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文献詳細

雑誌文献

精神医学55巻3号

2013年03月発行

文献概要

資料

ひきこもり状態にある人の親に対する集団認知行動療法の効果―Community Reinforcement and Family Trainingを応用した試行的介入

著者: 野中俊介1 境泉洋2 大野あき子3

所属機関: 1一般社団法人SCSカウンセリング研究所 2徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部 3社団法人徳島県労働者福祉協議会

ページ範囲:P.283 - P.291

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抄録

 本研究の目的は,ひきこもり状態にある人(以下,ひきこもり本人)の家族に対する集団認知行動療法の効果を試行的に検討することであった。6セッションから構成されるプログラムが,ひきこもり本人の母親6名を対象として実施された。ドロップアウトは1名であり,ひきこもり本人がアルバイトを開始後のドロップアウトであった。分析の結果,ひきこもり本人のうち,受療に至った者が2名,就学あるいは就労に至ったものがそれぞれ1名であったことが示された。また,ひきこもり本人の親の心理的適応,家族機能に対して一定の改善が示唆された。これらの結果をふまえ,認知行動的観点からの有効性と今後の課題についての考察が加えられた。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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