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雑誌目次

雑誌文献

精神医学54巻8号

2012年08月発行

雑誌目次

巻頭言

リアルワールドに活かすPTSDのためのPE療法

著者: 飛鳥井望

ページ範囲:P.766 - P.767

 “America's heroes deserve nothing less than the best treatment available.”(Karlin BE, et al:J Trauma Stress 23:672, 2010).

 これは米国復員軍人のPTSD患者のためにトラウマ焦点化認知行動療法を普及する標語のような一文だ。つまり彼らは米国の英雄として,利用しうる最善の治療を受けるに相応しいという意味である。実際に米国復員軍人局が最善の治療として普及を図ったのは,代表的なトラウマ焦点化認知行動療法である曝露療法としてのPE療法(Prolonged Exposure Therapy)と,曝露技法を含んだ認知処理療法(Cognitive Processing Therapy;CPT)である。PE療法に関しては,新たに約1,300人のセラピストを養成し,スーパーヴィジョンの体制が整えられた。さらには遠隔地患者への動画通信モニターによるPEセッション(Tele-Health Technology)や,“PE Coach”という名のスマートフォン利用プログラムの提供も試みられている。

展望

インターネットを用いたうつへの認知行動療法の現状と今後の展望

著者: 梅垣佑介 ,   末木新 ,   下山晴彦

ページ範囲:P.768 - P.778

はじめに

 メンタルヘルスの問題に対する臨床心理学的な治療技法として認知行動療法(以下CBT)が欧米において主流となっている。さまざまな精神障害やメンタルヘルスの問題に対するCBTの有効性は多くの研究が示すところであり,特にうつや不安に対する高い有効性から,英国国立医療技術評価機構(NICE)が定める段階的ケアモデルにおける主要な治療技法の一つとなっている27,28)

 CBTの有効性が多くのエビデンスから実証されるにつれ需要が高まり,欧米ではCBTを実施するセラピストの不足が深刻な問題となっている36)。個別面接の形態でCBTを実施するには,セラピスト側にも患者側にも非常に大きな時間的・経済的コストを要してしまう。そこで,より低コストでCBTを実施するため,インターネットを通じてCBTを提供する試みがなされるようになった42)。従来,個別・集団での臨床面接の場で実施されてきたCBTの一部またはすべてをインターネット上で実施するこのようなサービスは,computerized CBTやInternet-based CBTなどと称され(以下CCBT),人件費などのコストを削減できることや,さまざまな理由から従来のCBTへのアクセスが困難であった対象者に対しても提供できるといったメリットから,欧米において多くのサービスが展開されるようになっている。CCBTの長所を表1に整理した。

 CCBTの有効性は多くの研究が示すところであり24,33,34,45),複数の研究を対象としたレビューの結果からもうつ・不安の治療に関して対面式の臨床面接と同等かそれ以上の有効性が示されている18,19)。CCBTの有効性についてのエビデンスを受け,NICEもうつや不安に対するCCBTの利用を推奨している26)

 わが国においても,2010年にCBTに対する診療報酬が新設されるなど,CBTに対する社会的ニーズが高まっており,加えて国民の間でのインターネット普及率が80%に迫ること37)から,今後インターネットを用いたCBTの展開が期待される。そこで本研究では,うつに対する国内外におけるCCBTサービスを概観し,わが国における今後の展望を述べることを目的とする。

研究と報告

精神障碍者に関するイメージの変化―27年の変化について

著者: 中西英一 ,   足利学 ,   白井雅子 ,   橋本弘子 ,   奥野修一 ,   高橋清久

ページ範囲:P.779 - P.789

抄録

 今回精神障碍のイメージに関する調査をインターネットで実施した。そして過去に実施されたアンケート調査との比較を行うことで,この27年間で精神障碍に対するイメージがどのように変化したかを考察した。結果としては,「誰もが精神障碍になる可能性がある」ことは多くの人が「そう思う」と答えており,この27年間でこのような認識を持つ人が大きく増えてきていることが示唆された。また他の肯定的なイメージを示す質問でも精神障碍者に理解を示す回答が増加していることが分かった。これらのことは徐々に偏見誤解が少なくなりつつあることを示している。しかし,否定的なイメージについては「そう思わない」という回答はほぼすべてで低下しているものの,「そう思う」という回答率が増えている項目もあり,精神障碍者に関するイメージがすべての点で好転しているとは明確にとらえることはできなかった。とりわけ,「家族に精神障碍者がいることを人に知られたくない」という項目は否定的回答が最も多く,また過去に比べ増加しており,精神障碍者を身内に持つことを恥とする考え方が極めて根強いことが示された。また,2009年の調査での世代別の比較においては,若い世代ほど精神障碍者に対する態度が肯定的であった。「そう思う」と否定的態度を認める回答は世代が若いほど低く,「そうは思わない」という否定的態度を否定する回答も世代が若いほど多かった。その原因として接触体験の多寡,教育,マスメディアの報道などがかかわっている可能性が考えられる。これらのことより今後より対象を絞って,目的を持った効果的な教育プログラムが必要であることが示唆された。

死亡時に無職であった自殺既遂者の類型分類―心理学的剖検による検討

著者: 亀山晶子 ,   勝又陽太郎 ,   松本俊彦 ,   赤澤正人 ,   廣川聖子 ,   小高真美 ,   竹島正

ページ範囲:P.791 - P.799

抄録

 本研究では,死亡時に無職であった自殺既遂事例24例を心理・社会的特徴によって分類した。その結果,自立困難型,自立失敗型,中高年中途退職型,定年退職型が挙げられた。自立困難型や自立失敗型のような若年の無職者には,精神的な問題を早期に発見し自立を促進することの重要性が示唆された。中高年以上の無職者では,中高年中途退職型の気分障害やアルコール関連問題への対応や,定年退職型の精神面へのサポートといった精神保健的支援の必要性が示唆された。本研究の結果から,無職者の自殺予防対策として関連する心理・社会的問題や精神的な問題に対する精神保健的な対策を重点的に行っていくことの重要性が示唆された。

隔離室入室期間に投入される人的資源に関する研究―コストおよび行動制限最小化の視点から

著者: 泉田信行 ,   野田寿恵 ,   杉山直也 ,   平田豊明 ,   伊藤弘人

ページ範囲:P.801 - P.809

抄録

 精神科急性期医療のあるべきケア体制を明らかにするため,精神科病棟における急性期多職種チームへの直接ケア時間に関するヒアリング調査を実施した。対象は以前に予備的研究を実施した3病院を含む合計11病院である。その結果,病院の立地条件により直接ケア投入量が異なった。非都市部の病院では,より多くの投入量がみられ,隔離室入室1日目の直接ケア時間と隔離日数に有意な負の相関を認めた。新たに調査した8病院中5病院は理想的なケア時間が達成できれば隔離日数を短縮化できると回答したが,全8病院で理想的なケア時間の投入は収支を悪化させた。最適なケア提供のためには合理的な診療報酬の設定が必要である。

高齢者の口腔内セネストパチー―20症例の後方視的調査

著者: 岡村毅 ,   杉下和行 ,   荒井仁美 ,   田中修 ,   細田益宏 ,   古田光 ,   井藤佳恵 ,   粟田主一 ,   松田博史 ,   松下正明

ページ範囲:P.811 - P.817

抄録

 目的 高齢者の口腔内セネストパチーの臨床的特徴を明らかにする。

 方法 入院患者を対象にカルテ調査を行い,後方視的に20例の口腔内セネストパチーの症例を特定した。基本的属性,診断,転帰,有効な治療法,認知機能,検査所見などを調査した。

 結果 平均年齢は75.65±5.49歳,男性4名女性16名だった。診断は気分障害圏が75%を占めた。転帰は寛解9例,軽快8例,不変3例だった。5例が抗精神病薬,5例が電気けいれん療法,4例が抗うつ薬で良好な転機に至った。

 結論 高齢者の口腔内セネストパチーは,気分障害圏が多く,転帰が比較的良好であり,電気けいれん療法が有力な治療選択肢である。

インタビュー

DSM-5をめぐって―Dr. Allen Francesに聞く

著者: ,   大野裕

ページ範囲:P.819 - P.827

 2010年2月にアメリカ精神医学会(American Psychiatric Association;APA)から次期「精神疾患の分類と診断の手引き」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders;DSM-5)のドラフト(草案)が発表された。2013年5月のAPAの総会における正式発表を前に,DSM-Ⅳから大きく診断基準が変わるものもあることから,その基準・妥当性について種々議論がなされている。

 今回「精神医学」誌では,大野 裕氏に,DSM-ⅣのChairmanでもあったDr. Allen Francesに今回の改訂を中心にインタビューしていただいた。

資料

松山市の一精神科病院における外来受診患者の最近の動向調査

著者: 柿本泰男 ,   松村知治 ,   廣藤光介

ページ範囲:P.829 - P.835

はじめに

 わが国の人口の動態の急速な変化,すなわち少子高齢化は,精神科領域の主病変である統合失調症,躁うつ病および認知症の患者数に大きな変化をもたらしている。社会の産業構造の変革,世界経済の変動,家族や地域での生活様式の変化も精神疾患の発生や治療介護に大きな影響を及ぼしている。それらの疾患の患者数が年々増加し,その対策が不可欠として,2011年7月6日付で厚生労働省は,これまでのがん,脳卒中,心臓病,糖尿病に新たに精神疾患を加えて「5大疾病」として地域保健医療計画を作ることとした。

 精神疾患の患者は,地域社会における長年の偏見と差別のため,その実態が把握しがたかったが,最近20~30年間の経過の中で世の中の精神疾患への偏見は減少し,最近は比較的自由に精神科医療機関で治療を受けることができるようになった。精神科病院や精神科診療所も増加し,最近10年間は,ほぼ患者の需要を満たすようになったと思われる。そのため,ある医療機関の患者の動態は,その地域の患者の変化の実態をある程度反映するようになったと考えることができる。そこで地方の平均的な都市である松山市(人口51万人)における主要な精神科病院(市内6病院の総病床数1,675床のうち,本病院は743床)である松山記念病院での最近の患者数の変化を調べ,この地域の精神疾患患者の変動の実態の一端を知ろうと試みた。本病院は1932年に設立され,その後今日に至るまでのカルテはすべて保存している点,調査研究にとって有利である。本研究では最近11年間の松山記念病院の外来患者を年度ごとに疾患別に調査した。

紹介

特殊災害時における一般市民のPTSD罹患率に影響を与える要因

著者: 香月毅史 ,   鈴木英子 ,   叶谷由佳 ,   日下和代 ,   塩田久美子 ,   三井督子 ,   佐藤千史

ページ範囲:P.837 - P.845

抄録

 目的:特殊災害時における一般市民のPTSD罹患率に影響を与える要因を明らかにする。

 方法:データベースから特殊災害とPTSD罹患に関連する文献を検索し,罹患率と罹患要因との関連を分析した。

 結果:13件の特殊災害の関連文献が抽出された。PTSD罹患率はほぼ一定の割合(平均7.3%)を示した。しかし,罹患歴がある場合や反復的曝露では高いPTSD罹患率が見られた。

 考察:直接曝露,間接曝露の違いなどの外的要因に関わらず広い範囲にPTSDの罹患が及ぶことが明らかとなった。PTSD罹患には個人の生物学的耐性が関与し,被災の予期不安,日常的な脅威の継続がその域値を引き下げる要因になると考えられる。

私のカルテから

Quetiapineへの切り替え後に社会機能の改善がみられた慢性期統合失調症の2例―精神障害者社会生活評価尺度(Life Assessment Scale for the Mentally Ill;LASMI)を用いて

著者: 河邉憲太郎 ,   栗林達也 ,   福原竜治 ,   細田能希 ,   上野修一

ページ範囲:P.847 - P.852

はじめに

 統合失調症は,発病前期・前駆期・進行期・安定期の経過をたどる10)が,安定期では疾病水準が固定化し,抗精神病薬による治療効果は限局的である6)とされる。一方,近年,非定型抗精神病薬が用いられるようになり,統合失調症の寛解(remission)が可能になるに従い,単に疾患からの回復(recovery)を目指すだけでなく,社会復帰が指向されるようになりつつある3)。すなわち,陽性症状の改善に加え,陰性症状・認知機能障害などが関与する社会機能やquality of life(QOL)の改善を目指すことが重要視されるようになった。提示する慢性期統合失調症2症例は,幻覚や妄想などの陽性症状が表出されず内在する一方で,疎通性の不良などのコミュニケーション障害が目立つため,隔離室を中心とした入院治療が必要であったが,抗精神病薬を整理し,quetiapineを中心とした薬物療法に変更したところ,疎通性の改善や活動性の向上を認め,退院までには至らないものの,最終的に行動制限の改善が可能となった。今回,精神症状の評価に簡易精神症状評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale;BPRS)日本語版8)(各項目別スコア,合計スコア,クラスター別スコア2))に加え,日常生活・社会生活の評価として精神障害者社会生活評価尺度(Life Assessment Scale for the Mentally Ill;LASMI)4)を用い評価した。なお,症例報告に関しては家族の同意を得て,個人情報保護の観点から,本質に支障のない程度に症例の内容を変更している。

SSRIで出現した出血傾向に,他のSSRIへの変更が有効であったパニック障害について

著者: 三和千徳

ページ範囲:P.853 - P.855

はじめに

 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は気分障害や不安障害などに幅広く臨床現場で使用される薬物である。SSRIの稀な副作用として出血傾向が知られており,以前から多くの報告がある。出血傾向の出現後の対応としてはSSRIの服薬中断が原則であると思われるが,中断後に抑うつ気分や不安感が増悪し,その対応に苦慮することも多い。今回,筆者はfluvoxamineの使用で紫斑が出現したために中止し,その後sertralineを使用したところ紫斑の出現もなく良好な経過を得た1例を経験した。その症例の経過を報告し,出血傾向の出現後にSSRIから他のSSRIへの変更することについて考察を行った。なお,投稿にあたっては口頭で患者から同意を得た。また,プライバシー保護の観点から,科学的考察に支障がない範囲で症例の内容を変更した。

連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ

晩発性(老年期)統合失調症

著者: 安田学 ,   加藤敏

ページ範囲:P.856 - P.858

晩発性(老年期)統合失調症とは

 統合失調症は,一般的には10歳代後半から20歳代後半の男女が罹患する精神疾患であり,その割合は全人口のおよそ1%であるとされている。しかし,精神科臨床の現場では,40歳代以降の中高年期に至り,初めて統合失調症を発症する症例がしばしば見受けられていた。こうした症例は,まさにKraepelin6)の頃から報告されてきた。

 この中高年期に至って初発する統合失調症を初めて定義したのは,Bleuler1)である。

書評

―和田 健 著―せん妄の臨床―リアルワールドプラクティス

著者: 山田了士

ページ範囲:P.810 - P.810

 病院で死を迎える人が8割以上にも上る時代である。身体的に重症な患者が多ければ,せん妄は頻発する。特に高齢入院患者の多い今日では,せん妄はもはやcommon diseaseのひとつとであるとも言えるだろう。総合病院においてだけでなく,高齢者を対象とするあらゆる臨床場面において,せん妄の評価や治療は精神科医の必須の業務である。では,せん妄は本当に適切に治療されているのだろうか? リスペリドンやクエチアピン,あるいはハロペリドールの処方をして一丁あがりとはなっていないだろうか? 薬効がなかなか得られず,嚥下障害を併発して,看護者からの冷やかな視線に汗をかいたことはないだろうか?

 不思議なことに,せん妄について医師向けに日本語で書かれた成書はこれまでほとんどなかった。日本総合病院精神医学会による「せん妄の治療指針」がほぼ唯一のものだが,出版されてからすでに7年が経過しており,その間新たな知見の集積や治療薬の登場があったことから,アップデートされた知識の集大成が望まれていた。著者・和田健による本書はそのような要望に応えるべく登場したものである。著者は広島市民病院をはじめとした臨床活動のみならず,日本総合病院精神医学会でも理事として数々の重要な役割をこなしながら総合病院精神医療に大きな貢献をなしている精神科医である。せん妄の臨床においてもいまや斯界の第一人者といってよいだろう。

―長嶺敬彦 著―統合失調症を生きる―精神薬理学から人間学へ

著者: 諸岡良彦

ページ範囲:P.818 - P.818

 本書は単科精神病院の内科部長によって書かれた統合失調症と薬物療法を要とする治療全般にわたる解説書である。「精神薬理学から人間学へ」という副題が示すように,薬理から出発して病理を考え,治療の論理を展開し,患者の統合的な健康をもケアする医師によって書かれたもので,病態と薬効,症例を中心とする既存書にはみられない斬新な内容となっている。

 統合失調症は国民が1%の比率で罹患する疾患で,その原因が確定されてない最大のものであろう。診断は病態に関する問診がすべてで,その基準は国によっても,個々の精神科医によってもかなりの幅がある。わが国では独自の基準もなく,かつて双極性障害との境界をカバーした非定型精神病という診断もいつの間にか消失した。替わって影響力を増したDSMも病理ではなく,病態中心の診断のためのマニュアルに過ぎない。Schizophreniaと名の付く類似疾患も2,3にとどまらず,統合失調症自体の症状にさえ,全く別の疾患である広範性発達障害の影が陰に陽にちらついている。

―石津 宏 責任編集―専門医のための精神科臨床リュミエール27―精神科領域からみた心身症

著者: 尾崎紀夫

ページ範囲:P.859 - P.859

 心身医学に興味を持ったのは高校生の頃,池見酉次郎先生の「心療内科」(中公新書)を拝読した時に遡る。小説好きから精神分析に興味を持ち始めていた当時,「心療内科」に書かれていた内容,特に症例を中心とした臨床的な話は,大変,魅力的なものであった。両親医師(精神科医ではない)の元で育ったものの,「医学より文学」などと考えていた私に,「臨床医学は興味深い」と思わせる効果を持っていた。その結果,「精神科医か,はたまた心療内科医を目指すべきか」という迷いは生じたが,いずれにせよ,医学部に進むことは間違いのない方向と思えた。

 その後,卒後研修医として各科をローテートする2年間を市中の総合病院で過ごした。その間,様々な身体疾患の経過に心理社会的な要素が関与することを目の当たりにしたが,中でも強く関心を持ったのは,腎臓移植であった。1) 免疫抑制のため使われる副腎皮質ステロイドや腎機能障害が脳に与える影響という生物学的次元の問題,2) 本邦で大半を占める生体腎移植に際し,「家族内の誰が腎臓を提供するのか」という問題を巡って生じる家族内葛藤の問題,3) 他者の腎臓が自己の腎臓として身体的にも精神的にも統合される過程が引き起こす自己と他者の問題,などなど。まさに,生物・心理・社会的な問題をはらんでおり,その後の診療,教育,研究に大きなインパクトを与える体験であった。

論文公募のお知らせ

テーマ:「東日本大震災を誘因とした症例報告」

ページ範囲:P.778 - P.778

「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。

ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

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今月の書籍

ページ範囲:P.860 - P.860

次号予告

ページ範囲:P.858 - P.858

投稿規定

ページ範囲:P.861 - P.862

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.863 - P.863

編集後記

著者:

ページ範囲:P.864 - P.864

 本号でもいつものように多方面からの論文が掲載されそれぞれに教えられるところがあるが,一番目を引くのは,なんといってもDSM-5をめぐるAllen Frances先生への大野裕先生のインタビューではないだろうか。本インタビューはFrances先生の来日に合わせて急遽本誌のために行われたもので,この場をお借りして,快くお引き受けくださったFrances先生とご尽力いただいた大野先生に感謝申し上げたい。

 本インタビューを企画した目的は,日本におけるDSM-5の無批判な受容への警鐘である。わが国の精神医学界はずっと“舶来品”に弱く(国際標準化といえば聞こえはよいが),昨年来,本誌を含め複数の雑誌でいち早くDSM改定の動きやDSM-5の紹介が組まれてきたが,果たして読者,特に若い読者はFrances先生の批判や懸念をどのようにお読みになるだろうか。DSM-5を咀嚼し自分の身にしていく際に,このインタビューで指摘されている“痛いところ”が,喉に刺さった魚の小骨のように自覚や反省を喚起するとしたら,編集子の意図は外れてはいない。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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