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文献詳細

雑誌文献

精神医学56巻5号

2014年05月発行

文献概要

連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ

コタール症候群

著者: 阿部隆明12

所属機関: 1自治医科大学精神医学教室 2自治医科大学とちぎ子ども医療センター

ページ範囲:P.447 - P.449

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はじめに

 コタール症候群は抗うつ薬や電気痙攣療法(ECT)の導入によって減少したと指摘されるが,最近では英語圏での関心の高まりを受けて,臨床報告や神経生物学的研究が相次いでいる。とはいえ,臨床的な文脈と無関係に,自分が死んでいるという妄想的信念を持つだけで,その診断がなされる傾向もある3)。これは,器官の否定,不死・巨大妄想,永罰・悪魔憑き(possession)妄想などの特徴をセットで指摘したCotardの原著からの大きな逸脱である。操作的な診断基準が存在しないので仕方ない面もあるが,筆者自身はCotardの意図を最大限尊重する立場である。ここでは原著に立ち返るとともに,その後の諸研究もまとめていくが,特に最近の文献は必ずしも古典的なコタール症候群を扱っているわけではないことを念頭に置いていただきたい。なお,本概念は日本でも繰り返し紹介されている8,9,11)ので,こちらも参照されたい。

参考文献

1) 阿部隆明:「妄想型うつ病」の精神病理学的検討―うつ病妄想の成立条件.病前性格との関連.精神経誌92:435-467, 1990
2) 阿部裕:Cotard症候群の成立過程―生・死・再生.臨床精神医学17:365-373, 1988
3) Berrios GE, Luque R:Cotard's syndrome:Analysis of 100 cases. Acta Psychiatr Scand 91:185-188, 1995
4) Cotard J:Du délire hypocondriaque dans une forme grave de la mélancolie anxieuse. Ann Méd-Psychol 38:168-174, 1880
5) Cotard J:Du délire de negations. Arch de Neurol 4:152-170, 282-296, 1882
6) Cotard J:Du délire d'énormité. Ann Méd-Pchychol 46:465-482, 1888
7) Debruyne H, Audenaert K:Towards understanding Cotard's syndrome:An overview. Neuropsychiatry 2:481-486, 2012
8) 古川冬彦:コタール症候群.臨床精神医学14:549-552, 1985
9) 小泉明:コタール症候群.分子精神医学10:305-308, 2010
10) Leistedt S, Coumans N, Ladha K, et al:La négation du corps:À propos de trios observations concernant les délire de Jules Cotard. Ann Méd-Pchychol 167:669-676, 2009
11) 森本陽子:コタール症候群.濱田秀伯,古茶大樹編著:メランコリー―人生後半期の妄想性障害.弘文堂,pp144-153, 2008
12) Régis E:Note historique et Clinique sur le délire des negations. Gazette Méd Paris 2:61-64, 1893
13) Resnik S:Syndrome de Cotard et depersonalization. Inf Psychiatr 5:461-476, 1970

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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