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文献詳細

雑誌文献

精神医学55巻8号

2013年08月発行

文献概要

特集 職場のメンタルヘルスと復職支援─その効果的な利用のために

メンタルクリニックにおけるリワークプログラムの治療構造とアウトカム

著者: 大木洋子12 五十嵐良雄1 山内慶太2

所属機関: 1メディカルケア虎ノ門 2慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科医療マネジメント専修

ページ範囲:P.761 - P.767

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はじめに

 うつ病など気分障害などによる抑うつ状態を理由とした休職の長期化,また休職と復職を繰り返すといった問題が取り上げられるようになって久しい。その背景には,近年増加している非定型的な病像1,10,18)が指摘されており,比較的若い年代の「抑うつ状態」に関していえば,①双極Ⅱ型障害の可能性10),②背景にごく軽度な高機能発達障害の要素の存在12),③就労以前の児童青年期に発症した気分障害や不安障害3),により「抑うつ状態」を呈した結果,出社不能な状態になり,休職する症例も少なくないことも考えられる。また,外来での限られた診療時間内に得られる情報だけで,復職しても業務が行えるかどうかの復職準備性を確認することは,臨床経験豊かな精神科医でも困難な作業であることは,繰り返し指摘してきた5~8)

 医療機関で行うリワークプログラムとは,診療報酬上の精神科デイケアなどの枠組みを利用して行う,治療の一環としてのリハビリテーションであり,その目的は,復職準備性の確認,そして最終的な目的は再休職の予防である。リワークプログラムを実施する医療機関の集まりである,うつ病リワーク研究会19)によると,2008年の当会発足時に30足らずであった実施施設数は,2013年現在156施設であり,この6年間に約5倍と急速に増加している。また,現在の156施設のうち,99施設(63.5%)が診療所である。入院施設を持たない精神科医にとって,リワークプログラムを実施する精神科デイケアというフィールドにおいて,臨床的観察を行うことができることから,重要な診断の場ともなっている。

 リワークプログラムの治療的要素は,次の4要素に集約できる8)。第1の要素は,集団で行われるところにある。戻るべき職場で,コミュニケーションが上手に取れるようになることである。第2の要素は,主には気分障害圏で復職を目的としている利用対象者を限定して,均一な集団で凝集性を高めている点であり,「抑うつ状態」で「休職中」という共通性のある仲間であることも治療的に働く。第3の治療的要素は,医学的リハビリテーションという点で,病状の安定性を確認しながら段階的に負荷をかけ,復職準備性を確認して復職となる。復職後は,フォローアップにより再休職の予防がより確実になり,家族への支援も可能である。第4は,プログラムの内容が心理社会療法である点である。自分が休職するに至った原因や誘因を考え,自らの内面に潜む課題に気付くことが重要であり,その課題を認識した上で心理療法や集団療法を用いたプログラムが提供される。

 本稿では,メンタルクリニックで行われるリワークプログラムとして,2005年からプログラムを導入しているメディカルケア虎ノ門(以下,当院)を例に,その治療構造と実際を取り上げ,またそのアウトカムを筆者らの研究を参照しながら述べることとしたい。

参考文献

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2) 秋山剛:職場復帰援助プログラムの予後調査.うつ病を中心としたこころの健康障害をもつ労働者の職場復帰および職場適応支援方策に関する研究.平成14年度総括・分担研究報告書(主任研究者:島 悟),厚生労働科学研究研究費補助金労働安全衛生総合研究事業,pp45-58, 2003
3) 傳田健三,佐藤祐基:児童・青年期における難治性うつ病―発達障害とbipolarityの視点から.精神療法 36:621-626, 2010
4) 林俊秀,五十嵐良雄:リワークプログラムの標準化.臨床精神医学 41:1509-1519, 2012
5) 五十嵐良雄:復職支援のためのネットワークと精神科医療―うつ病のリハビリテーションの現代的役割.精神科治療学 23:1313-1317, 2008
6) 五十嵐良雄:職場復帰から見た難治性うつ病とその治療上での工夫.精神療法 36:627-632, 2010
7) 五十嵐良雄,大木洋子,飯島優子,他:抑うつ状態の外来リハビリテーション~リワークプログラムの役割.精神科 20:582-592, 2012
8) 五十嵐良雄:リワークプログラムの広がりにみる現代的な意義.臨床精神医学 41:1503-1508, 2012
9) 五十嵐良雄:リワークプログラム利用者と非利用者の就労予後に関する比較研究.うつ病患者に体する復職支援体制の確立うつ病患者に対する社会復帰支援プログラムに関する研究.平成24年度総括分担研究報告書(代表研究者:秋山剛),厚生労働省障害者対策総合研究事業,pp55-62, 2013
10) 加藤敏:現代日本におけるうつ病・双極性障碍の諸病態.精神経誌 114:844-856, 2012
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12) 森崎美奈子:発達障害と職場適応.産業ストレス研究 20:179-181, 2013
13) 大木洋子:気分障害等を対象としたリワークプログラムのアウトカム―利用者の就労予後に関する検討.デイケア実践研究 16:34-41, 2012
14) 大木洋子,五十嵐良雄:リワークプログラム利用者の復職後の就労継続性に関する効果研究.産業精神保健 20:335-345, 2012
15) 大木洋子,五十嵐良雄,山内慶太:リワークプログラムの効果研究.国内研究のアウトカムと海外研究の動向.臨床精神医学 41:1561-1571, 2012
16) Rosenbaum PR, Rubin DB:The central role of the propensity score in observational studies for causal effects. Biometrika 70:41-55, 1983
17) Rosenbaum PR, Rubin DB:Reducing bias in observational studies using subclassification on the propensity score. J Am Stat Asso 79:516-524, 1984
18) 樽味伸,神庭重信:うつ病の社会文化的試論―特に「ディスチミア親和型うつ病」について.日社精医誌 13:129-136, 2005
19) うつ病リワーク研究会:http://www.utsu-rework.org/

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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