文献詳細
文献概要
連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ
アメンチア―せん妄以外の意識変容
著者: 前田潔1
所属機関: 1神戸学院大学総合リハビリテーション学部
ページ範囲:P.327 - P.329
文献購入ページに移動はじめに
比較的軽い意識混濁に精神運動興奮,幻覚,錯覚,行為心拍様症状など,さまざまな精神症状が加わった状態を意識変容という。せん妄(derilium)が代表的なものであるが,本稿ではせん妄以外の意識変容について解説する。意識変容にはせん妄のほか①もうろう状態(twilight state),②思考散乱と困惑を伴うアメンチア(amentia),③外界の認知が急激に低下し,思考や行動にまとまりを欠く錯乱(confusion),④夢幻状態(oneiroid state,dreamy state,夢幻症,夢様状態,夢幻様体験型)などがある8)。
知覚,注意,認知,思考,判断,記憶などの精神活動が正常に行われる場を意識という。ドイツ学派ではこの意識の障害を混濁,狭窄,変容の3つに大きく分けている。英米学派では混濁と変容を厳密には分けていない。意識変容では一般には思考の錯乱が最も目立つ。知覚も混乱し,知覚と表象(観念)が区別されなくなる。夢のような空想的な,また要素的な幻覚が現れる。注意は分断され持続性が失われる。感情も秩序性,連続性が失われることがほとんどである。意識狭窄に簡単に触れた後,意識変容について述べる。
比較的軽い意識混濁に精神運動興奮,幻覚,錯覚,行為心拍様症状など,さまざまな精神症状が加わった状態を意識変容という。せん妄(derilium)が代表的なものであるが,本稿ではせん妄以外の意識変容について解説する。意識変容にはせん妄のほか①もうろう状態(twilight state),②思考散乱と困惑を伴うアメンチア(amentia),③外界の認知が急激に低下し,思考や行動にまとまりを欠く錯乱(confusion),④夢幻状態(oneiroid state,dreamy state,夢幻症,夢様状態,夢幻様体験型)などがある8)。
知覚,注意,認知,思考,判断,記憶などの精神活動が正常に行われる場を意識という。ドイツ学派ではこの意識の障害を混濁,狭窄,変容の3つに大きく分けている。英米学派では混濁と変容を厳密には分けていない。意識変容では一般には思考の錯乱が最も目立つ。知覚も混乱し,知覚と表象(観念)が区別されなくなる。夢のような空想的な,また要素的な幻覚が現れる。注意は分断され持続性が失われる。感情も秩序性,連続性が失われることがほとんどである。意識狭窄に簡単に触れた後,意識変容について述べる。
参考文献
1) Diagnostic and statistical manual of mental disorders 5th ed. American Psychiatric Association, 2013
2) 原田憲一:器質性精神病.医学図書出版,1976
3) 濱田秀伯:意識の症状.山内俊雄他編,専門医を目指す人の精神医学第3版.p170,医学書院,2011
4) 神庭重信:心理・精神機能,主要徴候の捉え方.加藤進昌他編,TEXT精神医学第4版.pp11-23,南山堂,2012
5) 加藤正明他編:精神医学事典.弘文堂,1975
6) 西口直希,前田潔:せん妄,BPSDの生物学.老年精神医学雑誌16:53-57,2005
7) 大川慎吾,前田潔:精神症状(周辺症状),せん妄,精神運動性興奮.アルツハイマー病をめぐる最近の諸問題.カレントテラピー18:567-574,2000
8) 小田陽彦,山本泰司,前田潔:せん妄の病態生理はどこまでわかったか.特集【せん妄の診断と治療に関する新しい知見Ⅰ】.精神科治療学22:879-884,2007
9) 高橋三郎他訳:DSM-IV-TR-精神疾患の分類と診断の手引き.医学書院,2002
掲載誌情報