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文献詳細

雑誌文献

精神医学57巻9号

2015年09月発行

文献概要

巻頭言

Lithiumの中毒を避けるために—適切な採血検査と情報提供の必要性

著者: 鈴木映二1

所属機関: 1国際医療福祉大学熱海病院

ページ範囲:P.694 - P.695

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 Lithium(Li)は最も古い向精神薬であるが,最近あらためてその有効性が注目されている。Ghaemi5)は「Liのメリットは競合薬を大きく上回るので,リスクを理由に処方しないことは患者をだますことになる」と警告している。筆者が2015年1〜3月にかけて特定非営利活動法人日本双極性障害団体連合会の会員を対象に行ったアンケート調査では,有効な回答を得られた双極性障害患者99名(診断は自己申告,平均46.5歳)のうち75名にLiの服用経験があった。
 Li使用を躊躇する理由に中毒の危険が挙げられると思うが,最近本誌に続けて4つの報告がなされた。大谷ら8)はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(Angiotensin Ⅱ Receptor Blocker;ARB)の併用,常岡ら15)はARBの変更,塩飽ら11)は糖尿病患者にNa制限食を開始したことをそれぞれきっかけとして中毒症状を来した症例について報告した。長嶺ら7)は,塩飽らの論文11)に関連した考察を報告した。

参考文献

1) Aditynjee, et al:The syndrome of irreversible lithium-effectuatated neurotoxicity. Clinical Neuropharmacol 28:38-49, 2005
2) Amdisen A:Monitoring of lithium treatment through determination of lithium concentration. Dan Med Bull 22:277-291, 1975
3) Baxter K, ed:Stockley's Drug Interactions Pocket Companion 2011. Pharmaceuitical Press, London, 2011(澤田康文監訳:ストックリー医薬品相互作用ポケットブックガイド第2版.日経BP社,2011)
4) 福山雄卯介,他:炭酸リチウム血中濃度に及ぼす抗精神病薬併用の影響.日病薬誌 50:280-284, 2014
5) Gahemi SN:Mood disorders, 2nd edition-practical guide. Lippincott Williams & Wilkins, Pennsylvania, 2008(松崎朝樹監訳:気分障害ハンドブック.メディカル・サイエンス・インターナショナル,2013)
6) 厚生労働省医薬品医療機器総合機構:医薬品適正使用のお願い. http://www.pmda.go.jp/files/000145551.pdf. (2015年6月30日)
7) 長嶺敬彦,他:糖尿病が関連するLi中毒に性差はあるのか.精神医学 56:984-985, 2014
8) 大谷恭平,他:双極性障害の維持療法中にアンジオテンシン2受容体拮抗薬を併用しリチウム中毒となり気分安定薬を変更した2例.精神医学 56:795-798, 2014
9) Schou M:The combat of non-compliance during prophylactric lithium treatment. Acta Psychiatr Scand 96:361-363, 1997
10) 汐田晋也,他:比色法を用いた炭酸リチウム測定試薬の基礎的検討.島根医学検査 42:30-33, 2014
11) 塩飽裕紀,他:糖尿病入院治療中に減塩食によりlithium中毒を発症した双極性障害の1例.精神医学 56:585-589, 2014
12) 鈴木映二:向精神薬の薬物療法—基礎から臨床まで.加藤隆一監修,星和書店,2013
13) 鈴木映二:リチウムの薬物動態学と血中濃度測定.臨床精神医学 42:1389-1396, 2013
14) 鈴木映二:気分安定薬と一般治療薬との相互作用.精神科治療学 29:513-519, 2014
15) 常岡俊昭,他:炭酸リチウム内服中にアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の変更をきっかけにリチウム中毒となった1症例.精神医学 57:761-765,2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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