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雑誌目次

論文

精神医学57巻7号

2015年07月発行

雑誌目次

巻頭言

ストレスチェック制度によって職場のメンタルヘルス不調者は減少するか?—面接指導による事後措置の効果

著者: 中村純

ページ範囲:P.496 - P.497

 労働安全衛生法(安衛法)が改正され,50人以上の従業員がいる企業では,「心理的な負荷を測定するための検査」すなわちストレスチェック制度が2015年12月から始まる。この制度は,この十数年前から職場における精神的な不調者をいかに早期発見し,治療に導くかということで考えられていたものである。1998年以降,わが国では働き盛りの自殺者が多い状況が続き,職場のメンタルヘルス不調者は減らず,休職者だけでなく,治療中の労働者の増加から企業の生産性を低下させていることも報告され,職場のメンタルヘルス対策への関心が高まった。特に過労自殺などによる労災認定件数が増加しており,企業にとっては安全配慮義務の観点からもメンタルヘルス対策は喫緊の課題である。
 ところでメンタルヘルス不調という用語から受ける印象は,うつ状態や適応障害などの精神疾患を指すと思われ,発症要因としては生物学的要因よりも環境要因や心理的要因が大きな割合を占めると考えられる。現状では精神疾患に罹患した多くの人が働いており,その再発を予防することも企業には要請されている。しかし,その方法や介入についてのエビデンスはきわめて少ない。

特集 自殺対策の現状

自殺対策の推移と現状

著者: 竹島正

ページ範囲:P.499 - P.505

はじめに
 わが国の自殺対策は自殺対策基本法(2006)をもとにめざましい発展を遂げてきた13)。自殺対策基本法以降,自殺対策は内閣府を中心に進められてきたが,内閣の取り組もうとする政策課題により,機動的に対応するための内閣官房および内閣府の業務の見直しの中で,自殺対策基本法は2016年4月に内閣府から厚生労働省に移管される。移管によって,厚生労働省の全省的な取り組みの発展が期待される一方で,省庁横断的な取り組みの減速も懸念される。本稿では,自殺対策基本法の公布・施行と同年に設置された自殺予防総合対策センターのセンター長を経験した者として,1998年の自殺急増以降の18年を振り返り,わが国の自殺対策の特質と,今後の自殺対策への期待について述べる。

心理学的剖検研究から分かってきたこと

著者: 勝又陽太郎

ページ範囲:P.507 - P.513

国内外における心理学的剖検研究の動向
 心理学的剖検(psychological autopsy)は,自殺者と生前に関係のあった周囲の人(家族,友人,知人,同僚,主治医など)から,故人の生前の情報を,後方視的(retrospective)に聞き取るデータ収集方法の総称である。もともとは米国の著名な自殺学者であるShneidmanらが不審死の死因を明らかにすることを目的として開発した調査的アプローチであったが22),その後自殺予防研究へと応用されるようになり,現在では自殺予防対策の基礎となる自殺の実態や関連要因を分析するためのデータ収集法として広く世界的に用いられている。
 心理学的剖検の手法を用いて自殺の背景要因を明らかにする研究は,1950年代後半から対照群をおかない記述的な研究デザイン(第1世代の心理学的剖検研究)で開始された16)。その後,1990年代以降は,心理学的剖検を利用した症例対照研究(case-control study)のデザインが採用されるようになり(第2世代の心理学的剖検),生存事例あるいは他の死因による死亡事例を対照群として設定し,自殺事例と同様の調査を実施して結果を比較することで,自殺の危険因子を統計的に明らかにする試みが世界各国で行われてきた16)

地域介入研究(戦略研究を中心に)—被災地における自殺対策も含めて

著者: 大塚耕太郎

ページ範囲:P.515 - P.521

複合的自殺対策プログラムの自殺企図予防効果に関する地域介入研究:NOCOMIT-J
 1.NOCOMIT-Jの結果概要
 2005年度より厚生労働科学研究費補助金による「自殺対策のための戦略研究」の一環として,大型の地域介入比較対照研究である「複合的自殺対策プログラムの自殺企図予防効果に関する地域介入研究:NOCOMIT-J」が実施された。NOCOMIT-Jでは,自殺死亡率が長年にわたって高率な地方郡部地域と都市部地域において,地域の自殺対策事業として1次から3次までのさまざまな自殺予防対策を組み合わせた複合的自殺予防対策プログラムを介入地区で3.5年間実施し,対照地区と比較して,自殺企図(自殺死亡および自殺未遂)の発生への予防効果を検証した8)

救急医療を起点とするエビデンスに基づく自殺未遂者ケア—ACTION-J試験の成果と課題

著者: 川島義高 ,   河西千秋 ,   衞藤暢明 ,   山田光彦

ページ範囲:P.523 - P.529

はじめに
 自殺企図の既往は,その後の自殺再企図や自殺死亡の最も強力な危険因子である1,10)。英国の研究では,救急医療機関を退院した自殺未遂者の0.5%が1年以内に自殺企図により死亡すると報告されている2)。わが国では,救急医療機関を退院した自殺未遂者の2.6%が1年以内に自殺完遂に至るとされ9),自殺再企図においては20%にのぼる5)。消防庁の報告によると,自損行為による救急搬送件数は,年々増加傾向にあり,2010年には51,000件となり,1997年(28,000件)の約2倍に上昇している11)。また,日本の救急医療機関を受診した自殺未遂者を対象にした研究の系統的レビューとメタ解析の結果では,全救急受診者1,319,848人中の自殺未遂者の割合は4.7%であった8)。加えて,自殺未遂者の多くが精神疾患に罹患しており,中でも気分障害の有病割合はICDで30%,DSMで35%と最も高かった。このように,日本の救急医療機関には,自殺未遂者が多く搬送され,彼らの多くは精神疾患に罹患している。したがって,救急医療機関で命を救われた患者が再び自殺へと追い込まれることがないように,救急医療機関を起点として,精神科医療機関や地域精神保健福祉機関が連携し,適切なケアを提供することは,自殺予防対策にとって最も重要な課題のひとつといえる。
 わが国では,2007年に,政府が推進すべき自殺対策の指針として,自殺総合対策大綱が閣議決定された。そこには,9つの優先課題が掲げられた。自殺未遂者対策はこの優先課題のひとつに含まれており,救急医療機関における精神科医療を充実させることにより,自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐ必要性が示された。2012年に改訂された大綱でも救急医療機関における自殺未遂者対策の必要性は再掲されており,救急医療機関が自殺未遂者に対する重要な治療的介入の場であることが強調されてきた。しかし,わが国では,自殺再企図防止に効果があると科学的に確認された自殺未遂者への介入法はなかった。また諸外国でも,救急医療機関を受診した自殺未遂者を対象にしたランダム化比較試験がさまざまな介入手法を用いて行われてきたものの4),研究デザイン上に明らかな問題があったり,対象者数が不十分なために介入の有効性を明らかにできなかったり,結果の再現性が乏しいといった問題があった。このような社会状況の中,厚生労働省により自殺対策の科学的根拠(エビデンス)を創出することを目的として,「自殺対策のための戦略研究」が2005年より開始された。「自殺対策のための戦略研究」では2つの大型研究が実施されたが,そのうちの1つが「自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネージメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究(通称:ACTION-J試験)」である。ACTION-J試験は,世界でも類をみない自殺対策のための大規模多施設共同ランダム化比較試験であり,研究開始当初から,諸外国において高い注目を集めてきた。そして,2014年8月に,ACTION-J試験の成果の第1報がLancet Psychiatry誌にて発表され,救急医療機関退院後の自殺未遂者において強力な自殺再企図防止効果が確認された6)。ACTION-J試験は,これまでに数多く行われてきた介入研究の問題点や課題の多くを克服した研究であり,その成果は,わが国だけでなく,国際的にも注目された。本稿では,この研究に携わってきた立場から,あらためてACTION-J試験の概要とその成果について解説を行い,さらに,その成果の活用に関する今後の課題について検討する。

アウトリーチによる未遂者のフォローアップ

著者: 小石誠二

ページ範囲:P.531 - P.537

アウトリーチについて
 近年,保健医療福祉の領域の行政では,病院や施設から地域へという方針が明確に示されるとともに,関係機関がニーズの有る所へ出向く「アウトリーチ」が重視されている。

学校における自殺予防教育の実践からみえてきたもの

著者: 阪中順子

ページ範囲:P.539 - P.545

子どもの自殺の現状と理解
 最近の20年,生徒(中高校生)の自殺者数は年間300人前後であるが,少子化のため自殺率は上昇している(図1)。また,児童(小学生)の自殺者数の平均(2000〜2013年)は8.4人であったが,2014年は18人と最悪の数値となった。
 このように,児童生徒の自殺率は上昇傾向を示し,自殺関連行動である自傷行為を繰り返したり,不適応から死を考えたりする子どもの存在は特殊なケースとして片づけることのできない状況にある。未来ある子どもたちが自ら命を絶つということほど悲惨なことはなく,周囲への影響も計り知れないものがある。

自死遺族への支援

著者: 山口和浩

ページ範囲:P.547 - P.552

はじめに
 2006年に自殺対策基本法(以下,基本法)が成立し,国,地方公共団体,民間団体などでの独自の取り組みだけでなく,各機関が連携してさまざまな対策がなされている。
 警察庁の発表では年間の自殺者数は1998年から14年間連続して3万人を超える状況が続いていたが,2012年27,858人,2013年27,283人,2014年25,427人と近年は3万人を下回っている(図1)。
 自殺者数減少の要因については,基本法制定に始まる地道な取り組みの成果,景気回復による効果などさまざまな見解はあるものの,どの対策が効果的だったかという検証は十分とはいえず,今後の課題である。また,自殺者数の減少により自殺対策が喫緊の課題として扱われなくなり,さまざまな取り組みが一過性となることを懸念している関係者は少なくない。
 また,一方で遺族の問題に目を移すとその数が減少することはない。年間の自殺者が減少をしても遺族の数は累積していくのである。遺族にとっては3万分の1でなく,1分の1のかけがえのないたった一人を亡くしており,自殺者の増減では図ることのできない一人ひとりの思いがあるはずである。
 筆者は13歳で父親を自殺で亡くし,あしなが育英会を通じて自殺問題に関わるようになり,2006年から自死遺族支援の活動に従事している。本稿では,自死遺族の置かれる状況と支援についてまとめることとする。

自殺の周辺・メディアの「習性」学

著者: 高橋康弘

ページ範囲:P.553 - P.559

はじめに
 物事に向き合った時に,書かない理由,書けない言い訳から考え始めたら,メディアはその果たすべき役割を失う。どうすれば記事にできるかを常に考える。これが大切だと習った。新聞,そしてテレビの世界もそうなのであろう。報じるべきことの根幹は「人」であり「暮らす」(生きる)ということ。いわゆる自殺に関する報道は,その意味においてメディアが向き合うべき大きなテーマの一つである。しかし,難しい。自殺問題を報じることの意義(重要さ)はいくらでも列記できる。デメリットも同様だ。
 自殺をいかに防ぐか。この視点に立った時に,医療現場で最前線に立つ精神科医と,メディアは共通の言語(意識)をどこまで持ち合わせているのだろうか。メディアの習性を探ることを通じて,臨床医との距離を縮めることを試みたい。

研究と報告

大うつ病性障害に対する反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の臨床経験

著者: 松原六郎 ,   宮地雅之 ,   小林仁志

ページ範囲:P.561 - P.565

抄録
 大うつ病性障害に対する反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の臨床経験について報告する。HAM-D(17)スコア20点以上の7症例に対しrTMSを施行した結果,SDSおよびHAM-D(17)の両指標において抗うつ効果が示された。さらにrTMS終了1か月後においてもその効果は持続した。また,rTMS施行による副作用などの問題となるような有害事象は認められず,安全性が高い治療法であることが示唆された。rTMSは,薬剤抵抗性などの難治性大うつ病性障害に対する有用な治療法のひとつとなり得る可能性があると考えられる。

花巻病院における被災地支援報告

著者: 堀田洋 ,   阿部祐太 ,   石丸正吾 ,   吉住昭

ページ範囲:P.567 - P.571

抄録
 東日本大震災発生後,花巻病院では定期的な支援活動を行っている。本稿では,初期対応終了時の2011年10月から地域こころのケアセンターが始動し,支援体制が整う2012年4月までの釜石市における支援活動を報告した。主な業務は,震災ストレス相談室での診察,保健師へのスーパーバイズや同行訪問診察,地域ケア会議への出席,支援スタッフへの講演,住民への健康教室,地域の診療機関への情報提供などであった。被災者・支援者のニーズと保健所や市役所との連携を重視した結果,ある程度の貢献はできた。一方,他支援機関との連携不足など,今後改善すべき課題も多かった。

短報

悪性症候群における免疫グロブリンG(IgG)の増加について

著者: 菊池章

ページ範囲:P.573 - P.577

抄録
 悪性症候群経過中にみられる検査所見の特徴として,CPKや白血球数の増加が一般的に知られている。筆者は経過中に血清アルブミン値が低下することに次いで,硫酸亜鉛混濁試験(ZTT)が低下の後に上昇することを報告してきた。ZTTは免疫グロブリン量を反映することが知られており,悪性症候群経過中に血清IgGが変動を示すであろうと予測した。その後に経験した悪性症候群の2症例において,IgGなどを経時的に検査したところ,IgGが長期間にわたって増加を続けた。このIgGの増加は悪性症候群に起因しサイトカインが関与するものと考え,その理由や意義について考察を加えた。

資料

精神科救急病棟における統合失調症圏患者の入院期間からみた分析

著者: 谷口典男 ,   須藤良隆 ,   田中秀樹 ,   清家正人 ,   真本晶子 ,   石田剛士 ,   戸井優樹 ,   岡崇史 ,   関野奈由 ,   釜江和恵 ,   小野圭介 ,   泉本高之 ,   井阪光晴 ,   田中義 ,   榎本良広 ,   田伏薫

ページ範囲:P.579 - P.584

抄録
 統合失調症治療において,長期入院が問題となってきている。今回,我々は精神科救急病棟で入院治療を完結した217例の統合失調症圏患者を分析し,どのような因子が入院期間に寄与しているかを検討した。
 入院期間から第1群(1日から35日以下),第2群(36日から65日以下),第3群(66日以上)の3群に分けることができた。第1群は任意入院が多く隔離・拘束日数が少なかった。第2群は女性患者が多く医療保護入院数が多かった。第3群は隔離・拘束日数が長くなる傾向にあった。入院時のGAFについては,入院期間の延長とともに低くなる傾向にあった。また内服薬のCP換算値は,3群とも入院時より退院時に増加する傾向にあったが,有意差はなかった。

連載 精神科の戦後史・6

精神科七者懇談会の発足と活動について

著者: 小島卓也

ページ範囲:P.585 - P.590

はじめに
 七者懇談会は日本精神神経学会,精神医学講座担当者会議,国立精神療養所院長協議会(現,国立精神医療施設長協議会),全国自治体病院協議会,日本精神科病院協会,日本精神神経科診療所協会,日本総合病院精神医学会の七つの団体が集まって,精神科に関連する種々の情報を集め,問題を討議し,必要に応じて提言書・要望書を作成し,行政に働きかけてきた。
 七者懇談会がどのような経緯で発足し,どのようなことを行ってきたかについて資料をもとに振り返ってみたい。当番団体が持ち回りで事務局を務めるため資料が散逸し,1990年から1996年にかけて七者懇談会総会の議事録が掲載されていた日精協誌,1990年の日本精神神経学会の理事会・医療問題委員会の議事録を中心にし,現在の委員会の各委員長に協力いただいて情報を収集した。

書評

—大西次郎著—精神保健福祉学の構築—精神科ソーシャルワークに立脚する学際科学として

著者: 青木聖久

ページ範囲:P.578 - P.578

 本誌の読者の多くは,精神保健福祉士と連携していよう。では,その精神保健福祉士の固有性や学問的基盤はどこにあるのか。この疑問に対して本書は,膨大な先行研究から「なるほど」と唸らせる先人の幾多の業績を参照しつつ,精神科専門医であるとともに,社会福祉学の博士課程を修了した社会福祉士でもある著者が,精神保健福祉学の存立という形で回答している。
 精神科ソーシャルワーカー(以下,PSW)は,精神保健福祉領域で長く社会福祉実践を展開し,ついに1997年「精神保健福祉士」として国家資格化された。いわば,現場のニーズに後押しされる形で独自の資格化をみたPSWが,拠り所とする精神保健福祉学とは何か,社会福祉学との違いはどこか,というのが著者の問題意識である。

学会告知板

第8回関西森田療法セミナー(入門コース)

ページ範囲:P.529 - P.529

西南学院講座in Tokyo

ページ範囲:P.559 - P.559

論文公募のお知らせ

テーマ:「東日本大震災を誘因とした症例報告」

ページ範囲:P.513 - P.513

「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。
ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

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次号予告

ページ範囲:P.592 - P.592

編集後記

著者:

ページ範囲:P.596 - P.596

 本号では自殺対策の現状を特集として取り上げた。自殺者の多くが精神疾患と関連していると言われていることから,自殺予防は精神保健・医療にとっては試金石となる課題である。いわゆる1次から3次までの予防精神医学の力を動員して,精神保健では地域,職域,学校での啓発から地域ネットワーク作り,精神医療では“多職種チーム医療”,“アウトリーチ”などさまざまな手法を用いて幅広い予防対策が行われる必要があり,国策レベルでの課題である。
 8年前(2007年8月号)と5年前(2010年6月号)の編集後記で自殺対策基本法とその自殺総合対策大綱(10年間で自殺者を20%減らすという目標)を取り上げた。そこでは重点施策として,1.自殺の実態を明らかにする,2.国民一人ひとりの気づきと見守りを促す,3.早期対応の中心的役割を果たす人材を養成する,4.心の健康づくりを進める,5.適切な精神科医療を受けられるようにする,6.社会的な取り組みで自殺を防ぐ,7.自殺未遂者の再度の自殺を防ぐ,8.遺された人の苦痛を和らげる,9.民間団体との連携を強化する,が挙げられていた。その後,わが国の年間自殺率は徐々に減少し始め,当時の10万人あたり約25人からようやく20人を下回り,当初の目標がおおむね達成された感がある。しかし,予防や早期介入に関する精神保健・医療に力を入れている欧米の先進国と比べると,日本の自殺率はまだ2倍もあり,さらに上を見て問題を打開していかなければならない。本号の特集を見ると分かるようにさまざまな領域での優れた取り組みには目を見張るものがあるが,優れたモデル事業の成果を全国津々浦々に均てん化することは容易ではない。まさに,国策レベルでの強力な推進戦略が求められる。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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