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雑誌文献

精神医学55巻8号

2013年08月発行

文献概要

短報

双極性障害のリチウム感受性におけるGSK-3β遺伝子多型のハプロタイプ解析

著者: 岩橋和彦1234 西澤大輔3 深間内文彦5 沼尻真貴13 池田和隆3 石郷岡純4

所属機関: 1麻布大学環境保健学研究科環境保健科学専攻神経生理学研究室 2麻布大学健康管理センター 3東京都医学総合研究所依存性薬物プロジェクト 4東京女子医科大学神経精神科 5榎本クリニック

ページ範囲:P.797 - P.801

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抄録

 外来通院にてリチウム製剤による治療を受けている双極性障害患者(ICD-10 F31)で,ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や抗うつ薬を服用している患者を除外し,書面にてインフォームド・コンセントの得られた患者29人(平均年齢35.5±6.4歳)を対象とし,GSK-3βの遺伝子多型のハプロタイプ解析を行った。GSK-3β遺伝子(GSK-3B)の5'-flanking領域の一塩基多型(SNP)のうち,先行研究でリチウムの薬理効果の個人差との関連が報告されている-50T/Cを含めた2個のSNP(-50T/C,-1727A/T)を対象とした解析の結果,同SNPの組み合わせからなるハプロタイプは3種類が存在し,ハプロタイプ1(T-A)はリチウムのレスポンダーに有意に高頻度に存在し(p=0.001),ハプロタイプ2(C-A)はノンレスポンダーに有意に高頻度に存在(p=0.008)した。このことから,遺伝子検査によるリチウムの薬理効果予想において,同一染色体上の-50T/CのSNPのT alleleを持ち,かつ-1727A/TのSNPのA alleleを持つハプロタイプ1(T-A)が,薬理効果の高い組み合わせである可能性が高いことが示唆された。なお,GSK-3βの上記の2多型間の連鎖不平衡の指標値はD'=1,r2=0.076で,相関は低かった。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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