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文献詳細

雑誌文献

精神医学57巻3号

2015年03月発行

文献概要

特集 リエゾン精神医学の現状と今後の展望(Ⅰ)

周産期医療とリエゾン精神医学

著者: 菊地紗耶1 小林奈津子2 本多奈美1 松岡洋夫2

所属機関: 1東北大学病院精神科 2東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野

ページ範囲:P.195 - P.202

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はじめに
 近年,周産期の精神疾患に関するエビデンスが蓄積され,疫学的な大規模調査による出現率11,15),発症に関わる心理社会的要因2),スクリーニング3)と介入方法6),向精神薬の胎児への影響7,25),母親のメンタルヘルスが児の情緒や行動に与える影響24)が明らかになってきた。
 わが国では,周産期精神医学(perinatal psychiatry)専門外来が開設されてはいるが,未だにその数は少ない。産科や地域母子保健において周産期メンタルヘルスへの関心や精神医療との連携ニーズが高まっており,周産期におけるコンサルテーション・リエゾン精神医学は新たな局面を迎えている。精神科医は周産期精神医学の知識を有し,周産期メンタルヘルスに関わる多職種連携での中心的役割を求められている。
 本稿では,周産期にみられる精神症状と精神疾患,精神疾患を有する妊産婦への対応,周産期の精神科薬物療法について概説し,周産期におけるコンサルテーション・リエゾン体制のあり方について検討を行う。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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