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文献詳細

雑誌文献

精神医学56巻3号

2014年03月発行

文献概要

資料

総合病院精神科外来を受診した成人期広汎性発達障害の後方視的検討

著者: 武井明1 泉将吾1 目良和彦1 佐藤譲1 原岡陽一1 平間千絵2

所属機関: 1市立旭川病院精神科 2旭川福祉専門学校

ページ範囲:P.237 - P.244

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抄録

 成人期広汎性発達障害(PDD)患者の実態を明らかにするために,2004年から2012年までの9年間に総合病院精神科を初診した20歳以上の成人期のPDD患者60名(男性34名,女性26名)を対象に,後方視的な検討を行った。その結果,初診患者総数に占める成人期PDD患者の割合は2010年度から高くなり,1.5%前後で推移していた。全体の48.4%が専門学校以上の最終学歴であった。診断分類では,特定不能のPDD(PDDNOS)の割合が46.7%と最も高かった。併存症状は81.7%に認められ,「ひきこもり」が最も多かった(30.6%)。就労状況は46.7%が無職であった。以上の結果から,PDD患者は社会に出ることで,それまで気付かれることのなった障害特性が顕在化することがあり,就労に際しての支援が不可欠であると考えられた。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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