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雑誌目次

論文

精神医学56巻4号

2014年04月発行

雑誌目次

巻頭言

新設大学医学部精神医学教室の40年

著者: 風祭元

ページ範囲:P.278 - P.279

 わが国では,1970年代に33校の医学部・医科大学が新設された。私はその一つである帝京大学医学部の初代の精神科主任教授・科長となり,精神医学教室と医学部附属病院精神科の開設に携わった。帝京大学医学部は既存の医療施設がなく,まったくゼロからの出発であったので開設の苦労も多かった。当時新設された医学部・医科大学は,医療技術の発展や医療需要の増加による医師不足に対応して1県1医大の構想の下に作られ,それまで医学部のなかった地方に17校の国立大学と,都市部を中心に16校の私立大学の医学部が新設された。それからおよそ40年が経過した現在,これらの新設大学に在籍し,研修を受けた精神科医たちはどのような状況にあるだろうか。帝京大学の医学部精神科について現況を検討してみた。

 戦前の1935年(昭和10年)頃には,わが国の医師養成施設としては帝国大学医学部が9校(台湾,朝鮮半島を含む),国公立の単科医科大学が7校,それに私立大学の医学部と医学専門学校とが10校の合計26校あり,卒業すれば医師免許を得ることができた。その後日中戦争と太平洋戦争の期間に,主に軍医不足に対応するために,帝国大学医学部や一部の医科大学に附属医学専門部が新たに設けられ,多くの医学専門学校が新設された。

展望

オプトジェネティクス

著者: 田中謙二

ページ範囲:P.281 - P.284

はじめに

 オプトジェネティクスは神経科学における実験技術である。光(オプト)と遺伝子発現(ジェネティクス)を組み合わせて神経細胞の機能を操作するこの技術が神経科学の分野でどのようなインパクトをもって迎えられたか,精神医学の発展にどのような期待を込められているか,筆者の視点で述べてみたい。

 オプトジェネティクスの最初の論文は2005年で,培養神経細胞を用いた技術紹介の論文であった(Boyden, Zhangら,2005)2)。グリア研究に没頭していた筆者はこの論文の存在を知る由もなく,オプトジェネティクスという言葉を知ったのはコロンビア大学へ留学してからのことであった(筆者は2006年から2008年までニューヨークのコロンビア大学へ留学していた)。アメリカでは,オプトジェネティクスという新しい技術をどうやって使いこなすかという議論が盛んに行われており,限られた成功例が新着論文で散見される程度であった。技術そのものの潜在能力について皆が理解していたものの,成功することが容易ではなかったのである。

 帰国から6年が経過した。今現在は,オプトジェネティクスを使いこなすのは当然として,その技術を使ってどんな疑問を解くのかという段階にきている。筆者は2013年の9月に,オプトジェネティクスの創始者であるカール・ダイセロスKarl Deisserothを招き,国際シンポジウムOptogenetics 2013を主催した。彼の発表は,Nature 2013a,2013b,2013cという具合に,2013年の前半だけでNature誌に3本も掲載させたことが分かる圧巻の内容であった(Chung,Wallaceら,2013;Kim,Adhikariら,2013;Tye,Mirzabekovら,2013)3,5,10)。Natureに掲載されるからインパクトがあるという論法で読者の皆様に重要性を訴えるのではない。ダイセロスがスタンフォードの精神科研修を修了した精神科医だからという論法で重要性を説くのでもない。オプトジェネティクスの何にインパクトがあるか,神経科学の歴史からその重要性を述べてみたい。

研究と報告

激越型うつ病にmirtazapineが奏効した3例―薬理学的疾患分類の可能性を鑑みて

著者: 丸山惣一郎 ,   中野友義 ,   金沢徹文 ,   米田博

ページ範囲:P.285 - P.291

抄録

 うつ病を巡る議論は精神科医療の枠にとどまらず,社会を巻き込んで大きな問題となっている。臨床的特徴をもとに非定型うつ病を提唱したKleinらは薬理学的疾病分類を目指したが,これらは操作的診断において平板化しているうつ病の薬物選択に対する警鐘でもあり現在でもなお有用な方向性であると考えられる。今回我々はmirtazapineが奏効した3例の激越型うつ病と考えられる症例報告を通じて,薬剤反応性を基板にしたうつ病細分化の可能性について論じる。ある一面ではあるが,このような方向性が肥大するうつ病の疾患喧伝や安直な操作的診断基準の適応に対する一つの回答になりうるのではないかと考えている。

医学教育における精神医学の知識習得と精神障害者に対する態度との関連

著者: 大山寧寧 ,   河西千秋 ,   平安良雄

ページ範囲:P.293 - P.298

抄録

 精神障害者に対する偏見の克服は,精神保健の重要な課題である。筆者らは,医学部医学科学生における精神障害者に対する態度と精神疾患に関する学習機会との関連を検討した。調査は,精神医学講義を未受講の1年生73名と,系統的に精神医学講義を受講した4年生47名を対象とし,精神障害に対する態度測定尺度(AMD尺度)を用いて実施した。その結果,精神医学講義の受講群のほうが非受講群よりも社会的距離が有意に小さく(t(113)=2.16, p<.05),精神障害に関する専門的知識の習得は精神障害者への望ましい態度と関連があることが示唆された。

短報

Zolpidemによって誘発された睡眠関連摂食障害の1例

著者: 山口成良 ,   宮本礼子

ページ範囲:P.299 - P.302

抄録

 今回我々は,睡眠薬としてzolpidemを服用中,夜間の飲食エピソードと熟眠障害,睡眠不足を訴えた1例に対し,zolpidemの服用を中止させ,睡眠薬をbrotizolamに変更したところ,夜間の飲食エピソードが消失し,睡眠障害が改善された睡眠関連摂食障害の1例を経験した。病態として,睡眠時遊行症(夢遊病)の1亜型とも考えられ,摂食中は視床帯状回経路が賦活されているのに対し,視床皮質覚醒系が持続的不活性化を呈し,不均衡が生じているため,飲食エピソードが記銘されず,翌朝そのことを想起できないことになると想定した。

資料

外来うつ病患者におけるduloxetineの有用性の検討―実臨床下における治療の一環として

著者: 松木武敏 ,   田中咲千子

ページ範囲:P.303 - P.308

抄録

 精神科クリニックにおける外来大うつ病性障害患者57例にduloxetineの投与を行い,4週間の有効性・安全性の検討を行った。投与患者の内訳は新患23例,SSRIからの切替え34例であった。その結果,投与全症例におけるSDSは55.2±8.1から50.5±9.9に有意(p<0.001)な改善を示した。またCGI-Cを用いて症状の改善を検証した結果,66.0%の症例で改善効果が認められた。これらの薬剤有効性はSSRI無効例からの切替え症例だけに限っても同様に認められた。副作用による脱落例は6例(10.5%)であり,これまで報告された割合よりも若干低かった。Duloxetineは高い効果と忍容性を備えている薬剤であり,大うつ病性障害の治療薬として有用な薬剤であることが確認された。

紹介

発達障害圏の子達が安心して飛行機へ乗れるようにする取り組み―模擬搭乗体験プログラムの開発と試験的な実施の結果について

著者: 宮崎健祐 ,   藤原里美 ,   黒沢祥子 ,   近藤直司 ,   吉田成子 ,   尾崎仁 ,   柏原彩曜 ,   岡本健 ,   西村一美 ,   草間かほり ,   木ノ下宏 ,   黒沢直子 ,   村上智映 ,   上原裕之 ,   市川宏伸

ページ範囲:P.309 - P.317

抄録

 広汎性発達障害や注意欠如多動性障害などの発達障害圏の患者では,その障害特性から飛行機という慣れない環境(空間・音・気圧・揺れなど)で適切に振舞うことが困難となる可能性がある。そこで今回我々は,航空会社と共同して発達障害圏の患者が飛行機に乗るために必要なスキルを学ぶことができる模擬搭乗体験プログラムを開発したので,その概要と試験的に実施した結果を示し,考察を加えて報告した。

私のカルテから

心因性非てんかん性発作を呈し,抑肝散により薬剤整理がなされた軽度精神遅滞の1例

著者: 丸谷俊之

ページ範囲:P.319 - P.322

はじめに

 心因性非てんかん発作(psychogenic nonepileptic seizures;PNES)は,心理的要因からてんかん発作様の発作を生じるが,てんかんではなく,発作中の脳波異常もないものである。基本的に除外診断であり,発症から確定診断まで平均7年を要し,その間に本来不必要な薬剤が投与される問題がある4)。患者のIQには幅があるが,100未満から境界知能であることが多い3)

 本稿では,軽度精神遅滞で,複数の抗てんかん薬などを継続的に服用していたが,発症から11年後にPNESと確定診断し,最終的に抑肝散によって薬剤整理がなされた例を報告する。なお,公表については患者から同意を得ており,かつ匿名性の保持のため論旨に影響のない範囲で病歴の一部を改変している。

SSRIが奏効した月経前不快気分障害(PMDD)を合併した精神障害について

著者: 伊藤陽 ,   熊倉恵子 ,   清水敬三 ,   今野公和 ,   七里雅男 ,   長谷川まこと

ページ範囲:P.323 - P.326

はじめに

 月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder;PMDD)は,月経前症候群(premenstrual syndrome;PMS)の中の情動障害が前景に立った重症型であり,月経前約2週間(黄体期)から始まり月経開始とともに軽快する精神身体症候群である。症状としては抑うつ,いらだち,不安,混乱,食行動異常などの精神的なものと,乳房痛,腹部膨満感,頭痛,手足のむくみなどの身体的なものがある。PMDDはわが国の閉経前の一般女性で1.2%の頻度でみられ,とりわけ思春期女性に多く,その頻度は重症PMSとPMDDを合わせると29.6%に達するとされる5)。この障害のために日常生活や就労能力に支障を来すことは多いが,これまでは生理的現象とみなされて治療対象としての認識が不十分であった。最近,PMDDに対してはSSRI(selective serotonin reuptake inhibitors)が奏効することが判明し治療対象として認識されてきた6)

 ところで精神科領域ではうつ病,統合失調症,パーソナリティ障害などの精神障害が月経開始前に悪化することは知られていた(精神障害の月経前加速,premenstrual exacerbation)。月経前加速では,月経が始まってPMDDが消失しても本来の精神障害の症状は持続する。一方,PMDDの症候の中には,うつ状態,情動不安定,過食などがあるが,PMDDとうつ病エピソード,境界型パーソナリティ障害,過食症などの鑑別には経過を十分に見きわめる必要がある。最近,筆者らはうつ病エピソードの再発と過食症で再来したが,実はPMDDを合併していた症例で,SSRIを投与したところうつ病エピソードは寛解,過食症とPMDDは軽減したという経験をしたので報告する。このほかにもPMDDを合併している症例を3例経験したが,いずれもSSRIが基礎にある精神障害にも有効であった。閉経前の女性精神障害者の薬物治療においてPMDDの合併の有無に注目することの有用性を強調したい。なお症例報告を行った患者からは書面による同意を得ており,病態理解に支障のない範囲で個人背景に変更が加えられている。

連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ

アメンチア―せん妄以外の意識変容

著者: 前田潔

ページ範囲:P.327 - P.329

はじめに

 比較的軽い意識混濁に精神運動興奮,幻覚,錯覚,行為心拍様症状など,さまざまな精神症状が加わった状態を意識変容という。せん妄(derilium)が代表的なものであるが,本稿ではせん妄以外の意識変容について解説する。意識変容にはせん妄のほか①もうろう状態(twilight state),②思考散乱と困惑を伴うアメンチア(amentia),③外界の認知が急激に低下し,思考や行動にまとまりを欠く錯乱(confusion),④夢幻状態(oneiroid state,dreamy state,夢幻症,夢様状態,夢幻様体験型)などがある8)

 知覚,注意,認知,思考,判断,記憶などの精神活動が正常に行われる場を意識という。ドイツ学派ではこの意識の障害を混濁,狭窄,変容の3つに大きく分けている。英米学派では混濁と変容を厳密には分けていない。意識変容では一般には思考の錯乱が最も目立つ。知覚も混乱し,知覚と表象(観念)が区別されなくなる。夢のような空想的な,また要素的な幻覚が現れる。注意は分断され持続性が失われる。感情も秩序性,連続性が失われることがほとんどである。意識狭窄に簡単に触れた後,意識変容について述べる。

「精神医学」への手紙

抑肝散服用患者にみられた白髪の黒髪化現象

著者: 上村直人

ページ範囲:P.330 - P.331

 写真(図)の症例は,当科で治療中のレビー小体型認知症(軽度レベル)の80歳代の男性である。夜間の睡眠行動障害と,幻視があり2013年3月11日からツムラ抑肝散54を5gより開始し,同年4月から10gに増量した。家族が白髪の黒髪化に気付いたのは2013年6月頃である。その後さらに黒髪が目立ち,徐々に生え際にも黒髪が目立ってきたことに妻が驚き,主治医に報告されたため,2013年9月時点で継続服用中のこの方を撮影したものである。今回の撮影,および学術論文掲載・報告に関しては患者および妻に同意を得た。併存して服用している薬剤は高血圧,高脂血症,慢性胃炎,排尿障害治療のため,他医から処方されていた酸化マグネシウム,ラニチジン,アムロジピン,コハク酸ソリフェナジン,タムスロシンである。これらの薬剤は抑肝散開始前から処方され,ここ数年来変更はない。また本症例では眉毛も黒髪化している。

 堀口は塩酸ドネペジル服用患者で,白髪の黒髪化現象を報告している1)。また育毛や発毛促進の主成分としてアセチルコリン類似作用2)を持つものや,コリンエステラーゼ抵抗性薬剤3)が報告されている。

動き

精神医学関連学会の最近の活動―国内学会関連(29)(第1回)

著者: 「精神医学」編集委員会

ページ範囲:P.333 - P.354

 本欄「精神医学関連学会の最近の活動」は,1987年に当時日本学術会議の会員であった島薗安雄先生の発案により掲載がスタートいたしました。当時の学術会議には精神医学研究連絡委員会が設置され,そこで取り上げられた重要課題が学術会議から提言されることがありました。島薗先生は,そのような背景から学会間のコミュニケーションが重要であると認識され,この企画がスタートいたしました。以来,掲載は継続し,今回で第29回となりました。この間,本企画は島薗安雄先生,大熊輝雄先生,高橋清久先生,樋口輝彦先生と代々の学術会議会員の先生に監修をお願いして参りました。

 日本学術会議は第20期(2006年)から大きく変わり,会員は会員推薦となり関連学会の代表者による構成ではなくなりました。研究連絡委員会も廃止されました。本欄の当初の意義は薄れましたが,関連学会間の連携や学会のあるべき姿の議論は今も重要です。掲載スタート時の序文において島薗先生は「専門領域の細分化による視野の矮小化を防ぎ,ひいては精神医学の健全な発展に資したい」と述べておられます。本誌編集委員会は,以上の認識から本欄の継続を決定し現在に至っています。

書評

―宮岡 等,内山登紀夫 著―大人の発達障害ってそういうことだったのか

著者: 黒木俊秀

ページ範囲:P.355 - P.355

 本書は,2013年5月に福岡市にて開催された第109回日本精神神経学会学術総会に出店していたすべての書店で最も売れ,ついには完売御礼となった一冊であるという。確かに,このタイトルなら思わず手に取り,この2人の対談なら興味をそそられ,この章立てと構成なら心を動かされ,この装丁と価格なら即購入したいと思うだろう。それほどよくできた対談集である。

 宮岡等氏によれば,この対談は,「大人の精神科医の視点で,一般精神科医が理解し実践できる『大人の発達障害精神医学』を,発達障害の専門家から聞き出し,接点,共通点,相違点を探ろうとする試み」であり,「日本ではどこか壁のある大人の精神科医と子どもの精神科医をつなぎたい」と願った企画であるという。なるほど,本書は,2人の共著ではなく,対談だからこそ成功しているのかも知れない。というのも,「大人の発達障害精神医学」は,今日,なお新興の未開の領域であるからだ。

―野村総一郎,中村 純,青木省三,朝田 隆,水野雅文 シリーズ編集 朝田 隆 編―《精神科臨床エキスパート》誤診症例から学ぶ 認知症とその他の疾患の鑑別

著者: 門司晃

ページ範囲:P.356 - P.356

 まず『誤診症例から学ぶ』というタイトルが刺激的かつ魅力的である。編者の序文にも紹介されているが,北海道大学名誉教授である山下格先生の『誤診のおこるとき―早まった了解を中心として』という名著も過去にあり,評者は多くをこの著作から学ばせていただいた。やはり,「とくに失敗からこそ,人は多くを学ぶものである」というのが素直な現場感覚と思われる。

 本書の内容を紹介すると,まずは編者が執筆した第1部「総論」では誤診の原因とその分類が取り上げられている。臨床診断を誤る6パターンとして,未知による失敗,無知による失敗,不注意による失敗,手順の不遵守による失敗,誤判断による失敗,調査・検討の不足による失敗が挙げられ,おのおのに対応する具体的な誤診パターンが紹介されている。続いて,ベッドサイドでもすぐに役に立つ認知症診察のポイントが簡潔かつ明瞭に述べられている。最後に「診断で失敗しないための習慣作り」という項が設けられている。具体的内容は本書をぜひご覧になっていただきたいが,まさに編者の臨床家としての深い知恵が開陳されている。

学会告知板

日本精神衛生学会第30回北海道大会

ページ範囲:P.302 - P.302

テ ー マ 若者の現在(いま),そしてこれから

会  期 2014年11月1日(土)~2日(日)

会  場 道民活動センタービル かでる2・7(札幌市中央区北2条西7丁目)

論文公募のお知らせ

テーマ:「東日本大震災を誘因とした症例報告」

ページ範囲:P.291 - P.291

「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。

ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

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今月の書籍

ページ範囲:P.357 - P.357

次号予告

ページ範囲:P.358 - P.358

投稿規定

ページ範囲:P.359 - P.360

著作財産権譲渡同意書

ページ範囲:P.361 - P.361

編集後記

著者:

ページ範囲:P.362 - P.362

 4月になり後期研修医が各地の研修施設で活動を開始した。専門医の資格獲得を目指し,教えるほうも教えられるほうもはりきって診療にいそしんでおられることだろう。また4月からは診療報酬改定と精神保健福祉法の一部改正により精神科診療が新たな局面を迎えている。精神神経学会はかねてから保護者制度の廃止と医療保護入院の見直しについて警鐘を鳴らしてきた。また向精神薬の多剤併用処方による「通院・在宅精神療法等」の減算についても一貫して反対してきた。指導医はどのような立場をとるにしろ,若い医師への責任ある指導が求められている。

 今月も原著論文はじめ多彩な臨床論文を掲載することができた。中でも抗うつ薬関連の興味深い報告が目立った。うつ状態や気分変調を呈する患者の診療では,どのような病態なのか,どのタイプのうつ病なのか,関連する疾患は重要か,使用すべき抗うつ薬はなにか,SSRIかSNRIかNaSSAか…といった臨床課題に常に直面している。丸山惣一郎先生,松木武敏先生,伊藤陽先生の論文は,エビデンスのレベルでは違いがあるが,いずれも示唆に富んだ研究である。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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