文献詳細
特集 大学生とメンタルヘルス―保健管理センターのチャレンジ
名古屋工業大学におけるメンタルヘルス支援
著者: 粥川裕平1 冨田悟江2 早川由美3 中野功2
所属機関: 1岡田クリニック 2名古屋工業大学保健センター 3名古屋工業大学学生なんでも相談室
ページ範囲:P.405 - P.412
文献概要
大学保健センターの歴史は浅い。1953年にGHQ(General Headquarters)により大学生の補導支援教育が行われ,1961年に初めて新入生全員を対象に精神科医による面接が施行された1)。1970年頃,わが国独自で開発された学生の精神的健康チェック表University Personality Inventory(UPI)については,保健教育的,臨床的治療的,発見予防的という3つの有用性が指摘されている3)。
名古屋工業大学は,単科工科系大学で,中部初の官立高等教育機関として設立された高等工業学校を前身とし,100年以上の歴史を持つ。学部生は約4,200名,大学院生は約1,500名である。当校の特徴は9割を男性が占めること,大学院博士前期課程の進学率が7割と高率であること,学生の8割が東海地区出身であることである。就職率は学部生で約95%,大学院前期課程で98~99%で,大企業就職率は常に全国ランクのトップテンに入っており,創立以来8万名を超えるエンジニアを世に輩出してきた。なお,職員数は非常勤も含め800名余である。
1972年に設立された名古屋工業大学保健センターは,精神科医1名,内科医1名,看護師2名,非常勤カウンセラー2名のスタッフしか配置されていない。大学のメンタルヘルスを取り巻く状況で特筆すべきは就職氷河期(空白の20年)と,国立大学法人化であろう。2004年の国立大学法人化の後は,教職員の業務負荷と心理的ストレスは急増し,保護者の雇用や収入も悪化し,それが相互に悪循環を形成し精神障害の発生も増加している。
参考文献
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