精神医学56巻6号

2014年06月発行

巻頭言

「家族等」の先へ

著者： 八木深¹

所属機関： ¹独立行政法人国立病院機構花巻病院

ページ範囲：P.474 - P.475

　精神保健福祉法が2013年に改正され，医療保護入院に関し，保護者の同意から「家族等」の同意へと変更され，2014年4月から実施された。この改正の先に何があるかを明確にしたい。

　今回の改正議論は，閣議決定「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」が，精神障害者の強制入院について保護者制度の在り方を含めて検討を求めたことに始まる³⁾。厚生労働大臣設置の「新たな地域精神保健医療の構築に向けた検討チーム」は，保護者制度を振り返り検討した。保護者は，当初，精神障害者の自傷他害を防ぐ監督義務を負わされたが，保護者といえども，精神障害者を保護拘束することは禁じられており，保護者がこの監督義務を負うには，精神障害者に医療を受けさせることしか考えられず，1999年の精神保健福祉法改正で，この監督義務は廃止され，保護者は精神障害者に治療を受けさせなければならないと改正された²⁾。検討チームは，家族の高齢化などに伴い負担が大きくなっているなどの理由から，保護者に関する規定は削除すべきと結論した。

参考文献

1) Joanne Smith：家族との新しい協力関係―英国の経験：NPOメンタルケア協議会第12回シンポジウム報告書．p307, p321, 2008

2) 厚生労働省：新たな地域精神保健医療の構築に向けた検討チーム―作業チーム第1回(2011年1月7日)資料4　保護者制度の見直しについて(各論ごとの検討)．pp4-5．http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000101rg-att/2r985200000101z5.pdf

3) 内閣府：障害者制度改革の推進のための基本的な方向について(2010年6月29日閣議決定)p5，(4)医療．http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/kihon.pdf

4) National Institute for Mental Health in England(NIMHE)：Crisis Resolution and Home Treatment. pp3-5. http://intensivehometreatment.com/wp-content/uploads/2010/08/crht-NIMHE-guide.pdf

5) National Institute for Health and Care Exellence(NICE)：NICE Guideline CG178：Psychosis and schizophrenia in adults：Treatment and management. pp12-13, p23, 2014 http://www.nice.org.uk/nicemedia/live/14382/66534/66534.pdf

6) 高橋典成，金持伸子：医療・福祉の沢内と地域演劇の湯田―岩手県西和賀町のまちづくり．東信堂，pp15-22, 2009

7) The New York City Department of Health and Mental Hygine：Mobile Crisis Teams. http://www.nyc.gov/html/doh/html/mental/mobile-crisis.shtml