文献詳細
紹介
個人用メタ認知トレーニング(Metacognitve Training plus;MCT+)日本語版の開発
著者: 石垣琢麿1 則包和也2 川添郁夫2 丹野義彦1 細野正人3
所属機関: 1東京大学大学院総合文化研究科 2弘前大学医学部保健学科 3青山会関内クリニック
ページ範囲:P.65 - P.74
文献概要
認知行動理論では,さまざまな精神症状の背景には強い認知的偏り(バイアス)が存在すると仮定する。統合失調症の陽性症状に関しても,特に英国において認知心理学的メカニズムの実証的解明と介入・援助法の開発が盛んに行われている2)。その知見を利用して,ハンブルク大学のMoritzらは,妄想の認知バイアスに対する新たな心理教育・心理介入法である「メタ認知トレーニング;Metacognitive Training」(以下,MCT)を開発した6,7,8)。MCTの日本語版は筆者らが作成し,すでに紹介した4)。
MCTは基本的に少人数集団に対する介入法であり,有効性もRCTによって確認されているが,一方で,症状,性格,環境など,何らかの理由で集団に参加できない患者のために個人用メタ認知トレーニング開発の必要性が指摘されていた。そこでMoritzらは個人用ツールを開発し,MCT+(プラス)と名付けた9)。今回,筆者らは原著者の許可を得てMCT+日本語版を作成した。本稿ではそのマニュアルに沿ってMCT+を紹介する。なお,MCT+日本語版のスライドとワークシートは第1から第3筆者が,マニュアルは第1筆者と第4筆者が作成した。MCT+を実施する場合はハンブルク大学のMCTホームページ(http://www.uke.de/mkt)5)で使用者登録する必要がある。資料は同じサイトから無料ダウンロード可能だが,今後,原著者が独語版・英語版に適宜修正を加える可能性があるため,最新の日本語版についてはMCT-Jネットワーク(http://www.mct-j.net/)に入会後,会員専用のクラウドからダウンロード(無料)していただく必要がある。MCT-Jネットワークは,わが国におけるMCTの臨床と研究を発展させるために2013年1月より運営を開始した。2013年10月現在の会員数は約190人である。
参考文献
掲載誌情報