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雑誌目次

雑誌文献

精神医学58巻1号

2016年01月発行

雑誌目次

巻頭言

タダより高いものはない

著者: 須田史朗

ページ範囲:P.2 - P.3

 平成24年,厚生労働省は企業に精神障害者の雇用を義務付ける方針を打ち出した。平成25年6月19日には「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され,平成30年4月1日より精神障害者を雇用義務の対象に追加することが明確化された。今回の法改正には発達障害を精神障害に含めることや雇用の分野における障害を理由とする差別的取り扱いの禁止が盛り込まれている。それ以後,全国的にも精神障害者の就職件数は順調に増加している。しかし,筆者は正直なところ,実際の臨床現場で精神障害者の就職が増加しているという印象を持っていない。患者さんからも「またダメでした」「見習い期間中に解雇されました」という悲嘆の声が毎月のように聞こえてくる。
 厚生労働省職業安定局の報告によると,平成26年の障害者全体の就職件数は約8万5千件であり,前年比で8.6%の増加となっている。そのうち精神障害者の就職件数は3万5千件であり,これは身体障害者の就職件数2万8千件を大きく上回る数値である。また前年比では17.5%と大幅に増加している。しかし,従業員50人以上の民間企業に就職している障害者数約43万人のうち,31万人は身体障害者であり全体の73%を占めている一方で,精神障害者数は2万8千人であり,全体のわずか6.5%に過ぎない。それでも数値だけをみると,前年比3.6%の増加にはなっているが,就職件数の増加率17.5%と比較すると明らかに低いと考えざるを得ない。この数値の意味するところは,精神障害者のきわめて高い早期離職率である1)。精神障害者の就職件数は順調に増加しているが,実際に継続して就労できている精神障害者はまだまだ少ないという現実がある。

特集 社会認知研究の最近の動向

特集にあたって

著者: 村井俊哉

ページ範囲:P.5 - P.5

 社会神経科学social neuroscienceという研究領域が提案されてから20年を超え,精神医学の分野に限っても,社会認知social cognitionをテーマとした研究は厖大な数に及んでいる。本特集に先駆けて,すでに一般精神科医向けの雑誌でも社会認知・社会神経科学については繰り返し特集が組まれているし,精神科関係の学会シンポジウムでもこのテーマが取り上げられる機会は多い。結果として社会認知・社会神経科学は,この領域の研究に直接携わっているわけではない一般の精神科医にとっても比較的馴染みのある概念となっている。
 このような状況を踏まえ,今回の特集では,精神疾患についての社会認知研究を網羅的・体系的にカバーすることを目指すのではなく,この領域の第一線で活躍する研究者に,社会認知という広大な研究領域の中でそれぞれテーマを絞って,最近話題となった研究を中心に執筆いただくことをお願いした。本誌の読者は臨床精神科医が多数派であると想像するが,そのような読者の皆さんにこの研究領域の広がりを感じていただくために,執筆陣には動物研究や乳児研究を専門とする研究者にも加わっていただいた。

霊長類の神経生理学研究からみた「他者理解」

著者: 磯田昌岐

ページ範囲:P.7 - P.13

はじめに
 ヒトを含む霊長類は,他の哺乳動物と比べて社会構造が複雑である。たとえば,自然状態下におけるニホンザルの群れサイズ(以下,集団サイズ)は20〜150頭にも及び,その中には順位制,リーダー制,血縁性にもとづく社会構造が存在する。ヒト社会の複雑性はいうまでもない。近年は,加えて通信技術の進歩により,さまざまなタイプのコミュニケーション社会がインターネット空間にまで広がっている。多数の個が互いに複雑な作用を及ぼしあう集団社会をうまく生きるには,他者が発するさまざまな行動シグナルの検出を通して他者の行為を理解し,その背後にある「こころ」を類推することが必要になる。同時に,社会的文脈に応じて自己の行為を適切に制御することも必要である。
 社会構造が複雑になればなるほど,そして社会を構成する個の多様性が増せば増すほど,脳が処理すべき情報量は増すであろう。実際に,霊長類の大脳新皮質の相対重量は,集団サイズなど社会構造の複雑さを表す指標とよく相関する4)。特に,サルでは側頭葉,前頭前皮質,扁桃体などの灰白質密度が集団サイズの増加に伴い高くなることが分かってきた13)。また,集団内における個の階級と,側頭葉,前頭前皮質,扁桃体,視床下部,縫線核の灰白質密度との間には正の相関が認められるという11)。このような知見は,「社会での生存に必要な適応知性こそが脳の進化の選択圧である」と説く社会脳仮説5)とも矛盾しない。
 社会生活や他者への対応に必要な適応知性—いわゆる社会的認知能力—とは,脳のどの部位のどのような神経活動によって実現されるのであろうか。本稿ではサル類を対象に行われた神経生理学研究をもとに,「他者理解」,特に「他者の行為と意図の理解」の神経機構について述べてみたい。他者の行為を観察することにより,他者が何をどのように行っているかだけでなく,その目的や背景意図までを含めて理解することが可能になる。

マーモセットの社会認知とニューロイメージング

著者: 横山ちひろ

ページ範囲:P.15 - P.21

はじめに
 ニューロイメージングとは一般に脳機能を可視化する方法である。特に陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography;PET),磁気共鳴機能画像法(functional Magnetic Resonance Imaging;fMRI)に代表される非侵襲的脳機能イメージング法(以下ニューロイメージング)は,ヒトの脳全体の神経活動の生きている状態を測定・画像化できることから精神医学の分野に大きな成果をもたらしてきた。ニューロイメージングで分子や細胞の働きを直接観察することはできないが,脳全体にわたる神経伝達物質の動態や神経活動を俯瞰することができる。これにより脳の異なる部位が精神機能の細部を別々に分担していること(機能局在)だけでなく,離れた領野間の活動同期性(機能的連結)が発達段階や精神疾患,異なる社会環境によって変化することが分かってきた。このような脳活動の「大域的」特徴と精神機能との密接な関連は今多くの注目を集めている7)
 ヒト研究から始まったニューロイメージングは,技術発達によってその対象は動物に広がった。その中で,非ヒト霊長類の一種であるマーモセットの社会認知の神経機構を探ろうとする試みが始まっている。本稿では,まず動物のニューロイメージングおよびそれが社会神経科学と出会うことの意義を解説し,次にマーモセットに関する最近の知見を紹介する。最後にマーモセットのニューロイメージングが精神医学に貢献できる可能性を考察する。

発達初期の他者理解—行為の理解から心的状態の理解へ

著者: 明和政子

ページ範囲:P.23 - P.28

はじめに
 ヒト特有の心的機能の側面が,比較認知科学や神経科学の成果を中心に明らかにされてきた。情動については,系統発生的に古い脳部位(皮質下,辺縁系)が関わる基本情動のいくつかは他の動物にもみられるが,照れ,嫉妬などの派生情動はヒトに顕著である。高次認知機能とされる社会的認知については,特に認知的共感や欲求,信念など他者の心的状態の理解(心の理論)の側面が注目を集めてきた。それらに共通する基盤は,「他個体について直接知覚した状態とその背後にある心的状態を自己のそれと分離し,自他それぞれを表象する能力(自他分離表象)」にあると考えられる。しかし,ヒトの自他分離表象の動的な発達プロセス,つまり自他未分化の状態から自己と外部(環境,他個体)の異なる表象がどのように獲得され,高次の社会的認知へといかに結びついていくのかといった点については未だ不明な部分が多い。本稿では,自他分離表象の個体発生に焦点をあて,発達科学が明らかにしてきた最新の知見を紹介するとともに,ヒト特有の心的機能の定型—非定型性を議論する上で取り組むべき課題を考察する。

自閉スペクトラム症とオキシトシン

著者: 山末英典

ページ範囲:P.29 - P.36

はじめに
 従来の自閉症やアスペルガー症候群や広汎性発達障害を含む概念である自閉スペクトラム症(autism-spectrum disorder;ASD)は,一般人口の100人に1人の頻度で認められる。このASDの中核症状で,表情や視線や声色あるいは言語を介して他者と双方向性に交流することの障害である社会的コミュニケーションの障害に対する有効な治療方法は確立されておらず,本人や家族さらには社会全体への過度な負担が問題となっている。そうした中で近年,ハタネズミなどの実験動物において愛着や友好関係の形成に重要な役割を示すことが知られてきた神経ペプチドでもあるオキシトシンの投与で,ヒトでも表情や顔の認知の改善と何らかの利益を共有するような内集団での信頼関係は促進されることが,メタ解析レベルでも示された17)。内因性ペプチドであるオキシトシンは,本邦では子宮収縮作用による分娩誘発などを適応症として点滴静注用製剤が承認されているが,欧州ではオキシトシンンの経鼻製剤が乳汁分泌促進の適応で承認・販売されている。さらに,ASD当事者においても,オキシトシンの点滴投与によって常同反復性や朗読の際の情感の理解困難などの症状が改善したという報告や,経鼻投与でも目もとから感情を推し量る能力の改善や協調的な行動が促進されるという報告がされた15)。こうした知見から,ASD中核症状に対する初の治療薬としてのオキシトシン経鼻剤の可能性に関心が集まってきている14,16)

うつ病の社会認知

著者: 増田慶一 ,   岡田剛 ,   岡本泰昌

ページ範囲:P.37 - P.44

はじめに
 近年,多くの精神障害患者が,対人関係や社会生活上の問題を抱えていることから12),対人関係や社会生活を円滑に行うために必要な能力(社会認知)に関心が寄せられている。すでに自閉スペクトラム症や統合失調症では特有の社会認知障害が確認され,その神経基盤に関しても明らかになってきている。うつ病も同様に対人関係や社会生活上の問題を抱えることが多いことから,抑うつ気分や意欲低下といったうつ病の主症状の問題だけではなく,社会認知の異常が存在する可能性が想定されるようになっている。本稿では,まず社会認知の概念の整理した上で,最近の研究の結果を中心に明らかになっているうつ病の社会認知,およびその神経基盤について概説する。

統合失調症における社会認知の認知矯正療法—心理社会的治療法

著者: 蟹江絢子 ,   中込和幸

ページ範囲:P.45 - P.53

はじめに
 統合失調症の治療のゴールは,精神症状の改善のみなならず,生活能力・社会機能のリカバリーとされている。つまりゴールを達成するためには,その人らしく本人が希望のある満足した自立生活を営んでいくことや,就労することや,より良い人間関係を築くのに十分な社会機能のリカバリーが求められる。社会機能の改善に寄与するものとして,記憶・注意・実行機能といった神経認知が話題に上がっているが,社会認知は,神経認知と社会機能を向上させる介在因子として注目されている。8)
 社会認知とは「他者の意図や性質を理解する人間としての能力を含む対人関係の基盤となる精神活動」1)と定義されている。
 社会機能的転帰に影響を与える社会認知を改善させることはできないかと,近年ではさまざまな研究が行われており,心理社会的治療法や新たな薬物療法が開発され,効果が実証されてきている。
 本稿では統合失調症の社会認知障害についての最新の研究とさまざまな心理社会的治療法の概要について述べた上で,現在当施設で実施しているプログラムについてリカバリーの観点を加えて紹介する。

研究と報告

中学校と高等学校での遷延化した集団過換気症候群

著者: 弟子丸元紀 ,   城野匡 ,   本田和揮 ,   小川雄右 ,   白石泉 ,   池田学

ページ範囲:P.55 - P.63

抄録
 我々は2つの学校での過換気症候群の集団発生を経験した。1つは1990年に県境の山間部の高等学校,2つ目は2010年に県南の中学校であった。20年間の間隔があったが,運動との関連,伝播の仕方,休み期間中の発作の軽減,また再燃などの共通点があった。特に過換気は感応しやすく,また,他の症状は意識消失・無呼吸状態・心身故障の訴えなどを示した。前者は1年8か月間,後者は2年7か月間も持続し,また経過は二峰性を示した。治療では過換気について本人や養護教諭への説明,また,発端者への十分な注意,集団発生の最後まで残った人々への心理的背景の理解など,思春期独特の「個と集団の病理」に配慮する必要を感じた。

気分障害患者における強迫性パーソナリティ傾向と認知機能との関連

著者: 長島杏那 ,   松尾淳子 ,   野田隆政 ,   木下裕紀子 ,   石田一希 ,   平石萌子 ,   樋口輝彦 ,   功刀浩

ページ範囲:P.65 - P.72

抄録
 気分障害患者43名(平均年齢39.7±11.9歳,男性24名,女性19名/大うつ病性障害29名,双極性障害14名)を対象に,強迫性パーソナリティ傾向を測定し,認知機能(知能検査,記憶検査)やうつ病症状との関連を検討した。その結果,動作性IQ,言語性記憶,視覚性記憶,一般的記憶において,強迫性パーソナリティ傾向の高い群が低い群よりも有意に得点が高かった。一方で,うつ病重症度において,強迫性パーソナリティ傾向の高い群が低い群よりも得点が高い傾向がみられた。このことより,気分障害患者は,強迫性パーソナリティ傾向の高い群と低い群に大きく二分され,高い群においては認知機能が高い臨床特性を持つことが示唆された。

DSM-5診断基準を用いた摂食障害の診断についての問題点—過食性障害を中心に

著者: 中井義勝 ,   任和子

ページ範囲:P.73 - P.80

抄録
 食行動異常のため受診した患者を対象に,DSM-Ⅳ診断基準とDSM-5診断基準を用いて摂食障害の診断を行った。全22例中,DSM-5診断基準で過食性障害(BED)に適合している者が6例いた。DSM-5日本語版ではbinge eatingを「過食」と訳しているが,「過食」はさまざまな食行動を含み,BEDの診断基準に合致しない場合があるので,慎重な問診が必要だ。BEDは非排出型の不適切な代償行動を有する神経性過食症(BN)との鑑別診断が容易でない。非排出型の不適切な代償行動の判定基準を確立する必要がある。西欧では,BNの既往を有するBEDと,肥満症の一部に存在するBEDとがある。今回のBEDはそのいずれにも属さない可能性がある。

短報

アルツハイマー病との鑑別を要した左前部視床梗塞後の軽度認知障害例

著者: 植田賢 ,   石川智久 ,   前田兼宏 ,   柏木宏子 ,   遊亀誠二 ,   福原竜治 ,   池田学

ページ範囲:P.81 - P.85

抄録
 我々は左前部視床梗塞後に軽度の認知機能障害を呈した症例を経験した。頭部MRI所見で,tuberothalamic artery領域の左前部視床梗塞像が認められたため,診断は,左前部視床梗塞による軽度認知障害を考慮した。一般的に,視床病変では一側性でも軽度の記憶障害を来し,左側では言語性,右側では非言語性の記憶障害を生じるとされる。ただし,本例では言語性記憶の障害は軽度であり,臨床症状や画像所見などから,アルツハイマー病による軽度認知障害との鑑別が必要であった。

資料

Standby guardianship—患者の自己決定に基づく親権代行

著者: 石川博康 ,   猪股良之 ,   神林崇 ,   清水徹男

ページ範囲:P.87 - P.94

抄録
 単独親権者が重篤な身体疾患を抱えた場合,当該家庭の子どもの権利擁護は複雑で困難な課題となる。米国の場合,エイズやがんなど,進行性または致死性の疾患に罹患した親権者が子どものために利用する親権代行制度standby guardianshipが州法で整備されている。この制度の特徴は,親権者が自身の子に対してstandby guardian(後見待機人)を予め指名し,死亡のみならず,親権者の同意などでも後見待機人による親権代行を開始できるという柔軟な制度設計にある。対照的に,本邦では遺言により後見人を指定する指定後見人の制度があるのみで,実際の利用も乏しい。また,このような子どもの福祉の問題は,医療者によって早期に認識されやすいものと思われるが,これまで医療者の間では議論されてこなかった。親権代行は子どもの権利を守る重要な社会的仕組みの1つであり,本邦においてもstandby guardianshipのような当事者にとっても医療者にとっても分かりやすい制度の確立が望まれる。

書評

—Barnhill JW 原書編集,髙橋三郎 監訳,塩入俊樹,市川直樹 訳—DSM-5®ケースファイル

著者: 松永寿人

ページ範囲:P.86 - P.86

 2013年に米国精神医学会によって刊行されたDSM-5®は,DSM-Ⅳ以来約20年ぶりに改訂された精神疾患の分類体系,および診断基準である。これにより,精神医学あるいは精神科臨床は新時代を迎えたと言えよう。特にこの20年間には,精神疾患の生物学的病態,中でも遺伝を中心とした病因や脳内メカニズムの解明が進展し,これがDSM-5®の改訂プロセスに大きく影響したことは言うまでもない。またこれらの知見は,新規向精神薬の開発といった新たな治療法の探求を促すものとなり,臨床における進歩にも多大な貢献を果たしてきた。
 その一方,現代社会は,急激に変貌する中で多様化・複雑化し,災害や社会・経済,治安,そして健康上の問題など,心身の健康を損なうようなストレス状況が生じやすくなっている。特に不安や喪失には,社会全体で共有される側面もあり,現代は人々の心が蝕まれ,不安定化しやすい時代と言えるであろう。たとえば,労働を含む社会的環境,あるいはその変化にうまく順応できず,うつ病や不安症といった精神疾患を発病し,精神科を受診する人が急増している。さらに急速に進む高齢化やがんなどの身体疾患患者の心のケアなど,精神科医療のニーズはより拡大しつつある。その中でみられる精神科的問題には,その臨床像や背景の個別性がますます顕著となり,診断にも苦慮するような複雑なケースは決して少なくない。

—Muskin PR 原書編集,髙橋三郎 監訳,染矢俊幸,北村秀明,渡部雄一郎 訳—DSM-5®診断トレーニングブック—診断基準を使いこなすための演習問題500

著者: 井上猛

ページ範囲:P.95 - P.95

 1980年にDSM-Ⅲが登場してから,従来診断とDSM診断(ICD診断も含む)の比較,両者の優劣に関する論争が続けられてきた。両者を中立的に考えてみると,精神科診断における重要な問題点,特に診断論理の特性に気付かされる。したがって,論争はとても意味があったと思う。
 従来診断では精神疾患の診断基準はややあいまいであり,診断は個々の精神科医の裁量・力量に任される部分が多く,診断の一致率に問題があり,従来診断を研究に用いることは難しかった。しかし,その良い点は階層原則を設けて,器質性→内因性→心因性の順番に優先順位をつけて診断することを推めていることである。一方,個々の疾患のDSM診断基準を『DSM-5®精神疾患の分類と診断の手引』で読んだだけではDSMが階層原則を考慮しているのかどうかは分かりづらいが,たとえば『DSM-5®鑑別診断ハンドブック』の「抑うつ気分の判定系統樹」を読むと,実はDSMも階層原則を考慮していることが分かる。

学会告知板

ぐんま・脳とこころのアカデミー 2016

ページ範囲:P.63 - P.63

論文公募のお知らせ

テーマ:「東日本大震災を誘因とした症例報告」

ページ範囲:P.36 - P.36

「精神医学」誌では,「東日本大震災を誘因とした症例報告」(例:統合失調症,感情障害,アルコール依存症の急性増悪など)を募集しております。先生方の経験された貴重なご経験をぜひとも論文にまとめ,ご報告ください。締め切りはございません。随時受け付けております。
ご論文は,「精神医学」誌編集委員の査読を受けていただいたうえで掲載となりますこと,ご了承ください。

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次号予告

ページ範囲:P.96 - P.96

編集後記

著者:

ページ範囲:P.100 - P.100

 時間の足は速く,本号が読者の手元に届く頃には,2015年はすでに終わり,新しい年が始まっています。しかし昨今は,情報量の増加や通信手段の変化に伴って物事全般に絶え間がなくなり,年が改まるからといって,何かが終わり,何かが新たに始まるという感慨も乏しくなったように思います。終えるものは良い形で終え,新しいことは清新な気持ちで迎えたいところです。
 本号の「巻頭言」では障害者雇用における問題点が論じられています。日本の社会における寛容の欠如に伴う窮屈さの指摘には共感します。「特集:社会認知研究の最近の動向」は村井俊哉先生にご企画いただきました。社会認知研究は,認知心理学や脳科学の発展を背景に,ここ10数年の生命科学における大きな潮流として,精神医学にも多大な影響を与えてきました。また,精神医学領域における社会認知研究も盛んとなり,社会認知は精神疾患の診断と治療において不可欠な概念となっています。特集は6つの論文から成り,最近の研究成果を中心とした内容ですが,背景から分かりやすく説き起こしていて読みやすく,今後の発展の可能性もよく理解できます。この領域の研究の発展により,多くの精神疾患の理解がさらに深まることが期待されますし,一般社会における発達障害概念の膨張・氾濫による混乱なども科学的に整頓されていくことになるでしょう。「研究と報告」には,集団ヒステリーとしての過換気症候群が遷延した中学校と高等学校の事例,気分障害患者における強迫性パーソナリティ傾向と認知機能の関連,DSM-5による摂食障害の診断における問題点,を検討した3編が掲載されています。集団過換気症候群の論文からは,正確な臨床観察と記述・記録の力が感じられ,日頃のカルテ記載の大切さにも思いを致しました。「短報」は片側性の前部視床梗塞による認知障害が疑われた例,「資料」は本邦でも確立が望まれるstandby guardianship(親権代行制度)の紹介です。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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