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特集 アンチスティグマ活動の新しい転機Ⅱ
認知症とスティグマ
著者: 朝田隆1
所属機関: 1筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学
ページ範囲:P.1053 - P.1056
文献購入ページに移動スティグマとは他者や社会集団によって個人に押し付けられた負の表象・烙印であり,ネガティブなレッテルを意味する。元々スティグマとは,奴隷や犯罪者を示す刺青などの肉体的刻印を示す言葉であった。今日広まっている用法は社会学者ゴフマンの著書『スティグマの社会学』に由来する。本書において,彼はスティグマを負った人々への劣等視が社会的において正当化される結果,これを負った人々は差別という形でさまざまな社会的不利を被ることを問題視したのである。そして今日,認知症の人が増加し続ける現代社会においてこうした人々が暴力,精神的・身体的虐待あるいは経済的搾取にさらされやすいことが社会常識になりつつある。
さて差別とは,本来多数派が少数派に対してなすものである。多くの精神障害については,それらを病む人々の数は総人口の数パーセントに過ぎないだろう。ところが本稿で論じる認知症については,加齢とともに増加して女性の平均寿命である86歳ともなると,40%以上がそのような病態を呈するのである。つまり病者が多数派を形成するのである。高齢化社会が進行し,認知症が誰にとっても他人ごとならぬ「自分ごと」となりつつある今日,認知症に関わるスティグマについて考え,今後のアンチスティグマ活動を講じることは意義深いことと思われる。
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