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連載 東日本大震災・福島第一原発事故と精神科医の役割・5
超高齢社会における災害時のメンタルヘルスケア
著者: 池嶋千秋1 朝田隆2
所属機関: 1筑波大学医学医療系臨床医学域災害精神支援学 2筑波大学臨床医学系精神医学
ページ範囲:P.491 - P.500
文献購入ページに移動わが国では,高齢者人口の急速な増加に伴い,高齢で単身または夫婦のみの世帯が増えている。また,平均余命の伸びとともに慢性疾患や認知症にかかる率も増え,認知機能や身体機能の障害を有しながら地域で生活する者も増えている。ひとたび大規模災害が発生すれば,こうした人々が真っ先に犠牲になる。このような人々を「災害時要援護者」(または災害弱者)という。内閣府の災害時要援護者の避難支援ガイドライン9)によると,「災害時要援護者」とは,「必要な情報を迅速かつ的確に把握し,災害から自らを守るために安全な場所に避難するなどの一連の行動をとるのに支援を要する人々」を指す。高齢者を筆頭に,障害者,外国人,乳幼児,妊婦などが挙げられている。またこうした人々は新しい環境への適応能力が不十分であるため,災害による住環境の変化への対応や,避難行動,避難所での生活に困難を来す。その一方で必要なときに必要な支援が適切に受けられれば,ある程度自立した生活を送ることも可能な場合がある。こうした点を踏まえ,本稿では各方面から公表されているデータを基本として,筆者らが被災地支援を通して見聞きした問題にふれながら,災害時の高齢者のメンタルヘルスについて整理し考察する。
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