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文献詳細

雑誌文献

精神医学55巻8号

2013年08月発行

文献概要

特集 職場のメンタルヘルスと復職支援─その効果的な利用のために

精神疾患の社会的コストとリワーク

著者: 佐渡充洋1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部精神神経科学教室

ページ範囲:P.747 - P.752

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疾患による社会的コスト

 ある疾患によってもたらされる社会的コストを計測する方法のひとつに疾病費用研究がある。これは,もしその疾病がなければ,回避できたであろう経済的負荷の値をコストという形で推計する研究である。具体的には,医療費などの直接費用と,罹病費用,死亡費用などの間接費用を合計することで,その疾病の社会的な負荷を明らかにしていく。表1に示したように,直接費用には,保険,保険外も含めた医療費や,社会的なサービス費用などが含まれる。間接費用には,罹病費用や死亡費用といった生産性損失が含まれる。罹病費用は,さらに,欠勤によってもたらされる生産性の損失であるabsenteeism,出勤はしているが集中力の低下などによってもたらされる生産性の損失であるpresenteeism,そもそも病気のために就職ができていないことによる生産性の損失である失業費用などに分類することができる。死亡費用とは,患者がその疾病によって早期に死亡したことによってもたらされる生産性の損失であるが,これは遺失賃金で計算されることが多い。間接費用には,その他にも,家族などが患者をケアすることで生じる生産性損失であるインフォーマルケア費用,痛みや苦悩などを費用に換算したインタンジブル費用なども含まれることになる。

参考文献

1) Hees HL, de Vries G, Koeter MW, et al:Adjuvant occupational therapy improves long-term depression recovery and return-to-work in good health in sick-listed employees with major depression:results of a randomised controlled trial. Occup Environ Med 70:252-260, 2013
2) Kessler RC, Akiskal HS, Ames M, et al:Prevalence and effects of mood disorders on work performance in a nationally representative sample of U.S. workers. Am J Psychiatry 163:1561-1568, 2006
3) 大木洋子,五十嵐良雄:リワークプログラム利用者の復職後の就労継続性に関する効果研究.産業精神保健 20:335-345, 2012
4) 佐渡充洋,稲垣中,吉村公雄,他,精神疾患の社会的コストの推計.平成22年度厚生労働省障害者福祉総合推進事業補助金事業実績報告書,厚生労働省,2011
5) Sado M, Yamauchi K, Kawakami N, et al:Cost of depression among adults in Japan in 2005. Psychiatry Clin Neurosci 65:442-450, 2011
6) Sado M, Inagaki A, Koreki A, et al:The cost of schizophrenia in Japan. Neuropsychiatr Dis Treat 9:787-798, 2013
7) Vlasveld MC, van der Feltz-Cornelis CH, Adèr HJ, et al:Collaborative care for sick-listed workers with major depressive disorder:A randomised controlled trial from the Netherlands Depression Initiative aimed at return to work and depressive symptoms. Occup Environ Med 70:223-230, 2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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