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文献詳細

雑誌文献

精神医学55巻9号

2013年09月発行

文献概要

オピニオン 精神科医にとっての精神療法の意味

精神科医にとっての精神療法の意味と今後の展望

著者: 大野裕1

所属機関: 1独立行政法人国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター

ページ範囲:P.828 - P.830

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はじめに

 精神科医にとって精神療法が重要であることは論をまたないであろう。精神療法的な関わりができればそれだけで症状が軽減する場合があるし,精神療法的な関わりに支えられながら患者が環境に働きかけてストレスを軽減することもできる。薬物療法を選択した場合でも,精神療法的関係を通して安心できる治療関係が持てていれば,より効果的に薬物療法を行うことができる。こうしたことは自明の理だが,わが国で精神療法的関わりが適切に研修され,精神医療の中に取り入れきれているかどうかは疑問である。

 もちろん,これはわが国に限った問題ではない。米国でも,特にDSM-5の出版を機に,精神疾患を広く診断しすぎて安易に薬物療法に頼る傾向が助長されるのでないかという懸念が議論されている1)。米国では,精神科医は基礎として支持的精神療法をまず研修し,それに加えて認知療法・認知行動療法と精神力動的精神療法とを研修するようになっている2)が,それでもそうしたリスクが議論になっている。

 しかし,そうした精神療法の研修体制が確立していないわが国では米国以上に注意が必要だし,体系的な精神療法の研修体制を早急に確立していかなくてはならないと筆者は考えている。精神医療は,精神疾患に苦しむ患者を一人の人間として支え治療していく営みであり,そのためには精神療法的関わりが不可欠だからである。

参考文献

1) Allen Frances:Saving Normal:An Insider's Revolt Against Out-of-Control Psychiatric Diagnosis, DSM-5, Big Pharma, and the Medicalization of Ordinary Life. William Morrow, New York, 2013
2) 大野裕,藤澤大介:外国とわが国の専門医制度の比較~精神療法を中心に.精神経誌SS408-414,2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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