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文献詳細

雑誌文献

精神医学57巻8号

2015年08月発行

文献概要

オピニオン DSM-5—私はこう思う

DSM-5の批判的検討—精神分析的臨床家の立ち位置から眺望する

著者: 松木邦裕1

所属機関: 1京都大学大学院教育学研究科

ページ範囲:P.616 - P.619

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 「かつての医学は,神経症を目に見えない損傷の望ましくない結果であると考えていた」と精神分析の創始者フロイトが記したのは,1937年である3)。そしてその後,とりわけ米国では心因を重視する精神医学が興隆した。歴史は繰り返す。今日もこのせめぎ合いは続き,現代の精神医学では,精神疾患は脳神経の生物学的病変によると規定し,神経症,すなわち心因,あるいは心の発達での環境因による疾患は存在しないとする立場がその勢力を増強させている。
 その生物学志向精神医学推進の象徴がDSMである。その傾向は,当然のことであるが,DSM-5ではさらに進んでいる。統合失調症や双極性障害,抑うつ症についてはすでに生物学的病変という観点からの分類が既遂されているため,5では改めて大きな変更は持ち込まれていない。一方,小児関連疾患とパーソナリティ障害に関しては,生物学的病変の観点から診断名を分類する方向へと大きくシフトしている。

参考文献

1) American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition. American Psychiatric Publishing, Arlington, 2013(髙橋三郎,大野裕監訳:DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル,医学書院,2014)
2) American Psychiatric Association:Desk Reference to the Diagnostic Criteria from DSM-5. American Psychiatric Publishing, Washington D.C., 2013(髙橋三郎,大野裕監訳:DSM-5精神疾患の分類と診断の手引,医学書院,2014)
3) Freud S. 1937:Analysis terminable and interminable. In:The Standard Edition of The Complete Psychological Works of Sigmund Freud. Hogarth Press, London, p216, 1981
4) 加藤敏:パーソナリティ障害およびパーソナリティ障害代替モデル.精神経誌117:146-151, 2015
5) Lanyado M, Home A, ed:The Handbook of Child and Adolescent Psychotherapy. 2nd Edition. Routledge, London, 2006(平井正三,他監訳:児童青年心理療法ハンドブック.創元社,2013)
6) 音羽健司,佐々木司:不安症群,強迫症および関連症群.精神経誌116:519-523, 2014
7) 齊藤卓弥,岡田俊,田中究,他:神経発達症群/神経発達障害群と秩序破壊的・衝動制御・素行症群.精神経誌116:332-338, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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