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文献詳細

雑誌文献

精神医学57巻12号

2015年12月発行

文献概要

連載 精神科の戦後史・9【最終回】

認知症,5つの誤解を生み出した歴史—ジャーナリストの立場から

著者: 大熊由紀子12

所属機関: 1福祉と医療・現場と政策をつなぐ「えにし」ネット・志の縁結び係&小間使い 2国際医療福祉大学大学院医療福祉ジャーナリズム分野

ページ範囲:P.1069 - P.1079

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はじめに
 「私は訊ねました。『熱力学の第2法則について何人が説明おできになりますか』。気まずい沈黙が流れました。『シェイクスピアのものを何か読んだことがありますか』という程度の質問をしたに過ぎないのに」
 C.P.スノーの『二つの文化と科学革命』2)のサワリです。科学哲学の卒業論文「生命観の変遷」の章の1つを,「生命とは,熱力学第2法則に逆らうこと」とした私には忘れられない一節です。
 朝日新聞の論説委員を経て,大阪大学大学院,国際医療福祉大学大学院の教職についた私には,もう1つの「二つの文化の不仲」が待ち構えていました。「アカデミズムとジャーナリズムは,近代が生み落とした不仲の兄弟のようなものなのかもしれない。互いの作法や思考の筋道を信用できないでいる」と言われる,その深い不信感です。
 ジャーナリストの世界では,「まるで学者みてえな文章だな」というのは最大のケナシ言葉です。一方,研究者の皆さんの「これじゃあ,ジャーナリストが書いたみたいだ」は最大の侮蔑の言葉なのでした。
 というわけで,以下の文章,本誌の読者の皆様からは顰蹙を買うかもしれませんが,お許しください。

参考文献

1) 有吉佐和子:恍惚の人.新潮社,1972
2) チャールズ・パーシー・スノー:二つの文化と科学革命.みすず書房,1964
3) 藤原瑠美:ニルスの国の認知症ケア—医療から暮らしに転換したスウェーデン.ドメス出版,2013
4) 樋口直美:私の脳で起こったこと—レビー小体認知症からの復活.ブックマン社,2015
5) 厚生労働省認知症施策検討プロジェクトチーム:今後の認知症施策の方向性について.2012.6.18 http://www.yuki-enishi.com/ninchi/ninchi-06-1.pdf
6) 厚生労働省:認知症施策推進5カ年計画(オレンジプラン).(平成25年から29年度までの計画).2012.9.5 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002j8dh-att/2r9852000002j8ey.pdf
7) 厚生労働省:認知症施策推進総合戦略—認知症高齢者などにやさしい地域づくりに向けて—(新オレンジプラン)について.2015.1.27 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072246.html
8) 松下正明:認知症医療への期待と不安.第2回生存科学シンポジウム.2014年12月
9) 宮島渡:デンマークの高齢者介護理論に学ぶ.訪問看護と介護 11:414-419, 2006
10) 中村成信:ぼくが前を向いて歩く理由—事件,ピック病を超えて,いまを生きる.中央法規出版,2011
11) 大熊一夫:ルポ・精神病棟.朝日新聞社,1973(http://www.amazon.co.jp/dp/BOOHEF3EOM/)
12) 大熊由紀子:「寝たきり老人」のいる国いない国—真の豊かさへの挑戦.ぶどう社,1990
13) 大熊由紀子,朝日新聞論説委員室:福祉が変わる医療が変わる—日本を変えようとした70の社説+α.ぶどう社,1996
14) Ronald Reagan:Altheimer's Letter, November 5, 1994(http://www.pbs.org/wgbh/amex/reagan/filmmore/reference/primary/alzheimers.html)
15) 佐藤雅彦:認知症になった私が伝えたいこと.大月書店,2014
16) 高木俊介:白雪姫の毒リンゴ,知らぬが仏の毒みかん—新オレンジプランと認知症大収容時代の到来.精神医療No.80:2015(http://www.yuki-enishi.com/ninchi/ninchi-35.pdf)
17) 東京都医学総合研究所:認知症国家戦略に関する国際政策シンポジウム2013.1.29 http://www.igakuken.or.jp/mental-health/dementia2.html#04

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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