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文献詳細

雑誌文献

精神医学57巻7号

2015年07月発行

特集 自殺対策の現状

自死遺族への支援

著者: 山口和浩1

所属機関: 1NPO法人自死遺族支援ネットワークRe

ページ範囲:P.547 - P.552

文献概要

はじめに
 2006年に自殺対策基本法(以下,基本法)が成立し,国,地方公共団体,民間団体などでの独自の取り組みだけでなく,各機関が連携してさまざまな対策がなされている。
 警察庁の発表では年間の自殺者数は1998年から14年間連続して3万人を超える状況が続いていたが,2012年27,858人,2013年27,283人,2014年25,427人と近年は3万人を下回っている(図1)。
 自殺者数減少の要因については,基本法制定に始まる地道な取り組みの成果,景気回復による効果などさまざまな見解はあるものの,どの対策が効果的だったかという検証は十分とはいえず,今後の課題である。また,自殺者数の減少により自殺対策が喫緊の課題として扱われなくなり,さまざまな取り組みが一過性となることを懸念している関係者は少なくない。
 また,一方で遺族の問題に目を移すとその数が減少することはない。年間の自殺者が減少をしても遺族の数は累積していくのである。遺族にとっては3万分の1でなく,1分の1のかけがえのないたった一人を亡くしており,自殺者の増減では図ることのできない一人ひとりの思いがあるはずである。
 筆者は13歳で父親を自殺で亡くし,あしなが育英会を通じて自殺問題に関わるようになり,2006年から自死遺族支援の活動に従事している。本稿では,自死遺族の置かれる状況と支援についてまとめることとする。

参考文献

1) 岩井英典:日司連の自死対策.月報司法書士469:30-34,2011
2) 自殺実態解析プロジェクトチーム:自殺実態白書2008.453-473,2008
3) 自死遺児文集編集委員会・あしなが育英会(編):『自殺って言えない 自死で遺された子ども・妻の文集』.2000
4) 自死遺児文集編集委員会・あしなが育英会(編):『自殺って言えなかった.』サンマーク出版,2002
5) 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所:児童相談所における自死遺児等支援の手引き.pp6-10,2015
6) 公益社団法人日本精神科病院協会:「自殺」呼称の見直しについて(要望).2013 http://www.nisseikyo.or.jp/opinion/teigen/1616.html
7) 本橋豊,編著:よくわかる自殺対策—多分野連携と現場力で「いのち」を守る.ぎょうせい,pp40-42,2015
8) 長崎県自殺対策専門委員会:長崎県自殺総合対策相談対応のための手引き集.自死遺族相談支援用手引き「自死遺族への相談支援の方法」.2007
9) 内閣府自殺対策推進室:地域における自殺の基礎資料. http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/toukei/index.html
10) 内閣府自殺対策推進室:警察庁生活安全局生活安全企画課—平成26年中における自殺の状況.2015
11) 澤田康幸,上田路子,松林哲也:自殺のない社会へ—経済学・政治学からのエビデンスに基づくアプローチ.2013

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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