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文献詳細

雑誌文献

精神医学57巻1号

2015年01月発行

文献概要

私のカルテから

Fluvoxamineを投与して行動・心理症状(BPSD)が改善した中等度アルツハイマー型認知症の1例

著者: 臼井勝也1 森一也1 中川賀嗣12 松原良次3

所属機関: 1医療法人五風会さっぽろ香雪病院 2北海道医療大学心理科学部言語聴覚療法学科 3特定医療法人社団慶愛会札幌花園病院

ページ範囲:P.72 - P.74

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はじめに
 アルツハイマー型認知症の行動・心理症状(Behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD)に対する薬物療法では抗認知症薬や抑肝散などを使用する場合が多いが,効果が乏しい時は適応外使用の抗精神病薬を使用することもある。抗精神病薬の使用においては副作用の問題が大きく,少量投与でもふらつきや過鎮静が出現して薬物調整に難渋することがある。抗うつ薬のfluvoxamineについては,前頭側頭型認知症のBPSDに対して有効であるという報告は多いが,中等度アルツハイマー型認知症に有効であったという報告は少ない。
 今回筆者らは中等度アルツハイマー型認知症の徘徊や興奮性症状に対してfluvoxamineが有効であった1例を経験した。Fluvoxamineは忍容性の点で高齢者にも使いやすい薬剤であり,今後は中等度アルツハイマー型認知症の治療選択肢となり得ると考えられたので報告する。なお,本症例報告にあたっては家族の了承を得て,患者個人が特定されないよう配慮し,症例内容の一部を改変した。

参考文献

1) 新井平伊:認知症に対する薬物療法—認知機能の改善とBPSDに対する治療との関係.精神科治療学 28:1539-1543, 2013
2) 古瀬勉:高齢者に多い精神症状とfluvoxamineの臨床効果.臨床精神薬理 12:1645-1651, 2009
3) 栗田征武,佐藤忠宏,大友好司,他:アルツハイマー型痴呆の行動心理学的症候(BPSD)に対しfluvoxamineとquetiapineの併用療法が奏功した1例.精神科治療学 19:1479-1484, 2004
4) 中村純,Stephen M. Stahl,橋本謙二:精神疾患におけるシグマ1受容体の役割とfluvoxamineの新たな可能性.臨床精神薬理 13:865-875, 2010
5) 日本神経学会監修,「認知症疾患治療ガイドライン」作成合同委員会編:認知症疾患治療ガイドライン2010 コンパクト版2012.医学書院,pp189-190, 2012
6) Teranishi M, Kurita M, Nishino S, et al:Efficacy and tolerability of risperidone, yokukansan, and fluvoxamine for the treatment of behavioral and psychological symptoms of dementia:A blinded, randomized trial. J Clin Psychopharmacol 33:600-607, 2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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