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文献詳細

雑誌文献

精神医学58巻10号

2016年10月発行

私のカルテから

メタ認知トレーニングを応用して支援した不登校生徒の1事例

著者: 狩野俊介1

所属機関: 1岩手県立杜陵学園

ページ範囲:P.879 - P.881

文献概要

はじめに
 メタ認知トレーニング(Metacognitive Training;MCT)は,統合失調症に対する認知行動療法の心理教育・心理的介入技法である5,6)。MCTは,次の8つのModuleから構成されている。すなわち①帰属,②結論への飛躍,③思い込みを変えること,④共感すること,⑤記憶,⑥共感することⅡ,⑦結論への飛躍Ⅱ,⑧自尊心と気分である。これらのModuleは,参加者の興味関心に合わせた順序で実施が可能とされている。そして,開発者のMoritzらは,MCTを基礎としたうつ病や境界性パーソナリティ障害,強迫性障害のプログラムを開発し,Mネット注)では試験段階であるが発達障害や就労支援,学校臨床などで応用している報告がある4)
 多くの領域で応用されている背景には,メタ認知機能の低下や回復が人々の精神的健康に寄与すると考えられるためである。そこで筆者は,学校臨床で不登校生徒のグループを対象とした認知的アプローチとしてMCTを応用し,そのグループに参加した一生徒の経過から,その有用性だけでなく学校臨床における認知的アプローチのあり方を検討したため報告する。
 なお,事例の特定を避けるため,匿名性に十分に配慮し,趣旨を妨げない範囲で一部を改変した。また,MCTの詳細については文献2,3)を参照してほしい。

参考文献

1) Germain CB:An ecological perspective on social work in the school. In:Cosntable R, Flynn JP, McDonald S, ed. School Social Work:Practice and Research Perspectives. 3rd ed. Lyceum Books Inc, Cicago, 1996
2) 細野正人,山崎修道,石垣琢麿:デイケアにおけるメタ認知トレーニング(MCT)日本語版の利用可能性の検討.精神医学 55:1165-1171, 2013
3) 石垣琢麿:メタ認知トレーニング(Metacognitive Training;MCT)日本語版の開発.精神医学 54:939-947, 2012
4) 石垣琢麿:メタ認知トレーニングの理論と実践.北海道作業療法 31:96-102, 2014
5) Moritz S, Woodward TS:Metacognitive training in schizophrenia:From basic research to knowledge translation and intervention. Curr Opin Psychiatry 20:619-625, 2007
6) Moritz S, Kerstan A, Veckenstedt R, et al:Further evidence for the efficacy of a metacognitive group training in schizolhrenia. Behav Res Ther 49:151-157, 2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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