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抄録
体内にあって自己ではないものに腸内細菌叢がある。その働きは宿主である人体のさまざまな機能に影響し,たとえば肥満などの代謝障害に関与している。非定型抗精神病薬は肥満を誘発しやすいことはよく知られているが,近年,腸内細菌叢へのアプローチでこのような肥満が軽減する可能性が動物実験で示された。さらに腸内細菌叢は身体疾患だけでなく,精神機能にも影響する可能性がある。妊娠マウスに偽ウイルスを投与するmaternal immune activationを行うと,仔マウスは自閉症様行動を示すのだが,そのメカニズムとしてbacterial translocationが推測されている。腸内細菌叢は種により異なるため,これらの動物実験の結果をヒトへ直接応用することはできない。しかし今後は,精神科領域で身体合併症予防や精神症状の改善を視野に入れた取り組みとして,腸内細菌叢に関する研究を行う必要がある。
体内にあって自己ではないものに腸内細菌叢がある。その働きは宿主である人体のさまざまな機能に影響し,たとえば肥満などの代謝障害に関与している。非定型抗精神病薬は肥満を誘発しやすいことはよく知られているが,近年,腸内細菌叢へのアプローチでこのような肥満が軽減する可能性が動物実験で示された。さらに腸内細菌叢は身体疾患だけでなく,精神機能にも影響する可能性がある。妊娠マウスに偽ウイルスを投与するmaternal immune activationを行うと,仔マウスは自閉症様行動を示すのだが,そのメカニズムとしてbacterial translocationが推測されている。腸内細菌叢は種により異なるため,これらの動物実験の結果をヒトへ直接応用することはできない。しかし今後は,精神科領域で身体合併症予防や精神症状の改善を視野に入れた取り組みとして,腸内細菌叢に関する研究を行う必要がある。
参考文献
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