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文献詳細

雑誌文献

精神医学56巻10号

2014年10月発行

文献概要

特集 良質かつ適切な医療の提供—改正精神保健福祉法41条の具体化

病床機能分化,精神病床削減と地域医療の質の向上

著者: 松原三郎1

所属機関: 1社会医療法人財団松原愛育会松原病院

ページ範囲:P.869 - P.877

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はじめに

 わが国では,多くの精神障害者が地域で生活する権利を奪われてきた。もちろん,すべての精神障害者が地域で生活ができるのではない。しかし,地域内での居住施設や生活支援などが整えば退院が可能な人達はおよそ10万人に達するものと見込まれているにもかかわらず,地域精神科医療・生活支援体制の整備は遅々として進んでいない。

 長期在院者を生み出してきた要因は,①戦後の精神科病床不足の状況から脱するために,精神科特例が認められ,これによって低基準の精神科病床が多数出現した。②多数の入院病床が整備された結果,精神科病院は施設的な機能を併せ持つようになった。③医療保険制度が整備された結果,安価で安心できる長期入院が許容され,それに代わる地域施設が少数にとどまった。④財源不足のために福祉施策が立ち遅れたが,それだけでなく,医療保険施策が入院中心に偏り過ぎて,在宅の精神科医療に目が向けられなかった。⑤家族同意による医療保護入院が,安易な強制入院を許してきた。

 このように,長期入院を許してきた要因は多岐にわたっており,精神科医療の改革は,地域精神科医療・生活支援体制の整備だけにとどまることなく,精神科医療の中心を担う精神科病床の改革や入院に関わる法の整備にまでも及ぶ必要がある。精神科医療では,入院医療と地域医療・生活支援が一体となって,あるいは医療と福祉が一連のものとなって改革が進められるべきである。

参考文献

1) 平田豊明:精神科急性期病棟の現状と今後の機能および配置等に関する研究.平成16年度厚生労働科学研究報告書.2005
2) 平田豊明:精神科救急医療体制の検証と今後の展開に関する研究.平成19年度厚生労働科学研究報告書.2007
3) 花井忠雄:精神科病院協会から.精神経誌 113:496-502, 2011
4) 松原三郎:平成19年度厚生労働科学研究「精神病床の利用状況に関する調査」報告書.2008
5) 松原三郎:精神科長期入院患者の実態と処遇の在り方について.精神科臨床サービス 14:55-60, 2014
6) 日本精神科病院協会:精神科入退院後の外来治療別有効性の比較(速報)—その後の再入院との関連について.日精協誌 18:1127-1130, 1999
7) 日本精神科病院協会:「統合失調症におけるDCと抗精神病薬の有効性について」の研究報告書.2008

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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