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シンポジウム 家族と当事者からみた精神科医療・精神医学
都医学研シンポジウム掲載にあたって
著者: 糸川昌成12
所属機関: 1東京都医学総合研究所病院等連携研究センター統合失調症プロジェクト 2東京都立松沢病院精神科
ページ範囲:P.943 - P.944
文献購入ページに移動 疾病を感染症や外傷のような急性疾患と,がんや精神疾患のような慢性疾患に分けると,前者では病因が外来的に規定されることが多い1)。たとえば,感染症における病原体の侵入や,交通外傷における物理的破砕力は「外」からの影響と考えられる。一方,がんは臓器の一部細胞の無限増殖が原因であり,また精神疾患では体質に環境因子からの影響が加わって生じるなど,後者では病因の内在性が高まる。したがって,前者の治療は後者のそれより,当事者の意向が生かされる要因は小さく,たとえば抗生物質の選択や外傷処置などは標準化・マニュアル化されやすい。それに対して後者では,がん治療における手術・抗がん剤・放射線の選択・組み合わせ,部分切除か全摘出かなどを決める際,当事者の意思は大きな要因となる。したがって,標準的治療はあっても,個別化が望まれる。
かつては,当事者の決定権を小さく見積もる,いわゆる専門家がパターナリスティックに患者へ告げる医療が主流だった。1980年代になると,慢性疾患の治療において長期のQOLに影響する治療方針を選択する際,当事者の決定権を重要視する流れが世界的に広まった。たとえば,米国では,1986年に全米がん経験者連合(National Coalition for Cancer Survivorship;NCCS)が発足し,1995に米国がん経験者学会が開催された。1998年には米国がん研究所(National Cancer Institute;NCI)内に,がん生存者室(Office of Cancer Survivorship)が設置された。
かつては,当事者の決定権を小さく見積もる,いわゆる専門家がパターナリスティックに患者へ告げる医療が主流だった。1980年代になると,慢性疾患の治療において長期のQOLに影響する治療方針を選択する際,当事者の決定権を重要視する流れが世界的に広まった。たとえば,米国では,1986年に全米がん経験者連合(National Coalition for Cancer Survivorship;NCCS)が発足し,1995に米国がん経験者学会が開催された。1998年には米国がん研究所(National Cancer Institute;NCI)内に,がん生存者室(Office of Cancer Survivorship)が設置された。
参考文献
1) 池淵恵美,村井俊哉,笠井清登,他:統合失調症治療の未来—人生もこころも脳もリカバリー.こころの科学 180:2-21, 2015
2) Kitwood T:Dementia reconsidered:The person comes first. Open University Press, Buckingham, ps.20, 7-8, 91, 1997
3) 日本経済新聞:認知症本人が団体設立 国内初,当事者の視点で政策提言.2014年10月24日
4) 日本統合失調症学会監修:統合失調症.医学書院,2013
5) 東京新聞:薬だけで真の回復ない.2014年12月9日
6) 浦河べてるの家:べてるの家の「当事者研究」.医学書院,2005
7) イヴ・ジネスト,ロゼット・マレスコッティ:Humanitude(ユマニチュード)—老いと介護の画期的な書.トライアリスト東京,2014
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