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雑誌目次

雑誌文献

精神医学54巻9号

2012年09月発行

雑誌目次

巻頭言

アルコール医療のこれから

著者: 杠岳文

ページ範囲:P.868 - P.869

 間もなく,わが国のアルコール医療創生から50年目の節目を迎える。日本のアルコール医療は,故河野裕明,堀内秀両先生が中心となって1963年国立久里浜病院(現国立病院機構久里浜医療センター)に開放管理のアルコール依存症の専門治療病棟を設置し,入院3か月と期間を限定した集団でのプログラム治療を行ったことに始まるとされる。それ以前のアルコール依存症患者に対する精神科医療は,依存に対する特別の治療技法を持たなかったこともあり,社会や家族に迷惑をかける患者を隔離収容することが中心となっていたようである。1975年には,久里浜病院でアルコール中毒臨床医研修事業が開始され,ここで学んだ者が日本各地で同様の集団のプログラム治療を実践し,「久里浜方式」として広く知られるようになった。また,最近では,中年男性を中核群としながらも,患者層は女性,若年,高齢者と多様化し,それぞれの特性に応じたプログラムも行われるようになり,治療プログラムには認知行動療法も幅広く取り入れられてきた。多少の変遷はあったものの,わが国でのアルコール医療は専らアルコール依存症患者,特にその中でも比較的重篤な患者に対して断酒を唯一の治療目標とする治療が行われてきた。一方で,有効な薬物治療も新たに出現しないまま治療成績に大きな改善はみられず,長期の完全断酒率は20%程度とされている。

 2003年に行われた全国調査では,わが国のアルコール依存症患者は約80万人,1日に6ドリンク以上(1ドリンクは純アルコール10グラムを含むアルコール飲料で,6ドリンクは約日本酒3合に相当)の多量飲酒者は約860万人に及ぶと推計されている。最近では,図に示すようなアルコール使用障害に対する用語を世界保健機関(WHO)は推奨しており,「乱用」,「誤用」などは使われなくなってきている。「有害な使用(harmful use)」は依存症の手前の段階で,すでに多量飲酒による心身への健康被害がありながらの飲酒,さらに「危険な使用(hazardous use)」は現在のままの飲酒を続けていると将来健康被害が及ぶ可能性の高い飲酒とされる。最近公表された「健康日本21(第2次)」では,生活習慣病のリスクを高める量として1日当たりの飲酒量が男性4ドリンク以上,女性2ドリンク以上とされており,今後はこれが危険な使用判定の目安になる。これに当てはまるものは,国内にざっと2,000万人程度であろうか。

研究と報告

長崎市の原爆被爆者における長期経過後の精神的影響

著者: 太田保之 ,   三根真理子

ページ範囲:P.871 - P.880

抄録

 長崎市の原子爆弾被爆者を対象に,被爆という心的外傷が58年後にいかなる影響を及ぼしているのかについて分析した。対象者は14,597人である。評価尺度は被爆体験によるPTSD症状を測定するIES-Rと調査時点の精神的健康度を測定するGHQ-12である。全対象者のIES-R高得点者率は31.9%であった。爆心地からの距離別にみると,爆心地に近い場所での被爆者はIES-R高得点者率が有意に高かった。IES-R高得点者群はGHQ-12高得点者率が有意に高かった。被爆体験とともに被爆後の生活上のストレスの加重が関係していると推測された。IES-R高得点者群は調査時点で個人的に感じ取っている罹患疾患数が有意に多く,対象者が被爆と関係があると判断している罹患疾患数も有意に多かった。被爆者の永続的な身体的健康不安が示唆された。

大麻精神病と大麻乱用後に発症した統合失調症の違い

著者: 新川祐利 ,   梅津寛 ,   大島健一 ,   岡崎祐士

ページ範囲:P.881 - P.888

抄録

 大麻乱用後に幻覚妄想状態を呈した2症例を報告した。症例1は大麻精神病,症例2は大麻乱用の経験がある統合失調症と診断し,両者の違いを考察した。急性期症状は類似点が多いが,本症例の大麻精神病は幻覚妄想に対し恐怖や緊張を伴わず,妄想内容が了解可能であることが統合失調症と異なっていた。大麻精神病の経過では,大麻による無動機症候群を認め,意欲減退などが原因で社会機能が低下し,統合失調症の陰性症状と類似した。しかし,対人関係の障害や認知機能障害は認めず,治療により社会機能が病前の状態まで回復したことが異なっていた。大麻乱用が統合失調症を惹起する可能性が推察された。

日本版Vineland-Ⅱ適応行動尺度の開発―不適応行動尺度の信頼性・妥当性に関する報告

著者: 伊藤大幸 ,   谷伊織 ,   行廣隆次 ,   内山登紀夫 ,   小笠原恵 ,   黒田美保 ,   稲田尚子 ,   萩原拓 ,   原幸一 ,   岩永竜一郎 ,   井上雅彦 ,   村上隆 ,   染木史緒 ,   中村和彦 ,   杉山登志郎 ,   内田裕之 ,   市川宏伸 ,   田中恭子 ,   辻井正次

ページ範囲:P.889 - P.898

抄録

 本研究は,全年齢に適用可能であり国際的に広く利用されるVineland Adaptive Behavior Scales, Second Editionの日本版の標準化に関する研究の一環として,不適応行動尺度の信頼性・妥当性を検証した。項目分析の結果,いずれの項目も十分な項目-合計相関を示した。内的整合性を示すα係数は,2つの下位尺度および全体尺度とも良好な値を示した。一般群と自閉症スペクトラム群の尺度得点を比較したところ,顕著な得点差がみられ,幼児期から青年・成人期にかけて,得点差が拡大する傾向がみられた。知能指数との相関は中程度までにとどまり,知的能力とは独立の構成概念を測定していることが示された。これらの結果は不適応行動尺度の高い信頼性・妥当性を示している。

短報

病初期にアルツハイマー病類似の症候を呈した神経梅毒の1例

著者: 松崎志保 ,   橋本衛 ,   小田篤介 ,   池田学

ページ範囲:P.899 - P.905

抄録

 発症後1年以上は緩徐進行性の記憶障害と言語障害のみで明らかな神経所見や精神症状はなく,画像検査からもアルツハイマー病として矛盾のない所見を呈していたが,その後亜急性に認知機能障害,言語障害,精神症状の悪化を認め,神経梅毒と診断した44歳,男性例を経験した。本例では駆梅療法により良好な治療結果が得られたが,神経梅毒は治療が遅れると不可逆的な経過をたどる疾患でもあることから,神経梅毒を示唆する典型的な症状を欠いていても,認知症患者を診察する場合,生活史や既往歴の確認と梅毒のスクリーニング検査により神経梅毒を除外することが必須であることを再確認した。

舞踏運動がみられず,長期にわたり精神疾患と誤診されたHuntington病の1例

著者: 岩藤元央 ,   田中大輔 ,   樋口久 ,   野口美和 ,   鈴木慈 ,   山口登

ページ範囲:P.907 - P.910

抄録

 Huntington病(HD)は,常染色体優性の遺伝形式をとる進行性の神経変性疾患である。舞踏運動(chorea)と形容される特徴的な不随意運動が90%以上に出現し,筋トーヌスの異常などの種々の神経症状も出現する。また,精神症状(認知症,人格変化,幻覚妄想,感情障害)および自殺企図の傾向といった臨床的特徴を持つ。今回我々は,初期に舞踏運動などの特徴的な症状を呈さず,抑うつ症状などの精神症状が主体であったため,診断確定までに6年を要したHDの1例を経験した。今後HDの早期診断のために,HDの初期の精神症状の特徴,鑑別方法について,文献的考察を交え報告する。

3歳児健診おける広汎性発達障害児早期発見のためのスクリーニングツールPARS短縮版導入の試み

著者: 中島俊思 ,   伊藤大幸 ,   大西将史 ,   高柳伸哉 ,   大嶽さと子 ,   染木史緒 ,   望月直人 ,   野田航 ,   林陽子 ,   瀬野由衣 ,   辻井正次

ページ範囲:P.911 - P.914

抄録

 広汎性発達障害(pervasive developmental disorder;PDD)特性把握のための評定尺度PARS(PDD-Autism Society Japan Rating Scale)幼児期短縮版を,自治体保健センターの3歳児健診におけるスクリーニングツールとして導入した。PARS短縮版は12項目からなる半構造化面接式のアセスメントツールであり,カットオフポイントは5点である。内的整合性はα=.76と十分な信頼性を示した。スクリーニングによる陽性児の男女比がおおむね3:1と先行研究に一致した。健診参加児1,202名のうち119名が陽性となり,陽性率は9.9%となった。PARS短縮版による陽性判定を受けた対象者のすべてがPDDの診断を受けるわけではなく,実際のPDDの有病率とは異なるが,全住民参加型の健診システムにおける一次スクリーニングツールとしての有用性が示された。

資料

韓国におけるインターネット嗜癖(依存)の現状

著者: 前園真毅 ,   三原聡子 ,   樋口進

ページ範囲:P.915 - P.920

抄録

 韓国政府は,2000年初頭よりネット依存対策に取り組んでいる。韓国での問題は主に青少年のオンラインゲーム依存である。そこから派生した死亡や自殺ケースが社会問題となったのがはじまりである。政府機関である女性家族部は,嗜癖評価尺度IATの韓国版K-scaleを開発,それによる全国調査を2009年より毎年行っている。

 調査結果から依存傾向者をスクリーニングし,11泊12日のキャンププログラム,入院によるネット依存治療を提供している。また2011年11月より16歳未満に対するシャットダウン制が開始予定である。日本では,携帯電話を媒介としたネット依存問題が潜在している。今後,韓国の取り組みを参考に日本でのネット依存対策を具体化していく必要がある。

心神喪失者等医療観察法における物質使用障害治療プログラムの開発と効果

著者: 今村扶美 ,   松本俊彦 ,   小林桜児 ,   和田清

ページ範囲:P.921 - P.930

抄録

 本研究の目的は,国立精神・神経医療研究センター病院医療観察法病棟における物質使用障害治療プログラムの効果を明らかにすることである。本研究では,物質使用障害を併存する同病棟入院患者28名を対象として,全28回からなる治療プログラム実施し,その前後における「薬物依存に対する自己効力感スケール」,および「SOCRATES(Stages of Change Readiness and Treatment Eagerness Scale)」の2つの尺度得点の変化を検討した。その結果,介入後には,アルコール問題については,自己効力感スケールの総得点およびSOCRATESの下位尺度・総得点において有意な上昇傾向が認められた。また,介入後には「抗酒剤」の服用率および自助グループへの参加同意率の顕著な上昇が認められた。

紹介

自閉症をめぐるフランス的問題―「壁―自閉症について試される精神分析」を中心に

著者: 松本卓也 ,  

ページ範囲:P.931 - P.937

はじめに

 2011年12月,フランスのFrançois Fillon元首相は,自閉症患者の家族と臨床家で構成される団体「自閉症のためのアンサンブル(Ensemble pour l'autisme)」に対して,2012年の「国家的大義」の称号を与えることに決定した。それを受けて,現在フランスでは自閉症が大きな注目を集めている。しかし,フランスにおける自閉症の理論と実践が数多くの対立をはらんでいることは,本邦ではあまり知られていないように思われる。

 そこで本稿では,フランスの自閉症臨床家のあいだで大きな関心を集めたドキュメンタリー映画を中心に,自閉症に関するフランス独特の事情を紹介したい。

メタ認知トレーニング(Metacognitve Training;MCT)日本語版の開発

著者: 石垣琢麿

ページ範囲:P.939 - P.947

はじめに

 認知行動的アプローチの発展により,特に英国において1980年代以降,統合失調症の症状に関する認知心理学的メカニズムの実証的解明と介入・援助法の開発が盛んになった1)。たとえば,妄想を抱きやすい患者に特有の認知バイアスは,自己奉仕バイアス(原因帰属のありかた),「結論への飛躍」バイアス,「心の理論」の欠如,否定的な自己イメージ,などだと考えられている2)

 ハンブルク大学のMoritz教授らは,こうした現状をふまえて,妄想の認知バイアスに対する新たな心理教育・介入法を開発し,メタ認知トレーニング(Metacognitive Training:MCT)と名付けた2)。筆者は原著者の許可を得てMCT日本語版を作成した(http://www.uke.de/mktから無料ダウンロード可能だが,最新の日本語版と日本語版マニュアルについては筆者までご連絡いただきたい)。本稿ではマニュアルに沿ってMCTを紹介する。

私のカルテから

Risperidoneからaripiprazoleへの置換により部分的に認知機能の改善を認めた長期入院中の統合失調症患者の1例―MCCB日本語版を用いた評価

著者: 中村尚史 ,   原田俊樹 ,   片山寄子 ,   橋口真人

ページ範囲:P.949 - P.951

はじめに

 統合失調症患者の長期入院は現在も大きな課題であるが,その要因の1つに認知機能障害が指摘されている。たとえば記憶,遂行機能,注意,語流暢性などの障害があり,これらが社会適応や就労状況といった機能的転帰と関連するという報告がある3)。この問題を解決するため,米国の国立精神衛生研究所(NIMH)が中心となり,統合失調症における認知機能の改善のための測定と治療の研究(Measurement and Treatment Research to Improve Cognition in Schizophrenia;MATRICS)が約10年前から進められてきた。この研究の中で統合失調症の認知機能を測定できるバッテリー,MATRICS-Consensus Cognitive Battery(以下MCCB)が開発された2)。わが国においてもMCCB日本語版に翻訳され4),現在ではいくつかの研究施設にて臨床研究に応用されている。

 MCCB日本語版は,処理速度,注意/覚醒,ワーキングメモリー(非言語,言語),言語学習,視覚学習,推論と問題解決,社会認知の7つの認知機能領域を10のテストを使用し評価する。今回,こころの医療たいようの丘ホスピタル(以下当院)において,長期入院中の統合失調症の患者に対して,risperidoneからaripiprazoleに置換を行い,その前後で認知機能をMCCBにて評価を行い,部分的に認知機能の改善を認めた1例を経験したので考察を含めて報告する。なお,本症例報告の投稿に際して患者および家族の同意を得て,さらに当院内の倫理委員会にて承認を得た。

書評

―Francesc Colom,Eduard Vieta 原著,秋山 剛,尾崎紀夫 監訳―双極性障害の心理教育マニュアル―患者に何を,どう伝えるか

著者: 加藤忠史

ページ範囲:P.952 - P.952

 双極性障害は脳の疾患であり,再発予防効果を持つ薬剤が存在する。それだけに,薬物療法に力点が置かれることが多い。しかし,薬剤は,服用しなければ効果がなく,長期に予防薬を服用することは容易ではない。したがって,薬物療法と心理教育が,双極性障害の治療において,車の両輪となる。

 本書は,双極性障害の心理教育に特化した初めての日本語の書物である。著者のVieta氏は,新薬の臨床試験の論文を多く発表し,講演会などで引っ張りだこの著名な双極性障害研究者であり,Colom氏と共に,多くの心理教育の論文を執筆している。

―中村 純 編案,野村総一郎,中村 純,青木省三,朝田 隆,水野雅文 シリーズ編集―《精神科臨床エキスパート》―抗精神病薬完全マスター

著者: 神庭重信

ページ範囲:P.953 - P.953

 新規の抗精神病薬が出そろった観がある。通称として,第2世代とも非定型とも呼ばれるこれらの薬剤は,従来の抗精神病薬と比べて,パーキンソン症候群,ジストニア,遅発性ジスキネジアが出にくいことは確かである。これは,統合失調症の治療が,チーム医療となり,病院から地域へと広がり,患者さんの社会復帰を実現させていく上で,極めて好都合なことであったと思う。

 しかしながら一方で,東アジア6か国における統合失調症患者の処方調査(2001年7月時点)によれば,向精神薬数,抗精神病薬の処方量ともに,日本が断トツ1位である。多剤・大量療法の問題がマスメディアによる辛辣な糾弾を受け,厚生労働省から「向精神薬等の処方せん確認の徹底等について」と題された課長通知(2010年9月)が出されるに至っている。平成25年度から始まる地域医療計画で実施される医療連携の中でも,抗精神病薬の単剤化率が病院機能を測る指標として言及されている。すでに睡眠薬の併用数が3剤を越えると診療報酬が減額されることが決まったと聞く。このような“外圧”を受けて医療を変えざるを得ない状況に至ったことは,精神医学に身を置くものとして,不名誉なことである。

―神庭重信,松下正明 責任編集―専門医のための精神科臨床リュミエール30―精神医学の思想

著者: 西園昌久

ページ範囲:P.954 - P.954

 本書の「序」によると,日々新たに加わる精神医学上の課題の解決の方向を照らしだす光(フランス語:リュミエール)の役割を果たすことを目的に刊行されてきた本シリーズも一旦,本書をもって休止されるという。従って本書はいわば,これまでの本シリーズの総括書である。題して,『精神医学の思想』。評者のような年輩の者ならずとも,日々のおのれの臨床の所為にいささかな思いをしている精神科医は手にしたいネーミングの本である。というのも精神医学は人間存在,そして社会のあいまいさ,不確かさに対応せねばならない。つまり,精神科医は本来,「考える人」であることを求められるのである。それに応ずるかのように,本書の「序」で2人の編者は連名で,“そもそも精神の自由とはどういう状態なのか,そして究極的には,人であるとはどういうことなのかなどの疑問を抱きながら,精神医学は精神を病む人びとと向きあうことになる”と記している。その謙虚さこそ精神医学を成り立たせるものであろうし,本書編集の基本的態度であろうと読みとれる。

 本書は6章21項目からなる構成である。それを紹介することは指定された字数を超えるためできないが,よくもまあこれだけのテーマを用意され,しかもそれにふさわしい執筆者を集められたものと思う。大学を辞めて10数年経つ評者には執筆者の多くの方は未知の人であるが,それぞれの内容はそれぞれの専門の立場から本書の『精神医学の思想』の趣旨にそった論述をされ,徒らに自己の立場に拘わるという論文は見あたらない。その意味で,精神医学とその関連領域の最近の進歩を安心して学ぶ格好の教材である。わが国の精神医学研究陣の健在さとその可能性をあらためて実感することができた。

―井上有史,池田 仁 編集―新 てんかんテキスト―てんかんと向き合うための本

著者: 山内俊雄

ページ範囲:P.955 - P.955

 書名に「新」と付いているのは,1991年に出版された「てんかんテキスト―理解と対処のための100問100答」が,てんかん医療の進歩や読み手のニーズの変化に呼応して内容を改め,装いを新たに上梓されたためである。

 昨今,「てんかんと交通事故」あるいは「免許の取得」が話題となっているが,その他にも,てんかんに関する話題が新聞やテレビに取り上げられるようになり,以前ほどは偏見と誤謬に満ちた疾患ではなくなってきたことは喜ばしいことである。

学会告知板

第6回レビー小体型認知症研究会(レビー小体発見100周年記念大会)

ページ範囲:P.920 - P.920

開催日 2012年11月10日(土)

場所 新横浜プリンスホテル(〠222-8533 横浜市港北区新横浜3-4)

第30回日本青年期精神療法学会総会

ページ範囲:P.937 - P.937

テーマ 時代の閉塞感を突き抜けよう! 青年たちとともに!…精神療法の可能性

大会長 大高一則(医療法人大高クリニック)

会 期 2012年12月1日(土)・2日(日)

会 場 愛知芸術文化センター12Fアートスペース

    〠461-8525 名古屋市東区東桜1-12-2

論文公募のお知らせ

テーマ:「東日本大震災を誘因とした症例報告」

ページ範囲:P.880 - P.880

「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。

ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

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今月の書籍

ページ範囲:P.956 - P.956

次号予告

ページ範囲:P.905 - P.905

投稿規定

ページ範囲:P.957 - P.958

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.959 - P.959

編集後記

著者:

ページ範囲:P.960 - P.960

 ロンドンオリンピックでの日本選手の活躍に国中が沸き返った後は,いつもの残暑の厳しい日常に戻った感がある。9月号がお手元に届くころは爽やかな季節に移っていることであろう。本号は研究と報告が3本,短報が3本,資料が2本,紹介が2本,私のカルテからが1本とバランスよく掲載されている。研究と報告では太田保之氏と三根真理子氏が「長崎市の原爆被爆者における長期経過後の精神的影響」を報告している。被爆という心的外傷が58年後に及ぼす影響を分析した結果,影響を強く受けているものが31.9%と高く,爆心地に近い者ほど影響が強かった。しかも被爆と関係あると判断している罹患疾患数も多く,心身相関的な呪縛による身体疾患罹患への不安が持続していると考察している。心を打たれる報告である。新川祐利氏らが「大麻精神病と大麻乱用後に発症した統合失調症の違い」を報告した。乱用薬物による精神病か,薬物によって誘発された統合失調症かの鑑別は,覚せい剤精神病についても言え,てんかん精神病と統合失調症との鑑別にも言える。脆弱性素因を有するかどうかということと,病態が統合失調症の基本的な障害を示しているかが重要で,統合失調症研究にヒントを与えてくれる。伊藤大幸氏らの「日本版Vineland-Ⅱ適応行動尺度の開発―不適応行動尺度の信頼性・妥当性に関する報告」は,発達障害や知的障害を持つ人々を医療的・教育的・行政的に支えていくためには,知的機能だけでなく適応行動をどれだけ獲得しているかを評価することが不可欠で,世界的に認められ利用されている本評価尺度が利用できるようになれば極めて有用であろう。資料では前園真毅氏らの「韓国におけるインターネット嗜癖(依存)の現状」が興味深かった。青少年のオンラインゲーム依存で死亡や自殺ケースが問題になり,依存傾向者のスクリーニング,キャンププログラムの実施など国を挙げて取り組んでいるという。日本においても早晩問題になるので参考になるであろう。紹介欄で松本氏とDelphine氏は『自閉症をめぐるフランス的問題「壁―自閉症について試される精神分析」を中心に』を紹介している。自閉症は世界的には認知行動療法的な働きかけが有効であると評価されているが,フランスでは精神分析的働きかけとの間に論争があり,いまだに決着はみられないという。フランス精神医学の現況の一端を知ることができて興味深い。9月号でも興味深い論文を読者にお届けできたのではないかと思う。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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