文献詳細
書評
—石郷岡純,加藤 敏 責任編集—精神医学の基盤(1)—薬物療法を精神病理学的視点から考える フリーアクセス
著者: 仙波純一1
所属機関: 1さいたま市立病院精神科
ページ範囲:P.489 - P.489
文献概要
全体は,編者2人による「薬物療法の進歩と精神病理学の展開」と題された対談に始まる。この対談では2人のエキスパートが,なれ合いの議論ではなく,対立すべきところは対立して論じ合っている。緊張感を持った対談で,両者の真剣さが印象的である。これに続く部分は大きく2つに分かれている。第Ⅰ部は「薬物療法の精神病理学的意義」とされ,10編の論文が含まれている。精神病理学と薬物療法について正面から論じた論文が4編あり,残りの6編は各精神疾患における薬物療法の精神病理学的な意義について論じられている。後半の第Ⅱ部は「精神科治療のメカニズムと精神病理学」と題され,6編の論文が含まれている。しかし,本書のテーマは,それぞれの執筆者にとっても容易な仕事ではなかったように思われる。真正面からこの問題を取り上げて論じる著者もいれば,一見それとは関係のない議論に始まり,最後にこの問題に答えるという著者もいる。一部には,精神病理学的視点を症状論的な視点と解釈して論じている著者もいる。しかし,全員がこの問題に対して真摯に取り組んでいる姿勢は明らかである。
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