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文献詳細

雑誌文献

精神医学56巻5号

2014年05月発行

文献概要

「精神医学」への手紙

院内心理教育の導入と継続のためのひと工夫

著者: 和氣洋介1 河原宏幸2

所属機関: 1こころの医療たいようの丘ホスピタル 2こころの医療たいようの丘ホスピタル地域医療連携室

ページ範囲:P.450 - P.450

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 「統合失調症の予後改善に向けての新たな戦略」が「精神医学」53巻2号の特集であった。特集論文中には「疾病管理とリカバリー(illness management and recovery;IMR)」についても紹介されていた1)。この様に,統合失調症の治療や再発防止に,エビデンスが認められる治療介入法の一つに心理教育がある。しかし,心理教育プログラムの立ち上げや継続が困難であることも多い2)。当院では,過去に心理教育プログラムを含めた複数の取り組みが立ち上げ後すぐに中断していた。こうした現実には,院内スタッフの継続力や職種間連携に大きな課題があった。また,現在多くの精神科病院では,患者,家族,そして医療従事者までもが高齢化しており,ステレオタイプな考え方から抜け出せない現場も多く,「あきらめ」からプログラム導入を困難にしている。たとえ院内スタッフの誰かが新しい取り組みを始めても,続かないのである。

 心理教育家族教室ネットワーク本大会の開催県となった年に,開催実行委員に当院からスタッフを派遣する機会を得ることとなった。このタイミングを導入のチャンスと考え,以下に留意し,継続実施を目標に,スタッフへの教育とプログラムの導入を併行して実践した。1)標準版家族心理教育講習会修了者の医師,精神保健福祉士1名ずつを中心メンバーとした。2)関心のある一部のスタッフではなく職種(看護師,精神保健福祉士,作業療法士)ごとにそれぞれ2名を立ち上げメンバーとした。3)立ち上げ準備の勉強会スケジュールを交代勤務である看護師に合わせた。4)勉強会はランチョン形式とし,業務時間後の負担を減らした。5)中心メンバー主導でプログラムを導入し,実践を通して立ち上げメンバーのスキルアップと学習意欲の維持を目指した。実践してみると特に2),3),4)において,現場におけるひと工夫の効果が大きく,メンバーの脱落や実践の中断となることなく,まずは当事者対象の心理教育プログラム導入に成功した。まだ課題は多いが,継続実施ができている。プログラムでは当事者からのフィードバックがメンバーの支えになるなど,良い循環が生まれつつある。

参考文献

1) 野中猛:リカバリー論からみた統合失調症の予後.精神医学53:169-175, 2011
2) 大島巌,福井里江:心理社会的介入プログラム実施・普及ガイドラインに基づく心理教育の立ち上げ方・進め方ツールキットⅠ[本編].特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構(コンボ),2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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