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文献詳細

雑誌文献

精神医学54巻9号

2012年09月発行

文献概要

短報

病初期にアルツハイマー病類似の症候を呈した神経梅毒の1例

著者: 松崎志保1 橋本衛2 小田篤介3 池田学24

所属機関: 1熊本大学大学院医学教育部神経精神科学 2熊本大学医学部附属病院神経精神科 3国立病院機構熊本医療センター精神科 4熊本大学大学院生命科学研究部脳機能病態学分野

ページ範囲:P.899 - P.905

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抄録

 発症後1年以上は緩徐進行性の記憶障害と言語障害のみで明らかな神経所見や精神症状はなく,画像検査からもアルツハイマー病として矛盾のない所見を呈していたが,その後亜急性に認知機能障害,言語障害,精神症状の悪化を認め,神経梅毒と診断した44歳,男性例を経験した。本例では駆梅療法により良好な治療結果が得られたが,神経梅毒は治療が遅れると不可逆的な経過をたどる疾患でもあることから,神経梅毒を示唆する典型的な症状を欠いていても,認知症患者を診察する場合,生活史や既往歴の確認と梅毒のスクリーニング検査により神経梅毒を除外することが必須であることを再確認した。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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