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文献詳細

雑誌文献

精神医学57巻8号

2015年08月発行

オピニオン DSM-5—私はこう思う

DSM-5の背景と作成過程

著者: 大野裕12

所属機関: 1一般社団法人認知行動療法研修開発センター 2認知行動療法センター

ページ範囲:P.600 - P.603

文献概要

はじめに:DSM-5が目指した夢のパラダイム・シフト
 米国精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』(DSM-5)1)は,DSM-Ⅳが発表されてから19年後の2013年5月に発表された。これだけの期間が空いたのは,変更するだけの明確な科学的根拠が得られなかったためである。
 しかし,米国精神医学会は精神疾患概念を再考するに足る科学的根拠が揃うのを待ち続けることができなかった。その一因として指摘されるのが,米国精神医学会の経済的な苦境である。米国精神医学会は運営費が逼迫しており,そのために大きな収益が上げられるDSM-5を改訂せざるを得なくなったという。そのために,カテゴリーを変えるだけの明確な科学的根拠に乏しい中でDSM-5を出版せざるを得なくなったのである。

参考文献

文献1) American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition. American Psychiatric Publishing, Arlington, 2013(髙橋三郎,大野裕監訳:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル,医学書院,2014)
2) American Psychiatric Association. DSM-Ⅳ sourcebook, vol.1〜3. American Psychiatric Association, Washington D.C., 1994
3) Frances A:Saving Normal:An Insider's Revolt Against Out-of-Control Psychiatric Diagnosis, DSM-5, Big Pharma, and the Medicalization of Ordinary Life, William Morrow, New York, 2013(大野裕監修:正常を救え:精神医学を混乱させるDSM-5.講談社,2013)
4) Frances A:Essentials of Psychiatric Diagnosis, Revised Edition:Responding to the Challenge of DSM-5, Guilford Press, New York, 2013(大野裕,中川敦夫監訳:精神疾患診断のエッセンス—DSM-5の上手な使い方.金剛出版,2014)
5) 大野裕:精神医療・診断の手引き:DSM-Ⅲはなぜ開発され,DSM-5はなぜ批判されたか.金剛出版,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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