文献詳細
巻頭言
“統合失調症は精神科医があきらめない限り治りつづける”(下田,1942)は真実か
著者: 西園昌久1
所属機関: 1心理社会的精神医学研究所
ページ範囲:P.364 - P.365
文献概要
他の2団体の提言の中にはなく,日精協提言の中にある,「どうしても現代の医学では回復できない患者さんがいます。どのような治療や処遇が適しているのかを研究しなくてはなりません」という主張は,筆者にはわが国の統合失調症治療の実践の多くの責任を背負ってきた病院団体の慧眼によると思える。アメリカ精神医学会のリーダーであるLieberman JA(2011)2)は,統合失調症の転帰について,“初回エピソードでは多くの患者は症状の寛解をみる。しかし,やがて再発し,そのたびごとに慢性化して回復は困難になる。結果的に10人に1人は精神病症状を持ち続ける。長期経過は,完全寛解から治療困難な重症の症状と能力障害まで多様性が認められるがその原因は未だ知られていない。疾病病理の広がりと重さとが関係することは確かであろうが,疾病経過に環境要因が関係することも事実である。薬物療法をともに,治療状況とコミュニティの支持,さらには家族の支持がエピソードの転機,長期予後に関連する”と記している。妥当な見解と思われる。
参考文献
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