佐賀大学におけるキャンパス・ソーシャルワーカー制度―制度導入から現在までの2年間の分析
著者:
佐藤武
,
花田陽子
,
島ノ江千里
,
山本あゆみ
,
南嶋里佳
,
江口達也
,
新地浩一
ページ範囲:P.385 - P.389
はじめに
近年の社会環境の変化や大学進学率の上昇により,大学教育が大衆化し,資質や能力,知識,興味,関心などの面で,多様な学生が入学している状況にある。また,仲間体験を十分に経ていない学生,発達障害などの問題をかかえる学生,困難に直面した時に引きこもりがちや不登校になる学生がみられようになった。こうした学生は,従来の学生支援ネットワークからはみ出し,留年を繰り返し,休学や退学に結びつく1)。このような状況下において,適切な対応をしていくことが必要であり,大学における豊かな学生生活を実現するためのサポート体制の一貫として,学生相談や支援の充実が求められている。
佐賀大学では,学生支援の充実を図るため,メンタルヘルスケアの拡充,対応窓口の増加,学内における連携体制,教職員の意識改革を掲げて作業を進めている2)。メンタルヘルスケアでは,非常勤の学生カウンセラーを雇用し,保健管理センターの機能の充実を図り,対応窓口として,なんでも相談窓口を設置している。しかし,学生カウンセラー,保健管理センター,学生なんでも相談窓口およびハラスメント相談員などが独立して種々の問題を解決していくことは難しく,全職員が学生の抱える問題に前向きに取り組むことが必要となってきた。そこで,2007年度よりチューター(担任)制度を導入し学生に個別的に関わるように努めてきた。その結果,現状が把握できたにもかかわらず,休学・退学者数に大きな変化はみられないという現状があった3)。さらに2011年4月よりこれまでの学習支援システムに加えてラーニングポートフォリオ制度を導入したが,「学生と連絡が取れない」,「大学に来ているのか分からない」,「修得単位が少ない」などの意見が聞かれたため,さらに個別のサポートを充実させたキャンパス・ソーシャルワーカー(以下CSWとする)制度が2011年7月より実施されている。
本研究の目的は,CSW制度を導入した2011年7月から2013年6月までの2年間の活動で支援を行った98名の学生を分析し,その特徴を明らかにするとともに,キャンパスソーシャルワーカー制度の存在意義を明らかにしたい。