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雑誌目次

雑誌文献

精神医学55巻11号

2013年11月発行

雑誌目次

巻頭言

精神科医は役に立っているのか

著者: 河西千秋

ページ範囲:P.1028 - P.1029

 自殺予防対策に関する実践・研究に携わって十年以上が経った。後輩から何か研究をしてみたいという相談を受け,それならばと救命救急センターに搬送される自殺企図者に関する研究を勧めたのが始まりだった。

 そもそも,患者さんと治療者の苦労が大きければ大きいほどそれを研究に昇華させ,双方の労苦に何らかの解決の方向性を見出していくという考えの下に,私自身は研究をしてきた。患者さんは自己治癒力を持っているので,乱暴な言い方をすれば,少しばかり医者の性能が悪くても治る人は治るわけで,難しい病気,困難な課題に取り組んでこそということで,それまで私は重篤副作用や難治性の病態研究を行っていた。一方で,医者になって以来,身近で患者さんや知人の衝撃的な自殺を経験し,そのことで独り反問し続ける中で,何とか自殺の真実に近づくことができないものかと考えていた。しかし当時の私は,あまりにも広大な自殺学の世界を前になす術もなく,また,自殺企図者はheterogeneousで研究の対象にはなり得ないと思っていた。

特集 アンチスティグマ活動の新しい転機Ⅱ

スティグマの実際とアンチスティグマの取り組みに関する1考察

著者: 澤田優美子

ページ範囲:P.1031 - P.1035

スティグマとは

 スティグマとは,他者や社会集団によって個人に押し付けられた負の表象・烙印,いわばネガティブな意味のレッテルである。もともとは,奴隷や犯罪者であることを示す刺青などの肉体的刻印のことを指す言葉であった。現在流通している用法は社会学者ゴフマンが1963年『スティグマの社会学』の中で提示した。彼は,スティグマを負った人々への劣等視が社会的に正当化されていることを論じた。その結果,スティグマを負った人々は差別という形でさまざまな社会的不利を被ることになるのである。

 アンチスティグマとは,スティグマを減らす取り組みである。

家族が取り組むアンチスティグマ

著者: 川﨑洋子

ページ範囲:P.1037 - P.1040

スティグマの中で生きる家族

 スティグマとは,偏見と訳されますが,事実を誤解していることから起こるものと言われています。精神障害に関しては,時代をさかのぼれば,病気の解明もされず,治療法もなかった時代においては,大きな声をあげたり,暴力をふるう人を隔離するしかなかったことは,わが国だけの問題でなく,諸外国でも行われていたことです。

 しかし,時代は変わり病気の研究が進み,治療法も分かるようになり,また国際的には障害者の人権擁護の面からも,精神障害者への差別的な対応には批判が集まり,地域で生活できる権利の保障がされるようになってきています。

精神科病院づくりから街づくりへ―スティグマ,アンチスティグマ

著者: 堀川公平 ,   松下航

ページ範囲:P.1041 - P.1045

はじめに

 平均在院日数2,156.7日,平均入院期間12年という数字が示すごとく,当院もかつては社会防衛という要請に応え,「危険な患者から地域社会を守る」という側面があったことは否めない。それゆえ,当院は長期収容型の閉鎖的な「精神病院」(以下,短期入院治療型の病院は「精神科病院」とする)として長年存在してきた。開設後30年目となる1994年8月,こうした状況を変えるべく,米国メニンガークリニックをモデルとした治療共同体に基づく多職種による力動精神医学的チーム医療(以下,力動的チーム医療)を導入した。そして「患者を社会復帰させようとするならば,まずは病院そのものの社会復帰が必要」というシステム論的理解の下,「すべての入院患者を1度は退院させる」という目標を掲げ,病院改革を始めた。それから19年後の現在,平均在院日数は50日を切るまでになり,目標は達せられた。

 当然のごとく,改革開始当初,外来患者は日に数人と少なく,当院近くで患者の姿を見ることは稀であった。また,地域住民でさえ当院の存在を知る者は少なかった。当院は,地域で息を潜めていることで存在が許されているような病院であった。皮肉にも,地域住民や家族はむろん,病院スタッフの「患者は危険な存在」という共有した「スティグマ」の存在が当院を存続させる力になっていた。

 したがって,当院の改革の成功の鍵は,病院に始まり,家族や地域に存在する「スティグマ」をいかに解消できるかにあったといえる。しかし,当院の医療改革による「病院づくり」において,病院スタッフにも,さらには家族にも,地域住民に対しても「スティグマ」という言葉を用い,ことを為そうとしたことはない。あるとすればパラドクス的効果を狙い,退院に踏み切れない患者に対し「それはあなた自らのスティグマではないか?」と問うてみたり,「これは自分の中のスタッフ,患者,家族,地域社会に対するスティグマではないのか?」との自問自答であった。端的に言えば,「スティグマ」といった道徳的観念で非難することはせず,「力動的チーム医療」という手法を用い改革を行ったことで,当院の「病院づくり」は成功し,「街づくり」への道が開けたようにも思う。

 とは言え,「スティグマ」,さらにはそれといかに向き合うかは精神医療のみならず人間社会における永遠の課題と思われる。そこで以下,当院がいかにして「病院づくり」を成し遂げ,いかなる経緯で「街づくり」という発想に至り,現在,どのような方法で「街づくり」を行っているかを報告し,当院における「スティグマ」,「アンチスティグマ」の考え方を示せればと思う。

学校教育と正しい知識の普及啓発について

著者: 中根允文 ,   吉岡久美子

ページ範囲:P.1047 - P.1052

はじめに

 学校における教育制度の原則は,1947年3月に制定された学校教育法(最終改正2011年6月3日)に明記されているという。中学校教育については,同法第45条に「小学校における教育の基礎の上に,心身の発達に応じて,義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする」とあり,高等学校にあっては第50条に「中学校における教育の基礎の上に,心身の発達および進路に応じて,高度な普通教育および専門教育を施すことを目的とする」とある。義務教育である中学校の場合,達成されるべき目標が第21条のいくつかの項でさらに細かく規定されていて,その第8項には「健康,安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに,運動を通じて体力を養い,心身の調和的発達を図ること」となっている。高校では第51条に「1.義務教育として行われる普通教育の成果をさらに発展拡充させて,豊かな人間性,創造性および健やかな身体を養い,国家および社会の形成者として必要な資質を養うこと。2.略,3.個性の確立に努めるとともに,社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,社会の発展に寄与する態度を養うこと」のように,その表現は中学校よりいくらか柔らかいものとなっている。

 さらに,学校教育法施行規則(1947年文部省令第11号)第53条で必修教科・選択教科などが列記され,第54条の2などに則る中学校学習指導要領に規定された内容の教育がなされるようにとされた。高等学校についても,同じく学校教育法施行規則にならって教科などが規定される。

 こうした経緯を前提に,学校教育教科として,国語・理科・社会などとともに,体育,保健体育などのあることはすでに周知のことであり,保健体育は体育と保健に大きく別れていて,後者がいわゆる保健にかかる知識や理解,さらには態度について教育するところとなる。ただ,高等学校では教科「公民」に倫理が含まれており,そこではさまざまな障害(障害者)への対応における倫理的側面が話題になっているはずである。

 中学校および高等学校で保健体育などに関する教育がなされるというとき,その資料は教科書である。その教科書が学童生徒の手許に届くまでには,教科書会社による制作,そしてそれが文部科学省管轄の「教科用図書検定調査審議会」による審査(文部科学省HP,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/gaiyouを参照)に申請され,審査を合格した上で供給されるということになる。ただ,その前提は,その時々に実施されている最新の「学習指導要領」に合致していることであり,それはその「解説」とともに公刊されている。これまで,1948年以来,約10年に1回改訂されてきており,たとえば「中学校学習指導要領解説 保健体育編」(2008年7月,東山書房,2012年から実施)3)や「高等学校学習指導要領解説 保健体育編・体育編」(2009年7月,東山書房,2013年から実施)4)などが最新のものである。最近の教科書検定実施の結果について文部科学省の発表(上記HP参照)によると,2010年度に中学校教科書4点が審査されすべて合格,高等学校については2011年度に3点の審査そしてすべて合格になっている。

 本稿ではこのようなシステムをふまえながら,学校教育での精神保健に関する正しい知識の提供および普及啓発がなされているかを考えてみたい。

認知症とスティグマ

著者: 朝田隆

ページ範囲:P.1053 - P.1056

はじめに

 スティグマとは他者や社会集団によって個人に押し付けられた負の表象・烙印であり,ネガティブなレッテルを意味する。元々スティグマとは,奴隷や犯罪者を示す刺青などの肉体的刻印を示す言葉であった。今日広まっている用法は社会学者ゴフマンの著書『スティグマの社会学』に由来する。本書において,彼はスティグマを負った人々への劣等視が社会的において正当化される結果,これを負った人々は差別という形でさまざまな社会的不利を被ることを問題視したのである。そして今日,認知症の人が増加し続ける現代社会においてこうした人々が暴力,精神的・身体的虐待あるいは経済的搾取にさらされやすいことが社会常識になりつつある。

 さて差別とは,本来多数派が少数派に対してなすものである。多くの精神障害については,それらを病む人々の数は総人口の数パーセントに過ぎないだろう。ところが本稿で論じる認知症については,加齢とともに増加して女性の平均寿命である86歳ともなると,40%以上がそのような病態を呈するのである。つまり病者が多数派を形成するのである。高齢化社会が進行し,認知症が誰にとっても他人ごとならぬ「自分ごと」となりつつある今日,認知症に関わるスティグマについて考え,今後のアンチスティグマ活動を講じることは意義深いことと思われる。

教育と医学・心理学との協働によるアンチスティグマ活動

著者: 長尾圭造 ,   柿元真知

ページ範囲:P.1057 - P.1062

はじめに

 子どもはとても多くの精神的問題に対峙し,悩み,時には苦しんでいる。しかし,その事実は大人の目からは分かり難いことが多い。それぞれの場所で子どもを理解し,成長発達を支援していくことは,何にも増して重要な課題と言える。

 2013年2月に行われた第6回WPAアンチスティグマ分科会シンポジウムでは,その1つとして精神医療と教育の連携のさまざまな形を取り上げた8)。はじめに,施策面からみた特別支援教育に対する精神障害の理解と支援の在り方を述べる。次いで学校現場における取り組みとして,広汎性発達障害の早期発見および対応を目的とした取り組みを,3番目に通常学級でのメンタルヘルスのかさ上げ活動とスティグマ軽減の有効性について取り上げる。4番目に認知行動療法を用いたうつ病の予防教育について報告する。わが国のこのような活動が,今後の多分野連携の1つの方向性を示すものと思われる。

研究と報告

トウレット障害を併存する強迫性障害の臨床像:第1報―併存による臨床像への影響に関する多角的検討

著者: 福原綾子 ,   三戸宏典 ,   山西恭輔 ,   向井馨一郎 ,   柳澤嘉伸 ,   中嶋章浩 ,   前林憲誠 ,   林田和久 ,   山田恒 ,   松永寿人

ページ範囲:P.1063 - P.1071

抄録

 トウレット障害(Tourette's disorder;TD)を併存した強迫性障害(obsessive-compulsive disorder;OCD)患者20例の臨床像について,年齢・性別を一致させたチックの生涯罹病を有さないOCD患者23例を対照に比較,検討した。その結果,TD併存群では,OCDの早発や強迫症状に対する洞察不良,対称性・正確性の追求や繰り返しの儀式行為,溜め込みが高率といった症候学的特徴が認められた。またTDを併存すれば社交不安傾向が有意に高度であるなど,対人関係機能に悪影響が及び,チック症状の重症化に関連する可能性が示唆された。これらの結果は,DSM-5に導入されたチック関連性サブタイプの特異性,あるいは臨床的有用性を支持するものと考えた。

過量服薬は自殺と自傷のいずれなのか―自殺意図の有無による過量服薬患者の比較

著者: 松本俊彦 ,   井出文子 ,   銘苅美世

ページ範囲:P.1073 - P.1083

抄録

 本研究の目的は,過量服薬患者を「自殺意図の有無」に着目し,過量服薬の様態と臨床的特徴の相違を検討することである。対象は,2012年9~12月に北里大学病院救命救急センターに精神科治療薬の過量服薬で入院した患者20名である。この対象を過量服薬の意図に基づいて,「自殺意図あり」群と「自殺意図なし」群とに分類し,両群間で過量服薬の様態,過量服薬によってもたらされた医学的障害の重症度,現在罹患している精神障害について比較を行った。対象20例中10例が「自殺意図あり」群,10例が「自殺意図なし」群に分類された。両群間における比較の結果,「自殺意図なし」群では「不快感情の軽減」を意図として過量服薬に及んだ者が有意に多く,また,過量服薬前に実行の予告をしない者が有意に多かったが,過量服薬による医学的障害の重症度や精神障害の診断には差が認められなかった。過量服薬患者を自殺意図の有無で分類しても,その差異は明瞭ではないと考えられた。

併存疾患を伴わない身体化障害にduloxetineが奏効した1例

著者: 本間正教 ,   加藤秀明

ページ範囲:P.1085 - P.1092

抄録

 10年間の長期にわたり多彩な身体症状を呈した33歳,女性の身体化障害の治療経過を報告した。22歳時に口腔領域の痛みで発症し,生理痛,眼痛,運動器と消化器の疼痛に加え,泌尿器症状や,さらにめまい,しびれ,体の震えなどの神経学的症状を訴え,多くの身体科を受診したが,ほとんどは原疾患を特定できず,対症的治療もしくは経過観察であった。ICD-10,DSM-Ⅳの厳格な診断基準を満たしており,詳細な診察,聴取からもうつ病や不安障害,人格障害の合併や併存は認めなかった。簡単な疾患教育に加えてduloxetineの単剤投与をしたところ,疼痛,しびれ,めまい,体の震えを主とする症状が著明に改善しduloxetineはきわめて有効であった。身体化障害は身体表現性障害のうちの1つであり,有効な薬物はなく寛解が稀な疾患とされるが,duloxetineは慢性ないし心因性疼痛が著明で,他の精神疾患の併存が目立たないタイプの身体化障害には有用な薬物療法である可能性が考えられた。

資料

医療・福祉機関における発達障害に関するアセスメントツールの利用実態に関する調査

著者: 松本かおり ,   伊藤大幸 ,   小笠原恵 ,   明翫光宜 ,   染木史緒 ,   谷伊織 ,   行廣隆次 ,   内山登紀夫 ,   黒田美保 ,   稲田尚子 ,   岩永竜一郎 ,   萩原拓 ,   原幸一 ,   井上雅彦 ,   村上隆 ,   中村和彦 ,   杉山登志郎 ,   内田裕之 ,   市川宏伸 ,   辻井正次

ページ範囲:P.1093 - P.1102

抄録

 発達障害児者の支援に携わる全国の2,790の医療機関および福祉機関を対象に,アセスメントツールの利用の実態と利用を規定する要因を検討することを目的に調査を行った。一般的ツールの利用率は,医療機関や児童相談所では9割,発達障害者支援センターや保健センターでは7~8割であったが,福祉施設・事業所ではわずかに2割以下であった。全般的に知能検査・発達検査が比較的よく利用されている一方で,生活能力,問題行動,発達障害特性に関するツールは利用する機関が少なかった。特に,18歳未満の利用者がいない福祉施設・事業所では,アセスメントツールの普及が遅れていた。アセスメントツールの利用には,実施者や購入資金,実施時間といった資源の不足のみならず,アセスメントに対する理解の不足,ツールの利便性の問題なども影響することが推測された。

私のカルテから

ブロナンセリンへの切り替えがニコチンおよびカフェイン依存に奏効した統合失調症の1例

著者: 大沼徹 ,   新井平伊

ページ範囲:P.1103 - P.1105

はじめに

 統合失調症の薬物療法は,第1世代抗精神病薬(first-generation antipsychotics;FGA),第2世代抗精神病薬[second generation antipsychotics;SGA,または鎮静系SGA(sedative-SGA;S-SGA)],そして非鎮静系SGA(non-sedative-SGA;NS-SGA)へと発展してきた。日本でNS-SGAとして認識されている抗精神病薬はブロナンセリン(ロナセン®)とアリピプラゾール(エビリファイ®)の2剤である。NS-SGAは副作用が少ない特性に加え,ドーパミンD3受容体に作用することが特徴である。統合失調症患者は,精神的な安堵感を得るためか,また上記FGAやS-SGAの抗コリン性副作用を喫煙により(ニコチン受容体刺激)緩和するためか,喫煙率が非常に高い1)。喫煙は一部の抗精神病薬の血中濃度を低下させ症状の不安定化などの悪循環をもたらす3)。また統合失調症患者では,抗精神病薬の副作用からくる眠気のためか,覚醒度を上げるためカフェイン摂取率も高く5),これが直接不眠などの悪循環をもたらし,また向精神薬の効果吸収を低下させる一因ともなる。さらには甘味料入りの缶コーヒー(もしくはペットボトル)を大量摂取することによる,ペットボトル症候群,さらには水中毒やメタボリック症候群の問題も懸念されている。

 今回,1日60本の喫煙,および3リットルもの甘味料入りコーヒー飲料の摂取により,糖尿病を併発した極度のニコチンおよびカフェイン依存を呈した慢性期統合失調症患者症例を経験した。その症例において主剤をFGAのハロペリドールからNS-SGAのブロナンセリンに変更したところ,カフェインおよびニコチン依存に対しても著明な改善が認められたため,ここに報告する。なお症例の報告においては,症例の特徴を損なわない程度に,個人情報が特定できないよう配慮した。

連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ

ヒポコンドリー(心気症)

著者: 中村敬

ページ範囲:P.1107 - P.1110

はじめに

 ヒポコンドリー〔hypochondria(sis)(英),Hypochondrie(独)〕は,古くから精神医学における重要な臨床概念であり,今日まで心気症という訳語のもとに身体表現性障害の1型に位置付けられてきた。けれども今年刊行されたDSM-5では,身体表現性障害というカテゴリー名とともに心気症という診断名が廃止されたことから,新しい世代の精神科医は,早晩この概念に馴染みをなくしていくことが予見される。

 本稿ではヒポコンドリー(心気症)の歴史,精神病理学および治療論を手短に振り返り,診断概念が風化する前に,その臨床的意義を銘記しておくことにしたい。

東日本大震災・福島第一原発事故と精神科医の役割・10

精神医学・精神科医療関係団体の活動(1)

著者: 丹羽真一 ,   秋山剛 ,   前田正治 ,   澤温 ,   前田潔 ,   齊藤万比古 ,   朝田隆

ページ範囲:P.1111 - P.1121

 東日本大震災の被災地,被災者を支援し,復興を支援する事業には多くの精神科医療関係の団体,精神医学関連団体が参加されている。それらをすべて網羅して紹介することは困難であるので,本稿では主な団体の事業を取り上げて紹介することとしたい。紹介はしていないが貴重な事業を進めておられる団体もあろうかと思われるが,そのような団体にはご勘弁いただけるようにお願い申し上げたい。

論文公募のお知らせ

テーマ:「東日本大震災を誘因とした症例報告」

ページ範囲:P.1035 - P.1035

「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。

ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

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次号予告

ページ範囲:P.1123 - P.1123

投稿規定

ページ範囲:P.1125 - P.1126

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.1127 - P.1127

編集後記

著者:

ページ範囲:P.1128 - P.1128

 特集「アンチスティグマ活動の新しい転機」はわが国で昨年開催されたアンチスティグマの国際学会の前半部分が55巻10号に,後半部分がこの11号に掲載されている。拝読すると地道なアンチスティグマに結びつくさまざまな実践が,その学会開催の何年も10何年も前から粛々と続けられていたことに触れることができ,その貴重な報告に圧倒された。特に,リカバリーされた障碍者の姿をみてもらうことがスティグマの解消につながるというリカバリーの当事者や家族会の方々からの主張には説得力があり,その努力をされている当事者の方々と彼らを支える地域の仕組みの構築・維持に苦労された方々に心から敬意を表したい。精神科病院の中で活躍している医療者にこれらの事実を知っていただくことはアンチスティグマ活動の推進にとって必須であるということができ,堀川・松下論文は今後の精神科病院と街づくりのひとつの道標を明確に示してくれている。

 ところで,この特集には触れられていないが,遺伝の関与が明確であったり,治療法が全く無かった種々の難病克服の医学史を紐解くと,病気の本態が解明され,治療法が確立してしまえば,やがて偏見・差別が無くなっていくことが分かる。現時点では何をするか分からないと思われがちな精神障碍者の行動のリスク管理や病状の厳密な把握が客観的な評価として確立されるとともに,精神疾患の原因究明が達成されると,アンチスティグマ活動と相まって,偏見・差別は無くなるといえる。米国では議会との対立でオバマ大統領の施策の実現が難しくなっているようであるが,オバマ大統領の年間1億ドルをつぎ込むBRAINイニシアティブ(Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies)が新たなチャレンジであることは言うまでもなく,わが国においても,すべての精神障碍者をリカバリーに導く新たなチャレンジに向かって,基礎と臨床が連携した脳科学研究を推進できるようにしてもらいたいと,この特集を拝読して実感した次第である。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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