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文献概要
連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ
対人恐怖
著者: 山下格1
所属機関: 1平松記念病院
ページ範囲:P.76 - P.78
文献購入ページに移動はじめに
社交恐怖はJanetの指摘(phobies du situations socials, 1903)に始まり,Kraepelinの教科書(1915)にはVerkehrsangstとしてEreuthophobie, Dysmorphophobie, Anthropopbobieなどの症例が多数記載されている。しかし,その後に欧米諸国では目立った報告がなく過ぎる一方で,わが国では森田正馬の学説と治療法が広まって,人前で恥じない態度・言動をとり,それができないことを恐れる「羞恥恐怖」がひろく対人恐怖とよばれてきた。
しかし1960年以降,国内から従来の羞恥感情とは異なった妄想的症状構造を持つ症例が多数詳細に報告された。また1980年にDSM-Ⅲが発表されると,別の立場から類似の恐怖症状が取り上げられ,大規模な疫学的調査を経て国際的に大きな関心をよんでいる。以下,この2つの研究・調査を中心に,用語や概念の相違を含めて要点を述べる。
社交恐怖はJanetの指摘(phobies du situations socials, 1903)に始まり,Kraepelinの教科書(1915)にはVerkehrsangstとしてEreuthophobie, Dysmorphophobie, Anthropopbobieなどの症例が多数記載されている。しかし,その後に欧米諸国では目立った報告がなく過ぎる一方で,わが国では森田正馬の学説と治療法が広まって,人前で恥じない態度・言動をとり,それができないことを恐れる「羞恥恐怖」がひろく対人恐怖とよばれてきた。
しかし1960年以降,国内から従来の羞恥感情とは異なった妄想的症状構造を持つ症例が多数詳細に報告された。また1980年にDSM-Ⅲが発表されると,別の立場から類似の恐怖症状が取り上げられ,大規模な疫学的調査を経て国際的に大きな関心をよんでいる。以下,この2つの研究・調査を中心に,用語や概念の相違を含めて要点を述べる。
参考文献
1) 朝倉聡,小山司:社会不安障害と対人恐怖.臨床精神医学 36:1551-1558, 2007
2) 笠原嘉(編):正視恐怖・体臭恐怖.医学書院,1972
3) 笠原敏彦:対人恐怖と社会不安障害.金剛出版,2005
4) 村上靖彦,大磯英雄,青木勝,他:青春期に好発する異常な確信的体験.精神医学 12:573-578, 1970
5) 山下格:対人恐怖について.精神医学 12:365-374, 1970
6) 山下格:対人恐怖.金原出版,1974
7) Yamashita I:Taijin-kyofu or delusional social phobia. Hokkaido Univ Press, 1993
8) 山下格:対人恐怖の病理と治療.精神科治療学 12:9-13, 1997
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