文献詳細
巻頭言
震災後のFUKUSHIMAのメンタルヘルス
著者: 矢部博興123
所属機関: 1福島県立医科大学医学部神経精神医学講座 2放射線医学県民健康管理センター心の健康度・生活習慣調査部門 3ふくしま心のケアセンター
ページ範囲:P.612 - P.613
文献概要
国や福島県の委託を受けて県民健康管理調査を施行している福島県立医科大学の放射線や甲状腺専門の研究者達は,リスクを科学的に評価しようとしているが,「被害を過小に評価している」などの批判も受けることも多い。インターネットやテレビでは,低線量被曝の危険性を強く主張する研究者たちもいるし,福島県から避難すべきと主張する研究者,医師も少なくはない。しかし過少に評価している場合だけが重大な問題を引き起こすわけではない。もし仮に過大に評価した場合でも,県外に避難していった方たちに慌ただしく人生の転換を迫ったことになり,これにも彼らの未来に対して責任は重大である。福島県にとどまって住むことを選択する住民やそれが可能かどうかに対して注目している人々に対しても,正しい調査結果が示されることが望まれているが,それには多くの時間や協力が必要である。我々は,現在成長中の子ども達や,遠い未来の子孫に対しても重い責任を負っている。
掲載誌情報