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文献詳細

雑誌文献

精神医学55巻8号

2013年08月発行

文献概要

特集 職場のメンタルヘルスと復職支援─その効果的な利用のために

精神科病院におけるリワークプログラム―ストレスケア病棟やクリニックとの連携のあり方について

著者: 松原六郎1 黒田優希1 小林真実1

所属機関: 1公益財団法人松原病院

ページ範囲:P.769 - P.775

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はじめに

 現在,うつ病患者の復職支援の取り組みとして外来デイケアにおけるリワークプログラム(以下リワーク)が広まってきている。また,リワークによる復職に向けての治療効果を最大限に発揮させ,適切な復職支援を行っていくためには,リワークを利用する前の準備段階やリワーク終了後のフォローアップが非常に重要となってくる。

 筆者らが所属する松原病院(以下,当院)では,これまで自殺企図など重篤なケースを他の精神疾患のケースと同じ閉鎖病棟に入院させ,鎮静を図りながら抗うつ剤を使用し,回復すればすぐに外来通院に切り替えていた。主として安全確保と精神療法,薬物療法を提供してきたといえる。また当院のような比較的歴史の古い単科の精神科病院の宿命でもあるが,病院名や疾患がある種の偏見の対象となっているため,うつ病の患者に対して必要な保護や治療を,それを必要としているケースであっても提供できないというジレンマに陥っていた。

 2000年4月,徳永雄一郎医師の呼びかけに,いくつかの単科の精神科病院が応え,日本ストレス病棟研究会(現:日本ストレスケア病棟研究会)が立ち上げられた10)。研究会では,うつ病を中心としたストレス関連疾患に特化した病棟の必要性や有用性を検証するとともに,入院治療が外来治療よりも安全で,迅速で,しかも再発の少ない治療手段であることを,社会に発信していくこととなった。図1は,復職へのプロセスにおけるストレスケア病棟の位置付けを示したものである。

 当院も1997年にストレスケア病棟を開設し,心理療法,生活リハビリテーション(以下,リハビリ)(作業療法など)を充実させながら,2009年にデイケアでのリワークを開設といったように,徐々に体制を整えてきた。以下,当院の復職支援の状況と課題を中心に述べてみたい。

参考文献

1) 有馬秀晃:プログラム作成のポイント.秋山剛,うつ病リワーク研究会編,うつ病リワークプログラムのはじめ方.弘文堂,pp34-52, 2009
2) 有馬秀晃,秋山剛:うつ病休職者の標準化リワークプログラム評価シートについて.精神科治療学26:173-180, 2011
3) 堀井静香,岡崎渉,秋山剛:リワーク支援の現状と困難.精神科治療学26:141-156, 2011
4) 五十嵐良雄:うつ病リワークプログラムの現代的意義.秋山剛,うつ病リワーク研究会編,うつ病リワークプログラムのはじめ方.弘文堂,pp2-7, 2009
5) 五十嵐良雄,林俊秀:うつ病リワーク研究会の会員施設でのリワークプログラムの実施状況と医療機関におけるリワークプログラムの要素.職リハネットワーク67:5-17, 2010
6) 五十嵐良雄,大木洋子:リワークプログラム利用者と非利用者の就労予後に関する比較効果研究.厚生労働省障害者対策総合研究事業「うつ病患者に対する復職支援体制の確立 うつ病患者に対する社会復帰プログラムに関する研究」分担研究報告書.2012
7) 小林仁志,松原六郎:ストレスケア病棟におけるコメディカルスタッフの役割,ことに心理士(心理技術職)を中心に.精神療法36:33-37, 2010
8) 松原六郎,五十川早苗,齊藤忍:職場のうつ.星和書店,pp106-109, 2010
9) 大木洋子:気分障害等を対象としたリワークプログラムのアウトカム―利用者の就労予後に関する検討.デイケア実践研究16:34-41, 2012
10) 徳永雄一郎:うつ病に関する国内の動向―ストレスケア病棟―うつ病治療の実際とその有効性.Depression Frontier 4(2):68-72, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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