精神医学55巻7号

2013年07月発行

研究と報告

日本版Vineland-Ⅱ適応行動尺度の開発―適応行動尺度の測定精度の検討

著者： 行廣隆次¹ 伊藤大幸² 谷伊織³ 平島太郎⁴ 安永和央⁵ 内山登紀夫⁶ 小笠原恵⁷ 黒田美保⁸ 稲田尚子⁹ 萩原拓¹⁰ 原幸一¹¹ 岩永竜一郎¹² 井上雅彦¹³ 村上隆¹⁴ 染木史緒² 中村和彦² 杉山登志郎¹⁵ 内田裕之¹⁶ 市川宏伸¹⁷ 田中恭子¹⁸ 辻井正次¹⁴

所属機関： ¹京都学園大学人間文化学部 ²浜松医科大学子どものこころの発達研究センター ³東海学園大学人文学部 ⁴名古屋大学大学院教育発達科学研究科 ⁵東京大学大学院教育学研究科 ⁶福島大学大学院人間発達文化研究科 ⁷東京学芸大学総合教育科学系 ⁸淑徳大学総合福祉学部 ⁹国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 ¹⁰北海道教育大学旭川校 ¹¹徳島大学総合科学部 ¹²長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 ¹³鳥取大学医学系研究科 ¹⁴中京大学現代社会学部 ¹⁵浜松医科大学児童青年期精神医学講座 ¹⁶大阪大学大学院連合小児発達学研究科 ¹⁷東京都立小児総合医療センター ¹⁸熊本益城病院

ページ範囲：P.627 - P.635

抄録

　本研究は，全年齢に適用可能であり国際的に広く利用されるVineland Adaptive Behavior Scales, Second Editionの日本版の標準化に関する研究の一環として，適応行動尺度の測定精度を検討した。内的整合性の観点から各下位領域の信頼性を検討したところ，ほぼ十分な値が得られた。情報量による検討の結果からも，対象者の適応状況を正確に評価できる特性範囲が示され，それがどのような年齢段階の標準的レベルに相当するかが明らかになった。以上より，Vineland-Ⅱの適応行動下位尺度は，それぞれ十分な信頼性を持つことが示された。また，一般群の場合，下位尺度ごとに，対象とする適応行動を敏感にとらえる年齢帯が存在することが明らかとなった。

参考文献

1) 伊藤大幸，谷伊織，行廣隆次，他：日本版Vineland-Ⅱ適応行動尺度の開発：不適応行動尺度の信頼性・妥当性に関する報告．精神医学54：889-898，2012

2) Klin, Saulnier CA, Sparrow SS, et al：Social and communication abilities and disabilities in higher functioning individuals with autism spectrum disorders：The Vineland and the ADOS. J Autism Dev Disord 37：748-759, 2007

3) Linacre JM：Winsteps Rasch measurement［computer program]. Winsteps. com, Beaverton, 2012

4) 村木英治：項目反応理論．朝倉書店，2011

5) Sparrow SS, Balla DA, Cicchetti DV：Vineland Adaptive Behavior Scales. American Guidance Service, Inc., Circle Pines, MN, 1984

6) Sparrow SS, Cicchetti DV, Balla DA：Vineland Adaptive Behavior Scales, Second Edition, Survey Forms Manual. NCS Pearson, Inc., Minneapolis, 2005

7) 谷伊織，伊藤大幸，行廣隆次，他：日本版Vineland-Ⅱ適応行動尺度の開発：適応行動尺度の項目分析と年齢による推移．精神医学55，2013

8) 豊田秀樹：項目反応理論　入門編―テストと測定の科学．朝倉書店，2002