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書評
—日本神経精神薬理学会 編—統合失調症薬物治療ガイドライン
著者: 井上猛1
所属機関: 1東京医科大学・精神医学分野
ページ範囲:P.882 - P.882
文献購入ページに移動 統合失調症の薬物治療の際には,何が分かっていて,何が分かっていないのか,を知っていることは重要である。昔から自分が思い込んでいたり,精神科医の中で言い伝えられてきたりしてきた知識が実は根拠のないことであるということを知り,愕然とすることがある。たとえば,本書では,副作用のアカシジアの対処としては,抗精神病薬の減量,定型から非定型抗精神病薬への変更を推奨しており,他の抗コリン薬,ベンゾジアゼピンなどの併用は推奨していない。若いときから,「低用量の抗精神病薬でアカシジアは生じやすく,高用量ではむしろ起こりにくい」という説を聞くことがあり疑問に感じていたが,本書を読んでこの説が間違っていたということを知った。
本書では,私たち精神科医が日頃から感じている臨床的な疑問(clinical question:CQと表記されている)に対して,最新の文献を基に,しかも論理的に回答している。まだ十分に研究が行われていないために十分なエビデンスが存在しない場合には,ごく控えめな推奨となっている。したがって,積極的に推奨している場合には自信を持ってその推奨を信じたほうがよいが,エビデンスレベルが低い場合は,まだよく分かっていないため推奨度が低いと考えたほうがよい。たとえば,上に例を挙げたアカシジアに対する抗精神病薬以外の薬物併用療法は実臨床ではよく行われていると思われるが,このガイドラインでは「併用しないことが望ましい」と結論している。この非推奨のエビデンスの強さは低く,「行わないことを弱く推奨している」というニュアンスであることが,推奨度として本書で明記されている。このように,推奨度とエビデンスの強さがきちんと明記されているので,本書を読むときに参考にされるとよい。併用の効果が強く否定されるほどではないがエビデンスは弱いので,むしろ他の抗精神病薬への変更のほうがエビデンスの強さは高いし,お薦めであるということかと推察する。さらに,抗精神病薬の減量のほうがエビデンスレベルは高いとは言えないがよりお薦めであるということでもあろう。このように痒い所に手が届く配慮がなされていることにより,微妙な判断の基準を知ることができる。
本書では,私たち精神科医が日頃から感じている臨床的な疑問(clinical question:CQと表記されている)に対して,最新の文献を基に,しかも論理的に回答している。まだ十分に研究が行われていないために十分なエビデンスが存在しない場合には,ごく控えめな推奨となっている。したがって,積極的に推奨している場合には自信を持ってその推奨を信じたほうがよいが,エビデンスレベルが低い場合は,まだよく分かっていないため推奨度が低いと考えたほうがよい。たとえば,上に例を挙げたアカシジアに対する抗精神病薬以外の薬物併用療法は実臨床ではよく行われていると思われるが,このガイドラインでは「併用しないことが望ましい」と結論している。この非推奨のエビデンスの強さは低く,「行わないことを弱く推奨している」というニュアンスであることが,推奨度として本書で明記されている。このように,推奨度とエビデンスの強さがきちんと明記されているので,本書を読むときに参考にされるとよい。併用の効果が強く否定されるほどではないがエビデンスは弱いので,むしろ他の抗精神病薬への変更のほうがエビデンスの強さは高いし,お薦めであるということかと推察する。さらに,抗精神病薬の減量のほうがエビデンスレベルは高いとは言えないがよりお薦めであるということでもあろう。このように痒い所に手が届く配慮がなされていることにより,微妙な判断の基準を知ることができる。
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