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文献詳細

雑誌文献

精神医学57巻8号

2015年08月発行

文献概要

オピニオン DSM-5—私はこう思う

DSM-5と症例の定式化—DSMを上手に使う

著者: 中川敦夫1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部クリニカルリサーチセンター

ページ範囲:P.632 - P.634

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はじめに
 米国精神医学会より,精神障害の診断と統計マニュアル第5版Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th edition(DSM-5)2)が2013年に発表され,その日本語翻訳版が2014年に刊行された。DSM-5は当初ディメンションによる診断分類が導入されると言われていたものの,最終的にはその導入は時期尚早との判断から見送られ,従来のDSMカテゴリカル診断分類が踏襲された。その一方,統合失調症スペクトラム障害や自閉症スペクトラム障害という名称の登場のように疾患のスペクトラム性は意識され,疾患スペクトラム内の近縁疾患はDSM-5では隣り合った項目に収載され,他方ではⅠ軸診断,Ⅱ軸診断のようなカテゴリカルな多軸診断は廃止された。そして,症例の定式化や臨床判断が重要視されるなど,DSMは臨床家が診断を行うのを助けるための道具であるという注意が記載され,操作的診断のトーンが少し変わってきたようである。

参考文献

1) American Psychiatric Association:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition. American Psychiatric Publishing, Arlington, 2013
2) Frances A:Essentials of psychiatric diagnosis-responding to the challenge of DSM5. Guilford Press, New York, 2013
3) 大野裕監訳,ウィレム・クイケン,クリスティーン・A・パデスキー,ロバート・ダッドリー著:認知行動療法におけるレジリエンスと症例の概念化.星和書店,2012
4) 中安信夫:「診立て」とは成因を考慮した病名の暫定的付与であり,それは終わりのない動的なプロセスである.臨床精神医学 43:159-170, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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