icon fsr

雑誌目次

論文

精神医学55巻10号

2013年10月発行

雑誌目次

巻頭言

アカシジア再考

著者: 大西秀樹

ページ範囲:P.924 - P.925

 精神科医であるが,大学病院に設置されたがん専門病院で「精神腫瘍医」として働いている。がんの罹患に伴うさまざまな精神症状の診断と治療が診療の柱で,それをベースとした教育,研究も行っている。

 がん患者は手術,放射線,化学療法を中心としたさまざまな治療を受けているので,呈する症状は多彩である。疾患由来の症状の他,治療や投薬に起因する症状もある。また,体力が落ちて起き上がることが難しくなっている患者も多い。そのような条件下で精神症状の診断と治療を行うのであるが,疾患,治療により生じる症状に見えても精神症状であることも稀ではなく,目の前で起きている症状が身体症状なのか精神症状なのか鑑別に苦慮することも多い。

特集 アンチスティグマ活動の新しい転機Ⅰ

アンチスティグマ活動の前進―第6回世界精神医学会アンチスティグマ分科会国際会議から

著者: 秋山剛

ページ範囲:P.927 - P.928

はじめに

 精神疾患について,事実を十分に確認しないまま,思いこみでネガティブな発言がされることがある。これをスティグマ(偏見)と呼ぶ。スティグマは,病気を乗り越えながら頑張っている本人や,支援している家族に大きなダメージを与える。精神疾患に対する社会のスティグマを改善するための活動を,アンチスティグマ活動と呼ぶ。わが国では,さまざまな組織や団体が,幅広い分野でアンチスティグマ活動を行っているが,これまでこういった活動について発表する大会が開かれたことはなかった。2013年2月12日~14日,砂防会館(東京都)において,アンチスティグマをテーマとした初めての国際会議,第6回世界精神医学会アンチスティグマ分科会国際会議が開催された。

総論:わが国におけるアンチスティグマ活動を中心に

著者: 高橋清久 ,   中西英一

ページ範囲:P.929 - P.940

はじめに

 スティグマという言葉の起源は古くはギリシャ時代に奴隷や犯罪者などに,それと分かるように刺青やマークを入れたことが始まりとなり,それらをスティグマと呼んでいた。すなわち,身体に刻印された徴である。それが転じて,烙印,恥辱,汚名,といた意味で使われるようになった。また,無知の状態,すなわち理解していない状態で,ある固定的な先入観を持つとき,ステレオタイプなイメージが生じる。この過程をスティグマ化と呼び,拒否的あるいは否定的なステレオタイプは偏見,差別,排除などにつながる。たとえば,精神障碍者について何も知らない状態で,マスメディアなどにより精神障碍者と犯罪とが関係があるような見方が植え付けられると,人々は一様に精神障碍者は危険なものと考えてしまう。アンチスティグマ活動は,このような偏見,差別,排除に対して正しい知識を提供してステレオタイプ化した考えを適切な理解,態度,行動に変えていくことを目的とした活動である。

 精神障碍に対するスティグマの問題は時代や国を超えて,常に大きな課題である。精神障碍者に対するスティグマは精神障碍それ自体よりも,当事者にとって困難な問題であることもよく知られている。またスティグマは一般社会,地域の市民の中だけではなく,当事者自身にも,それを取り巻く家族,精神医療福祉関係者,一般の医療者,保健関係者,行政関係者など,立場の違う多くの人たちの中にも存在している。

 本稿ではわが国で精神障碍者に対するスティグマが生じた要因と現状,そして今後のとるべき方向性について論じ,世界精神医学会(WPA)を中心としたアンチスティグマ活動についても概観する。

スティグマと闘うための方策2013

著者:

ページ範囲:P.941 - P.945

はじめに

 精神疾患にまつわるスティグマは,2013年においてもなお精神障害者のケアの向上にとって大きな妨げとなっている。それどころか,スティグマは一層広がっており1,2),差別は深刻さを増しているようである。精神疾患のスティグマは精神障害者の世代から世代へと引き継がれ,また家族,精神疾患に取り組む医療従事者,精神医療の中心的役目を果たしている施設,精神科の治療方法へも広がっている3,4)

 スティグマは回避または減少させることが可能だという確かなエビデンスがあるにもかかわらず5,6),現実にはスティグマが広まっているという事実をふまえると,こうした傾向の重大さが問題となる。この矛盾の説明としては,我々が精神疾患とその影響のスティグマと闘うために用いている原則と方法は時代遅れで,もはや有効ではないと考えることが最も妥当であろう。本稿では,この観点から,現在取られているアンチスティグマ活動の原則のいくつかを検証する。

精神衛生における差別解消のためのエビデンス―英国における大衆向けキャンペーン

著者: ,   ,  

ページ範囲:P.947 - P.953

スコットランドにおける“See Me”キャンペーン

 “See me”キャンペーン(www.seemescotland.org/)は2002年に公式に立ち上げられた。2001年以降スコットランドの慈善家によって年に約100万ポンドの基金が提供されている。運営は5つの機構の連携によって行われた[Scottish Association for Mental Health(SAMH), Support in Mind Scotland, The Royal College of Psychiatrists in Scotland, PenumbraおよびHighland Usersグループ]。その主な活動は一般の人々を対象とするマスメディアによるキャンペーンおよび若年者を含む職場におけるキャンペーンである。精神衛生に関連する記事を報道することを目標とするジャーナリストらも対象となっている。“See Me”はメディアのボランティア集団に対し彼らもまたスティグマや差別体験に関連する精神衛生上の問題を実際に体験し,精神衛生上の問題を抱える人々からインタビューを受けることを勧めた。また,“See Me”は他の組織に対して資料,助言およびガイダンスを提供することを通じて地域レベルでのキャンペーン活動を支援している。

 “See Me”の評価には2008年まで2年ごとに繰り返し行われた大衆の態度についての調査が含まれた。既存の検証済みの指標よりもむしろ,スティグマや差別に対する今までとは異なる項目が用いられた。2002~2008年の回答を比較することによって,ほとんどの質問に対して改善が得られたことを示した5)。最も注目されるのは,精神衛生上の問題を抱える人々の中で危険に遭遇したことがしばしばあると答えた人が以前に比べ減少した点である(2002年の30%に比べ2008年は19%であった)。

スピーカーズビューローによる精神障害のアンチスティグマ活動の実践報告

著者: 菅原里江 ,   中鉢皓大 ,   佐藤光源

ページ範囲:P.955 - P.959

はじめに

 精神症状の消失と社会的機能の改善,さらにリカバリーを目指した精神科医療が行われているが5),それを阻む大きな要因に精神障害に対するスティグマがある2)。2004年からの「精神保健医療福祉の改革ビジョン」でも国民意識変革のための適正な知識の普及啓発が3本柱の1つであるが,新たな目標の設定とその推進が課題とされている1)。日本では精神分裂病の病名が変わり,社会に説明する疾病概念も現実的なコンセプトに刷新されたが,それも社会参加や自立を阻むスティグマの解消を目指したものである3)。多要因からなるスティグマの解消に向けてさまざまな活動が行われているが,知識の適正化よりも,むしろ当事者との接触体験が内外で効果的な方法と考えられている。

 ここでは単なる接触体験を超えて,仙台市が取り組んできた当事者自身による普及啓発活動4)を紹介し,それが社会的スティグマとともにセルフスティグマの改善にも有用であることを報告する。

展望

不安うつ病の諸相

著者: 吉野相英

ページ範囲:P.961 - P.970

はじめに

 不安障害とうつ病はそれぞれ独立した疾患単位であると考えられてはいるが,実際には併発することが多く,その併発率は40~50%にも達する。不安障害を同時併発しているうつ病,あるいは不安症状が顕著なうつ病を不安うつ病anxious depressionと呼ぶことがあるが,不安うつ病が独立した疾患単位としての要件を満たしているのかどうか,今のところ明確とはいえず,結論は得られていない。しかし,近年の研究を通じて,抑うつ症状がより重篤であり,慢性化しやすく,抗うつ薬治療に抵抗するなどの特徴が次第に詳らかになり,DSM-5では「不安による苦痛を伴うもの」という特定用語が導入されるに至った。つまり,亜型診断が可能となったのである。小論では不安うつ病をさまざまな観点から展望し,精神科診療におけるその意義について考えてみたい。

研究と報告

日本版Vineland-Ⅱ適応行動尺度の開発―適応行動尺度の項目分析と年齢による推移

著者: 谷伊織 ,   伊藤大幸 ,   行廣隆次 ,   平島太郎 ,   安永和央 ,   内山登紀夫 ,   小笠原恵 ,   黒田美保 ,   稲田尚子 ,   萩原拓 ,   原幸一 ,   岩永竜一郎 ,   井上雅彦 ,   村上隆 ,   染木史緒 ,   中村和彦 ,   杉山登志郎 ,   内田裕之 ,   市川宏伸 ,   田中恭子 ,   辻井正次

ページ範囲:P.971 - P.980

抄録

 本研究は,全年齢に適用可能であり国際的に広く利用されるVineland Adaptive Behavior Scales, Second Editionの日本版の標準化に関する研究の一環として,適応行動尺度の項目分析と年齢による推移を検討した。項目分析の結果,いずれの項目も十分な項目―合計相関を示した。さらに,IRT(item response theory)によって項目の再配置を行い,打ち切りルールを適用し,尺度得点を求めた。打ち切り前後の得点の相関を検討したところ,いずれの下位尺度についても.99程度の強い相関がみられた。Vineland-Ⅱ日本版の適応尺度の年齢推移を調べた結果,いずれの尺度も全年代の発達に対応していることが明らかになった。これらの結果は適応行動尺度の高い信頼性・妥当性を示している。

肛門痛を主訴としたレストレスレッグス症候群の1例

著者: 普天間国博 ,   高江洲義和 ,   井上雄一 ,   飯森眞喜雄

ページ範囲:P.981 - P.988

抄録

 レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome;RLS)は夜間に増悪する下肢を中心とした不快な感覚異常と下肢を動かしたくなる欲求が生じる疾患である。この疾患の症状は多彩で,しばしば抑うつ症状を合併するため,うつ病や身体表現性障害と誤診される。抗うつ薬の使用はRLSを増悪させることが多いため,精神科領域ではRLSの適確な診断が重要である。今回我々は肛門痛を主訴とし抑うつ症状を合併したRLS症例を経験した。本症例の治療経過からRLSに抑うつや不安などの精神症状を合併した症例では,抗うつ薬は使用せずにドパミン作動薬にベンゾジアゼピン系抗不安薬を併用するのが望ましいと思われた。

短報

統合失調症で入院中に急激に認知機能が低下し,Creutzfeldt-Jakob病と診断された1例

著者: 白形拓郎 ,   本田明 ,   宮崎唯雄 ,   新谷太 ,   原尚之

ページ範囲:P.989 - P.992

抄録

 62歳,女性,統合失調症。数回の入院歴がある。入院時は躁状態であったが,急激に見当識障害を呈し,認知症状態となった。やがて昏迷状態となり,全身の筋緊張を伴った。緊張型統合失調症の一種と診断したが向精神薬の効果は限定的であった。その後,全体的な脳皮質萎縮,周期性同期性放電(PSD)を認め,孤発性Creutzfeldt-Jacob病(sporadic Cretzfeldt-Jacob disease;sCJD)の強い疑いであると診断修正した。徐々に自発呼吸が失われていき,呼吸不全により死亡した。比較的特徴的な所見であるPSDがより早期に確認できれば診断時期は早まった可能性がある。統合失調症は時として緊張病症状を呈することがあるが,器質因を十分に否定してから精神症状を説明することが重要であると考えさせられた。

超高齢者におけるAlzheimer型認知症に伴うBPSDに対しgalantamine投与で症状が改善した1例

著者: 河端崇

ページ範囲:P.993 - P.995

はじめに

 Alzheimer型認知症は認知機能障害のみならず,Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD)と呼ばれる行動,心理症状を伴うことが多い。BPSDは患者本人にとっては危険が大きく介護者の負担も増大させるため,そのマネージメントが重要となる。

 Galantamineはアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬に分類される薬剤であるが,AChE阻害作用によってシナプス間隙のアセチルコリン濃度を増加させるだけなく,前シナプスのニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を賦活し感受性を亢進するアロステリック活性化リガンド(APL)作用を併せ持っていることが特長である6)。APL作用を介し,セロトニン,ドーパミンなどの神経伝達物質の分泌を促進することで,Alzheimer型認知症のBPSDの改善に寄与する可能性があることが示唆されている3)

 今回,Alzheimer型認知症のBPSDにて入院となった超高齢患者にgalantamineを使用し良好な転帰を辿った症例を経験したので,若干の考察とともに報告する。なお,症例の特定を避けるために細部は改変を施してある。

紹介

統合失調症への呼称変更から10年を迎えて

著者: 小林巧 ,   高橋清久

ページ範囲:P.997 - P.1006

抄録

 統合失調症への呼称変更から10年経ったことを機に,統合失調症に対する理解度やイメージを把握することを目的として,一般の方々を対象にインターネット調査を行った。その結果,統合失調症という新呼称の“受け入れやすさ”という点で変化が生じているが,精神分裂病という旧呼称が未だ人々の記憶に残っている実態が確認された。加えて,「統合失調症の症状が悪くない時は社会人として行動できる」という回答が6割程度であったが,「統合失調症になると会社や地域で差別される」という不安を示す回答も過半数程度であったことなど,今回の調査では,統合失調症の病名の認知度が低いこと,病態や症状に対する理解が未だ十分ではないことも明らかとなった。

 統合失調症という病気に対する認知と正しい理解を促すための普及・啓発活動を,医療関係者,患者とその家族だけでなく,一般の方々に対しても,引き続き実施していく必要がある。

連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ

ヒステリー

著者: 西村良二

ページ範囲:P.1007 - P.1009

はじめに

 ヒステリーという用語は精神医学の歴史の中で最も古いものの1つである。アメリカ精神医学会の精神疾患分類(DSM)ではヒステリーという言葉を使わないが,ヒステリーや神経症という用語は,精神科治療の歴史を振り返る時,今日的にも含蓄のある用語である。ヒステリーとして集積されてきた臨床知は,現在においても患者について生物学的にも心理社会的にも理解を深め,治療の方向付けや,より効果的な介入を考える上で有用であることが見直されてきている。

 ヒステリー球(下腹部から咽喉のほうまで球が上ってくるような感じ,咽頭のつかえ),乳房痛,卵巣痛,ヒステリー性のクラーヴス(釘を頭に打ち込んだような,激しい限局性の頭痛)などは,以前はヒステリー特有の印(stigma)と考えられていた。しかし,今日では,そのような症状は診察時の医師の暗示によって生じたものが多いと考えられている。

 転換症状や解離症状を持つ患者はヒステリー性格や,特有の発達上の特徴を持つとされ,現在でも臨床に役立つ知識と思われるが,もちろん,すべての患者にあてはまることではない。

 本稿では,ヒステリー者の行動様式や発達上の精神力動に関する先人たちからの知的遺産を,専門用語をできるだけ使わず,分かりやすく解説したい。

東日本大震災・福島第一原発事故と精神科医の役割・9

大災害後の支援者支援

著者: 加藤寛

ページ範囲:P.1011 - P.1016

はじめに

 大災害が発生すると,直後から始まる救助・捜索活動,救急医療活動,避難所などでの支援活動に,さまざまな立場で多くの人々が参加することになる。その中には,消防士,警察官,自衛隊員,海上保安官などの職業的災害救援者や,DMATに代表される救急医療関係者などのように訓練された支援者もいれば,ボランティアで瓦礫の撤去にあたる人々のように背景も経験もバラバラの集団もある。また,復興期に入ると生活復興のための行政的業務,生活再建を促進するためのきめ細かな支援活動,被災者の健康を維持するための保健活動などに,多くのマンパワーが長期に必要になる。

 これらの支援者は,活動を通してさまざまな精神健康上のリスクに晒されることになる。直後の救援活動では,長時間の過酷な状況下での活動,悲惨な現場を見ること,自分自身が生命の危機に直面すること,同僚が死亡したり負傷すること,遺体,とりわけ子どもの遺体を扱うこと,十分な救助活動ができないことなどが大きなリスク要因となることが知られており,惨事ストレス(critical incident stress;CIS)とよばれている4)。また,被災者の体験や表出される感情に触れること,成果の出にくい業務に長時間従事すること,被災者やメディアから批判されることなどがストレス要因となって精神的に疲弊してしまうことは,代理受傷(vicarious trauma)や共感疲労(compassion fatigue)と呼ばれている。

 本稿では,支援者が受ける心理的影響について,わが国ではどのように認知され,対策が立てられてきたのかを概観した後に,東日本大震災での現状と対策を筆者が関わった活動を中心にまとめる。

「精神医学」への手紙

宅間守はMCDDか?

著者: 高岡健

ページ範囲:P.1018 - P.1019

 大阪教育大学附属池田小学校事件についての岡江4)による精神鑑定書を,興味深く読んだ。同鑑定書によると,被告人宅間守には,いずれにも分類できない特異な心理的発達障害があり,その延長線上に人格障害(情性欠如)および妄想反応(嫉妬妄想)があるが,犯行に踏み切らせたものは情性欠如であるという。膨大な鑑定所見と考察により導き出された,この結論には説得力がある。筆者は,宅間の有していた「いずれにも分類できない特異な心理的発達障害」とは何かに関し,児童青年精神医学の立場から1つの可能性を指摘したい。

 岡江鑑定に基づいて,小学校入学前から中学校時代に至るまでの宅間の精神医学的特徴をまとめると,次のようになる。第1に,過度に汚れを気にする・女の子の顔に唾をぬったり同級生に小便をかけるといった特徴がある。第2に,「列外位置」(おとなしくもないが徒党も組めないことを表す宅間による造語)であり同年代の子どもから孤立している・父が怖いのに学校から父に対して電話をかけられるような悪いことをしてしまうといった特徴がある。第3に,頭に漢字が浮かびその文字を指で空になぞらなければ気が済まない・戦争シーンや飛行機を操縦するシーンの空想にひたったり,どこかから見られているといった視線に対する過敏さなどの特徴がある。

書評

―加藤 敏 著―職場結合性うつ病

著者: 井原裕

ページ範囲:P.1020 - P.1020

 内陸型の工業地帯栃木県を拠点とする著者は,産業精神保健という新たなフィールドを見出した。

 学説史的には,「職場結合性うつ病」は,19世紀英国のJohnsonによる「ボロボロ・ガタガタ病」(wear and tear malady),アメリカのBeardによる「神経衰弱」(neurasthenia)などに起源を持つ。その本質は,「心因性」よりは,むしろ「内因性」であり,高い生命力動の担い手における「適応性軽躁状態」(p28)が初期徴候となる。その際に生じた「獲得性の軽微な双極性」(p28)が,睡眠による代償の許容範囲を超えると,ついには「心身の規則的なリズムの失調」(p10)を呈して,発症する。

学会告知板

うつ病リワーク研究会 医療従事者向け研修会

ページ範囲:P.953 - P.953

医療機関で行うリワークプログラムについて以下の研修会を開催いたします。

心理教育・家族教室ネットワーク 第17回研究集会 仙台大会

ページ範囲:P.954 - P.954

会 期 2014年3月7日(金)~8日(土)

会 場 江陽グランドホテル(宮城県仙台市青葉区本町2-3-1)

論文公募のお知らせ

テーマ:「東日本大震災を誘因とした症例報告」

ページ範囲:P.945 - P.945

「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。

ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

--------------------

今月の書籍

ページ範囲:P.1017 - P.1017

次号予告

ページ範囲:P.1022 - P.1022

投稿規定

ページ範囲:P.1023 - P.1024

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.1025 - P.1025

編集後記

著者:

ページ範囲:P.1026 - P.1026

◆最近の経験から。編集子の勤務する総合病院では精神科ではなく心身医療科を標榜している。受療中のある高齢女性から,良い名前ですね,精神科よりずっといいですねと褒めていただき,こちらも嬉しくなった。ところが別の高齢女性は,診察が終わって部屋を出たとたん他科受診者から一斉に見られた,会計窓口で名前を呼ばれたと動揺された。自分の名前は珍しく近所に知られてしまった,もうここには来られないということで他院への紹介状を書く羽目になった。◆精神科に対する偏見は根強い。都市部よりも非都市部で,若年者よりも高齢者で。精神科医はだれもがそのような偏見と闘いながら診療している。闘うといっても社会的運動ではなく,スティグマが病状の悪化につながる重要な要因と認識しながら日々活動している。◆今月号の特集企画はアンチスティグマが取り上げられている。アンチスティグマを真正面から取り上げた日本で初の国際学会(WPA分科会)での数多くの発表が活字になった。Sartorius,Thornicroftという大御所をはじめ,日本で地道な活動に取り組んできた専門家から当事者まで十数名が筆をふるっている。企画していただいた秋山剛先生に感謝したい。◆企画を読むと偏見是正は容易でないことが分かる。過去10年間で精神障害への偏見はやや悪化しているという報告があり,既存のアンチスティグマ活動は総花的,短期的で実効性がどうかといった議論もある。そして科学的な取り組み,きちんとした計画と検証,ターゲットを明確にした包括的で長期にわたる活動の重要性などが強調され,説得力がある。個々の患者さんが何ら気にすることなく精神科受診できるのはまだ先かもしれないが,若い世代を中心に,次第にアンチスティグマ活動の成果が表れることを期待したい。◆今月も興味深い論文で紙面を埋めることができた。原著論文に加えて,展望,紹介,東日本大震災・原発事故の連載,手紙等々多彩である。最近の傾向として原著論文がやや少ないのが残念である。今後とも読者の方々の積極的なご投稿をお願いしたい。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?