文献詳細
文献概要
展望
オプトジェネティクス
著者: 田中謙二1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室
ページ範囲:P.281 - P.284
文献購入ページに移動オプトジェネティクスは神経科学における実験技術である。光(オプト)と遺伝子発現(ジェネティクス)を組み合わせて神経細胞の機能を操作するこの技術が神経科学の分野でどのようなインパクトをもって迎えられたか,精神医学の発展にどのような期待を込められているか,筆者の視点で述べてみたい。
オプトジェネティクスの最初の論文は2005年で,培養神経細胞を用いた技術紹介の論文であった(Boyden, Zhangら,2005)2)。グリア研究に没頭していた筆者はこの論文の存在を知る由もなく,オプトジェネティクスという言葉を知ったのはコロンビア大学へ留学してからのことであった(筆者は2006年から2008年までニューヨークのコロンビア大学へ留学していた)。アメリカでは,オプトジェネティクスという新しい技術をどうやって使いこなすかという議論が盛んに行われており,限られた成功例が新着論文で散見される程度であった。技術そのものの潜在能力について皆が理解していたものの,成功することが容易ではなかったのである。
帰国から6年が経過した。今現在は,オプトジェネティクスを使いこなすのは当然として,その技術を使ってどんな疑問を解くのかという段階にきている。筆者は2013年の9月に,オプトジェネティクスの創始者であるカール・ダイセロスKarl Deisserothを招き,国際シンポジウムOptogenetics 2013を主催した。彼の発表は,Nature 2013a,2013b,2013cという具合に,2013年の前半だけでNature誌に3本も掲載させたことが分かる圧巻の内容であった(Chung,Wallaceら,2013;Kim,Adhikariら,2013;Tye,Mirzabekovら,2013)3,5,10)。Natureに掲載されるからインパクトがあるという論法で読者の皆様に重要性を訴えるのではない。ダイセロスがスタンフォードの精神科研修を修了した精神科医だからという論法で重要性を説くのでもない。オプトジェネティクスの何にインパクトがあるか,神経科学の歴史からその重要性を述べてみたい。
参考文献
掲載誌情報