧米では点滴静注を含めて多様なCPZの投与方法が選択できるが,本邦では現在内服と筋注用の製剤しか利用できない。CPZの筋注用の注射剤(コントミン筋注®)は成分組成上経静脈的投与も可能と考えられ,がんの症例において嘔気1)や不穏・不眠・疼痛4)に対して点滴静注で使用された国内報告があるものの,そのような使用は一般的ではなく,精神科医からの報告もない。今回,拒薬を伴うがん終末期のせん妄の症例において,CPZの筋注用の注射剤を点滴静注にて投与し,筋注による痛み侵襲無しに精神症状の治療を行い得た症例を経験したので報告する。

参考文献

1) 荒木康彦,田村和夫,清田正司:抗悪性腫瘍剤投与による嘔気,嘔吐,食欲不振に対する制吐剤の予防的投与―DomperidoneとChlorpromazineの比較臨床試験.癌と化学療法10:2335-2340, 1983(論文中に商品名の記載はないが,筆者にコントミン筋注の使用を直接確認した)
2) Breitbart W, Marotta R, Platt MM, et al:A double-blind trial of haloperidol, chlorpromazine, and lorazepam in the treatment of delirium in hospitalized AIDS patients. Am J Psychiatry 153:231-237, 1996
3) 稲垣中,稲田俊也:抗精神病薬注射製剤の等価換算.臨床精神薬理10:2373-2377, 2007
4) 柿沼竜太郎,西脇裕,矢野平一:肺癌のターミナルケアにおける向精神薬の使用経験.癌の臨床30:344-348, 1984
5) 木下寛也:終末期のせん妄の理解とマネジメント.精神科治療学26:837-843, 2011
6) 苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン作成委員会:苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン.日本緩和医療学会ホームページ資料.2004(http://www.jspm.ne.jp/guidelines/sedation/sedation01.pdf)
7) 児玉智之:セデーションの実際.薬局60:3127-3133, 2009
8) Lagman RL, Davis MP, LeGrand SB, et al:Common symptoms in advanced cancer. Surg Clin North Am 85:237-255, 2005
9) 三宅誕実,宮本聖也:向精神薬の適応外使用(適応拡大)の現状と問題点.臨床精神薬理12:623-632, 2009

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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